山本昌が絶賛する夏の甲子園出場10投手。将来性と課題をリアル解説

9月17日(火)6時17分 Sportiva

 50歳まで投手として現役生活を送った「生ける伝説」山本昌氏(元中日)。現在は評論家として活動する山本昌氏は、その慧眼で数々の好素材の秘めた資質を言い当ててきた。今夏の甲子園に出場した投手のなかから、山本昌氏が好素材と太鼓判を押した10投手の魅力と課題を掘り下げていきたい。


決勝で敗れたが、大会ナンバーワン投手と呼ぶにふさわしい投球を見せた星稜・奥川恭伸

奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ/星稜3年/
183cm84kg/右投右打)

問答無用にすばらしい選手です。ここまで完成度が高いピッチャーは久しぶりで、甲子園出場投手のなかでは別格でした。何がすばらしいかと言うと、コントロールのつきやすい投げ方をしていること。体がホーム方向へ真っすぐに移動できて、広い幅を使わずに腕を振れるので、自然とストライクゾーンに行く投げ方になっています。スライダー、フォークなどの変化球もいいし、ピッチングセンスもある。プロでも早い段階で通用するでしょう。それでいて伸びしろも十分にあるので、体も強くなるはず。「○年に一人の逸材」というフレーズは毎年のように使われますが、奥川くんは紛れもない逸材です。


最速152キロを誇る本格派右腕の津田学園・前佑囲斗

前佑囲斗(まえ・ゆいと/津田学園3年/
182cm87kg/右投右打)

今春のセンバツでも好投した投手ですが、体格的に恵まれて将来性のあるすばらしい素材だと感じます。惜しいのは、軸足(右足)で立ったあと、すぐに右ヒザを折って体重移動をすること。ボールが高めに浮く原因はここでしょうし、せっかくの長身なのにボールに角度がつきにくい投げ方です。とはいえ、これから大人になるにつれ体ができてくれば、軸足でしっかり立って真っすぐ自然にホーム方向へ体重移動できるようになるはずです。角度が使えるようになれば、大化けする可能性があります。


履正社に打ち込まれ初戦敗退したが、大器の片鱗を見せた霞ケ浦の鈴木寛

鈴木寛人(すずき・ひろと/霞ケ浦3年/
186cm79kg/右投右打)

ドラフト候補としての評判は聞いていました。近年の霞ケ浦は遠藤淳志くん(広島)といい、好投手を次々に輩出していますね。甲子園では優勝チームの履正社打線に打ち込まれましたが、素材のよさは十分に伝わりました。上背を生かした角度があって、ボールも速い。私の好きなタイプのピッチャーです。少し気になるのは、テイクバックをとる際に右肩の位置が少し下がって担ぐような形になるところ。両肩が水平な状態で体重移動したほうが、腕をもっとしなやかに使えてボールのキレが増すはずです。


初戦の沖縄尚学戦で好リリーフを見せ、チームの逆転勝利に貢献した習志野・飯塚脩人

飯塚脩人(いいずか・しゅうと/習志野3年/
181cm78kg/右投右打)

春のセンバツで準優勝に導いたエースだけあって、夏の甲子園も力があるところを見せてくれました。飯塚くんの長所はスピードガンの数字以上のキレを感じること。フォームにしなやかさがあって、ただでさえ球速があるのにさらに速く見えます。大きな課題はありませんが、強いて言えばホーム方向に真っすぐ力を向けられるとなおよくなるでしょうね。腕の回りがスムーズになって、コントロールもより安定するはずです。大学進学希望と聞いていますが、実戦で早く出てこられる投手でしょう。


センバツ後にフォームを修正し、夏の甲子園で150キロをマークした智弁和歌山の池田陽佑

池田陽佑(いけだ・ようすけ/智弁和歌山3年/
183cm84kg/右投右打)

春から夏にかけて大きく成長したピッチャーだと聞きましたが、たしかに体に強さがある好素材ですね。上背があって、ボールが重そうで、スピードも150キロまで出る。高校3年生としては上々だと感じます。今後の課題としては、左肩の開きが少し早いことと、全体的に体の使い方が硬いこと。今後改善できれば、高校以上のレベルでも十分通用する投手になれるはずです。


193センチの長身からほぼストレート1本で勝負する中京学院大中京の赤塚健利

赤塚健利(あかつか・けんと/中京学院大中京3年/
193cm103kg/右投右打)

初めて見る投手でしたが、まず身長193センチ、体重103キロの体に圧倒されました。強くリリースできたボールは、高校野球でなかなかお目にかかれないレベルだと感じました。1球ごとにスピードガンの数字がバラけるのは気になりますが、体重移動の距離が短く、フォームが安定しないからではないでしょうか。今はその場で投げている印象なので、もう少し前でリリースできるといいですね。そうすれば体をもっとゆったり使えて、伸びのある球が投げられるはず。まだ粗削りで素材としての評価になりますが、上のレベルで見たい投手です。


春夏連続してチームをベスト4へと導いた明石商の2年生エース・中森俊介

中森俊介(なかもり・しゅんすけ/明石商2年/
181cm79kg/右投左打)

春夏連続甲子園ベスト4のエースですが、2年生でこれだけ投げられるのは驚きです。センターの来田涼斗くんも逸材ですし、新チームも楽しみですね。中森くんは投手として非常にセンスが高いうえに、夏は150キロを超えるスピードで将来性があることも見せてくれました。また、チェンジアップやスライダーといった変化球でも、腕の振りがストレートと変わらない点も非凡です。やや軸足が早く折れてテイクバックの時間が短く慌ただしく見えるのは気になりますが、これから体がさらにできてくれば改善できるはずです。今まで以上に前へ体重移動できるようになって、もっとゆったり腕を使えるようになるはずです。


伸びのあるストレートが魅力の智弁和歌山の2年生投手・小林樹斗

小林樹斗(こばやし・たつと/智弁和歌山2年/
182cm79kg/右投右打)

中森くん同様に、2年生にしてこれだけのボールを投げられるのはすごいですね。スピードもありますが、何よりいいのは球にスピンが効いていること。教えられてできることではありませんし、これからもっとスピードも上がってくるでしょう。体の開きが早くシュート回転が強くなるなど、細かい点で気になる部分もありますが、それを差し引いてもすばらしい素材です。体の開きも体ができてくれば解消できるでしょう。順調に成長すれば、来年はドラフトの目玉になっているかもしれません。


甲子園で自己最速の145キロをマークした敦賀気比の2年生エース・笠島尚樹

笠島尚樹(かさしま・なおき/敦賀気比2年/
177cm71kg/右投右打)

腕の振りが非常にいいサイドスローですね。ヒジが前に出てきて、しなやかに振れるのでストレートはスピードガンの数字以上に体感速度があります。また、いかにもスライダーがよく曲がりそうな投げ方でもありますね。リリースに向けて体が低い位置から出てくるので、ボールが噴き上がるように抜けることが多いのは今後の改善点でしょう。笠島くんに限らず、体ができていない投手は軸足が早めに折れることが多いです。体の開きが早くなり、ボールに抑えが効かなくなってシュート回転が強くなります。将来のために、まずはしっかりと強い体を作ってもらいたいですね。


最速147キロを誇る仙台育英のスーパー1年生・笹倉世凪

笹倉世凪(ささくら・せな/仙台育英1年/
176cm76kg/左投左打)

率直に「1年生でこれだけ投げられるのか……」とビックリしました。あらためて中学・高校野球のレベルが上がっていることを実感します。笹倉くんは、技術以前にまるで3年生がマウンドに立っているような落ち着きが印象的でした。体の向きもホーム方向にきれいに真っすぐ入っていけるし、余分な動きもありません。力だけでなく、投手としてのセンスも感じます。現時点で140キロを超えますが、今後2年間でスピードも10キロくらい上がるでしょうし楽しみです。

         ※          ※          ※

 今年は佐々木朗希くん(大船渡)もいますが、同じ年に奥川くんと合わせて2人も逸材がいるのは奇跡としか言いようがありません。まるで田中将大投手(ヤンキース)と大谷翔平投手(エンゼルス)が同時にドラフト会議を待っているようなものでしょう。佐々木くんには大谷投手のようなスケール感、奥川くんには田中投手のような勝てる能力を感じます。

 また、球数制限の議論が活発になっていますが、私見を言わせていただくと、まずは低反発の金属バットを導入した方がいいと感じます。今は金属バットの性能が向上しており、打撃のレベルが昔とは比較になりません。投手は常に全力で投げざるをえず、故障の一因になっているはずです。木製バットに近い打感の金属バットを使えば打者の技術は上がり、投手の負担も軽減されるはずです。

 高校生は短期間で急激に成長します。そのことを、私は母校の日大藤沢(今夏の神奈川大会準優勝)で臨時コーチを務めたことで実感しました。今年の高校生は「不作」と言われているそうですが、これから急成長を見せる選手もいるに違いありません。甲子園に出ていない投手を含め、これから野球界を盛り上げてくれる人材の出現を心から願っています。

Sportiva

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