“猛進しなかった”湘南が価値あるドロー。浦和の反省材料は【J1試合分析】

2022年9月18日(日)18時0分 FOOTBALL TRIBE

写真:Getty Images

明治安田生命J1リーグの第30節が9月17日に行われ、湘南ベルマーレと浦和レッズがレモンガススタジアム平塚にて対戦。互いに決定機を作ったものの、0-0の引き分けで幕引きとなっている。


J1残留争いに巻き込まれている湘南(J1現14位)と、今季ルヴァン杯優勝の可能性を残している浦和(J1現8位)。同試合で見えたそれぞれの傾向や課題、今後の鍵となるポイントを分析しよう。




湘南ベルマーレVS浦和レッズ(J1第30節スターティングメンバー)

主導権を握った湘南、守備が曖昧な浦和


序盤に主導権を握ったのは、基本布陣[3-1-4-2]の湘南。守備の約束事が曖昧だった浦和の隙を突き、波状攻撃を仕掛けた。


浦和の守備隊形は、キャスパー・ユンカーと江坂任が最前線で横並びとなる[4-4-2]。序盤では、中央を閉めて相手の最終ラインからのパスをサイドに誘導するのか、それともサイドへのパスコースを塞ぎ、中央にパスを誘うのかの意思統一が図られておらず。3バックの湘南に対し、数的不利となる2トップで漫然とハイプレスを仕掛けたことも災いし、ボールを奪えない場面が散見された。


湘南ベルマーレ攻撃シーン

前半5分10秒以降の湘南の攻撃シーン


象徴的だったのが、前半5分10秒以降の湘南の攻撃シーン(上図)である。2トップを起点にハイプレスを仕掛けた浦和に対し、湘南の岡本拓也、山本脩斗、アンカーの茨田陽生の3人が小気味よくパスを繋ぐ。


このパスワークで浦和の2トップとボランチの柴戸海を釣り出すと、ぽっかりと空いた中盤のスペースに瀬川祐輔が走り込み、岡本からの縦パスを受ける。その後は右サイドに流れた池田昌生が敵陣ペナルティエリアへクロスを送り、これが瀬川の惜しいヘディングシュートに繋がった。


浦和の守備隊形に着目すると、この場面では左サイドハーフのアレックス・シャルクと柴戸の距離が開きすぎており、岡本から瀬川への縦パスがこのスペースを通過してしまっている。


ボランチとセンターバックの間隔も広がっていたため、この間でボールを受けようとした瀬川を挟み込むこともできず。5分17秒に自陣でボールを受けた岡本からすると、右ウイングバックの石原広教と、中央の瀬川の両方にパスを出せる状況だった。


前半7分13秒以降の湘南の攻撃シーン


前半7分13秒以降の湘南の攻撃シーンでも、アンカーの茨田に対する浦和陣営の守備が曖昧に。江坂が自陣に戻りながら茨田にアプローチしたが間に合わず、同選手の配球からベルマーレのサイド攻撃が生まれ、石原広教のクロスから瀬川がヘディングシュートを放っている。


今季のルヴァン杯優勝の可能性を残している浦和にとって、ハイプレスの練度の向上は急務と言えるだろう。今節の後半開始時には布陣を[4-1-2-3]に変え、ダヴィド・モーベルグ、ユンカー、シャルクの3トップで湘南の3バックを捕捉できていただけに、リカルド・ロドリゲス監督の今後の采配も浮沈の鍵を握りそうだ。


湘南ベルマーレ FW瀬川祐輔 写真:Getty Images

湘南はカメレオンサッカーでJ1残留を果たせるか


直近のリーグ戦3試合連続で勝利を逃している湘南だが、今節も山口智監督のもとでの積み上げが感じられる試合内容だった。


浦和相手の勝ち点1奪取の要因は、ハイプレスと撤退守備を状況に応じて使い分けたこと。浦和が4バックのままビルドアップを行った場面では、瀬川とウェリントンの2トップが相手の2センターバック(岩波拓也とアレクサンダー・ショルツ)を捕捉し、ハイプレスを敢行。浦和の両サイドバック、酒井宏樹と馬渡和彰(後半から大畑歩夢)には湘南の両ウイングバックもしくは2インサイドハーフが対応した。


浦和の2ボランチの片割れが2センターバック間に入り、変則3バックを形成した際には[5-3-2]の陣形による撤退守備を選択。3バックの相手に対し、2トップのままハイプレスをかけるという猪突猛進な守備を控え、チーム全体で的確に状況判断を行えていた。




湘南ベルマーレ 山口智監督 写真:Getty Images

隊形変化が激しいチームに対抗するには


洋の東西を問わず、近年は相手の基本布陣やプレスのかけ方に応じて自分たちの陣形を変え、マークのずれを作りながらビルドアップを行うチームが増えている。


隊形変化が激しいチームに対抗するには、相手の布陣に自分たちの守備隊形を適合させたうえでハイプレスをかけるか、ハイプレス自体を諦めて自陣後方へ下がり、最終ラインの背後やバイタルエリアを埋めるのが得策。


8月7日のJ1リーグ第24節、北海道コンサドーレ札幌戦ではどちらの戦法を採るのかをチーム全体で意思統一できず、湘南は1-5の大敗を喫したが、5月25日と9月3日のリーグ戦では川崎フロンターレを相手にメリハリのある守備を行い、“シーズンダブル”(同一シーズン内で同じ相手に2勝)を達成している。


チョウ・キジェ元監督(現京都サンガ)時代(2012-2019)は[3-4-2-1]の布陣を基調とするハイプレスがクラブのカラーとして根付いていたが、今では相手によって色を変えるカメレオンサッカーが板についた。


湘南は今年のJ1リーグで無失点試合数が“10”に達しており、これは同リーグ全18チームのなかで、3番目に良い成績。シーズン最終盤を迎えるにあたり守備が熟れてきたことは、J1残留争いに巻き込まれている今の湘南にとって、追い風となるだろう。対戦相手の出方に即した守備を継続しつつ、浦和戦でも浮き彫りとなった決定力不足を解消できるかに注目だ。

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