豊富な戦力に緻密な育成、V奪還ホークス工藤監督が3年間で積み上げた成果

9月17日(日)9時40分 フルカウント

先発ローテ3本柱が怪我がちも、台頭した若手投手

 7度、宙を舞った。厚い信頼を寄せる選手達の手によって、工藤公康監督が胴上げされた。マジック1で敵地に乗り込んだ16日の西武戦。勝つか、引き分けでVが決まる一戦は、まさにソフトバンクの今季を象徴する戦いだった。

 先発は東浜。今季、飛躍的な成長を遂げた右腕が6回2安打1失点と好投した。打線の核としてチームを牽引した柳田が、4回に30号逆転2ランを放つなど2安打3打点すると、V奪還のために補強したデスパイネが33号ソロを放つなど3打点。7回はモイネロ、8回はチーム最多登板数を誇る岩嵜とつなぎ、6点差あっても、最後はサファテを投入した。

 89勝41敗の貯金48。結果的に見れば、2位西武に14.5ゲーム差をつけての独走Vだった。9月16日での優勝決定は、パ・リーグ史上最速だ。昨季は日本ハムに大逆転され、V逸。至上命令だったV奪回の実現は、就任3年目を迎えた工藤公康監督が、この3年間で積み上げてきた成果と言えるものだった。

 今季は主力、特に先発投手陣に負傷者が続出した。左肘遊離軟骨の除去手術を受けた和田毅、左背部の張りを訴えた千賀滉大、右肩炎症の武田翔太と、ローテの柱となる3人が次々に戦列を離れた。並のチームであれば、一気に下位に沈みかねない危機的状況。その中で踏ん張ることができたのは、指揮官が育てた若手の力が大きかった。

 3投手がチームを離れた間に、ローテの一角を埋めたのは石川柊太、松本裕樹の若い2人だった。昨季、育成から支配下となった石川は今春キャンプでA組に抜擢され、アピールが実って開幕1軍入り。中継ぎで結果を出すと、先発へ配置転換され、ここまで7勝をマークしている。2014年ドラフト1位の松本裕もキャンプでA組に入り、工藤監督の直接指導を受けて、先発のチャンスを得た。

救援に頼った今季、同時に基本は3連投まで

 そして、チームの大黒柱として、チームトップ、ハーラートップタイの16勝を挙げている東浜巨は、指揮官が就任してから、期待をかけ、鍛えてきた“チルドレン”。もともと屈指の戦力層を誇っていたソフトバンクだが、そこに胡座を欠くことなく、育成にも力を注いできたことが、チームの窮地を救った。

 今季は接戦続きだった。打線が爆発し、圧勝した試合は、意外に少ない。2桁安打は41試合。V逸した昨季でも55試合だったことを考えれば、やはり少ないと言える。効率よく点を奪ったものの、なかなか大差をつけることは出来なかった。それに加えて完投能力のある、主戦力になるべき投手が離脱していたこともあり、リリーフ陣にはかなりの負担がかかった。

「本当にお礼の意味を込めて、今日は投げさせたいと思っていました。彼らがいなかったらどうなっていたか、分からないくらい、8月、9月は厳しい戦いがいっぱいあったので。その中でもしっかり絶対に負け越さない、リードをそのまま終わらせてくれたのが彼ら。本当によくやってくれたと思いますし、絶対に勝つんだという気持ちが出ていたシーズンだった」

 セットアッパー岩嵜翔の68試合を筆頭に、守護神サファテが63試合、森唯斗が55試合、約1か月の登録抹消期間のあった嘉弥真新也も50試合、6月中旬に支配下登録され、1軍昇格したリバン・モイネロも3か月で31試合に投げた。明らかに登板がかさんだ。

 ただ、その中でも指揮官は最低限のリスクヘッジは行なっていた。連投こそあれ、最大で3日連続にとどめ(モイネロだけは4日連続があるが…)、3日連続投げれば、必ず1日以上の休養を与えている。岩嵜は最大5連投があるものの、この時も1試合→試合なし→2試合→試合なし→2試合。昨季までの2シーズンに比べれば、先発を引っ張るよりも、早め早めの継投に踏み切った感は強く、中継ぎ陣を酷使はしたものの、その中でも懸命にマネージメントしていたことが分かる。先制した試合は71勝8敗。6回終了時点でリードを奪った試合は73勝1敗と、驚異的な強さを誇ったのは、このリリーフ陣がいてこそだった。

カード勝ち越しを目標に重ねた勝利

 常々、カード勝ち越しを目標に掲げ、たとえ楽天との直接対決であろうと、ローテを変えることなく“不動心”で戦ったソフトバンク。2連敗が8度あったが、3連敗と4連敗が1度ずつと、大きな連敗がなかったところにも、強さが垣間見える。

「去年の悔しさをみんなが持っていてくれた。僕が何か言ってというよりも、みんながそこを持って今シーズン臨んでくれたというのが一番大きい勝因じゃないかと思います」

 8月が11勝14敗、9月が13勝9敗と勢いが陰った昨季。それに対し、今季は8月が17勝8敗、9月が10勝1敗。あくまで、その姿勢がブレることなく、シーズンを戦ってきたからこそ、終盤に失速した楽天をひっくり返し、一気にその差を広げることができた。

 選手たちがより一層の成長を遂げた今季。工藤監督は「選手の成長を見ているだけで、グラウンドでは笑いませんが、部屋でニヤニヤしていました。頼もしく映りました。総合力で戦うもの。その中で負けたくないという気持ちで持って戦うことが何よりも大事。6球団の中でも最もそれが強かったのがホークスではないのかなと思います」と語った。

 雪辱を果たした工藤ホークス。その強さは、紛れもなくホンモノだった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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