【木村和久連載】善行の押し売りか。「ターフエイド」をどう考える?

9月19日(木)10時17分 Sportiva

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第222回

 英国生まれの紳士のスポーツであるゴルフでは、自分がボールを打って、ディボット跡をこさえてしまったら、砂で目土をして、新たな芝生が早く育つようにしなさい、と。それがマナー、と教えられました。

 そうした行為を、最近では「ターフエイド」と呼んでいます。

 言っていることは、正論です。まこと正しい、素晴らしきアマチュアゴルファーの精神です。

 けど、昨今のゴルフ人口減少の折、言わせてもらえば「ターフエイド」をやらされているから、新しいゴルファーが増えないのではないでしょうか。ビギナーは、目の前のショットのことで頭がいっぱいです。だから、自らが作った芝生の穴に砂を撒くなんて、そんな余裕はないのです。

 今回のテーマにおいては、反対意見の方も結構いるでしょうし、「ゴルフの冒涜だ」とお怒りになる方もいるでしょう。ですが、ゴルフをもっと楽しい方向に改善していかないと、ゴルフ人口の減少は食い止められません。あえて、一石を投じたいと思います。

 まず単純が疑問から。

●ディボット跡の砂埋めは”仕事”では?
 本音を言えば、ディボット跡の砂埋めは、キャディーさんなどゴルフ場のスタッフが、時間が余った時にやればいいと思います。

 実際、お客さんのラウンドが終わりつつある夕暮れ時、キャディーさんが手分けをして、コースに砂を撒いている姿を見たことがあります。シニアの人材活用のアルバイトで、1時間でいくらかの時給を払って、砂撒きスタッフを雇っているコースもあります。

 けど、お客さんに対しては、人手が足りないのか、「ターフエイドに参加してください」と、呼びかけているのが一般的です。

 だから、乗用カートには必ず砂を入れる目土袋が付いています。あまり使われていませんけどね。使われていない目土袋は、中が空っぽゆえ、すごく揺れます。乗用カートの後方で、ブラブラしている目土袋を見ると、ちょっと虚しい気もしますが、それが現実です。

●ディボット跡の砂埋めは「マナー」なのか?
 みなさん、かつて学校に通っていた頃の、掃除の時間を思い出してみてください。我々はたしか、中学校ぐらいまでは、授業が終わった放課後にやらされていましたよね。

 でもそれが、高校ぐらいになると、やらないところもあります。予備校や大学となれば、生徒がやることは完全になくなって、業者の人が掃除をやっていました。

 掃除は、教育の一環だったのでしょうか? ただの人材不足、予算不足だから、子どもにやらせていたのかもしれません。

 そう考えると、ディボット跡の砂埋めも「マナー」という名のもとに、ゴルフ場のサービスが行き届かない部分を、お客さんが補わされているのではないか。そう捉えることもできます。

 我々は、なんか騙されていませんかね?

●名門コースはキャディーが全部やる
 名門コースでは、おおよそキャディーさんが付いてラウンドします。そういう時は、ダフッてもキャディーさんがスコップで砂を撒いて、ディボット跡を埋めてくれます。

 バンカーから打ったあとの砂ならしも、プレーヤーがやろうとすると「いいですよ。あとはやりますから」なんて言って、キャディーさんがレーキで砂をならしてくれます。

 つまり、ゴルフのラウンドにおいては、キャディー付きの”フルサービス”と、キャディーが付かない”セルフプレー”があって、セルフプレーでは、バンカーならしや、ディボット跡の砂埋めも、自らやらなければいけない、ということです。

 ただ、ディボット跡の砂埋めは、コースのメンテナンス作業の部類に入ると思うんです。セルフサービスのうどん屋さんで、食後のどんぶりが乗ったトレーをテーブルなどに置いたまま帰ったとしても、大した問題にならないですよね? ディボット跡の砂埋めも、それと同じようなこと、と理解してもいいんじゃないでしょうか。

●ビギナーにはつらすぎる作業
 ディボット跡の砂埋めを、メンバーさんは大抵やりますよね。それは、ホームコース、すなわち”我が家”ですから、自分の庭の芝が傷んだ時と同じように、修復作業を行なうわけです。

 あと、シングルさんね。うまい人は、ショットの数が少ない。トータル70回ちょっとしか打たない。だから、周りを見る余裕があるので、ゴルフを嗜む”紳士”として、他の人の分まで砂撒きをしてあげるんですな。

 けど、スコア100以上を叩く人にとっては、ディボット跡の砂埋めなんて、ペナルティーにしか思えません。汗だくになって、フェアウェーを駆けずり回っているのに、砂袋なんて持てるわけがありません。

「(ディボット跡に)『砂を撒け!』って言うなら、もうショットなんかしないもんね」——それぐらいの気持ちになります。

●ディボット跡を砂で埋めないと処罰されるの?
 今まで、ディボット跡の砂埋めをやらないで、叱られたとか、訴えられたとか、そんなことはないです。ディボット跡の砂埋めをゲストがやらないから潰れた、というコースも聞いたことがないです。

 ディボット跡の砂埋めは、あくまでも余裕のあるゲストへのお願いです。”お願い”ですから、やらない人へのペナルティーはないのです。

 この”お願い”を、”マナー”にすり替えるから、困るのです。マナーになると、砂を撒かない人は”マナー違反”になります。

 普通にお金を払ってプレーしているのに、なんで砂を撒かないと”マナー違反”になるのか、理解に苦しみます……。



ディボット跡を作って逮捕されることはないんですけどね...


●ディボットの砂埋めをいっそなくせば……
 感覚的には、アベレージゴルファーの90%ぐらいは、ディボット跡の砂埋めをやっていない気がします。だって、しょっちゅうダフるんだから、いちいち砂を撒いていたら、ゴルフになりません。

 だったらもう、ゴルフ場側が「ディボット跡の砂埋めは、全員やらなくていいや。スタッフが夕方総出で砂撒きをするので、『ターフエイド』に参加しなくて結構です。ボランティア精神でやりたい方はどうぞ」といった姿勢を取れば、これが話題になって、逆に人気コースになるかもです。

●タラのつまみを食べてラウンドする時代
 人気女子プロゴルファーが、タラのつまみを食べて優勝する時代です。砂なんて撒いている場合じゃないです。

 もちろん、プロには帯同キャディーがいて、バンカーならしやディボット跡の砂撒きをやってくれます。要は、それだけプレーに集中してほしいわけです。

 だったら、我々アマチュアも、楽しくプレーに集中したい!

 砂埋めの苦行は忘れてもいいけど、つまみは忘れるな。長いタラを食べながら、食いちぎったところをスマホで撮って、インスタでアップする——今や、そういう時代なんですよ。

●折衷案はあるのか?
 最初からゴルフ場側が、「メンテナンスをやる人がいないので、なんとかディポット跡の砂埋めを協力してください」と言ってくれれば、「そうなの。じゃあ、仕方がないね。砂撒きぐらいは手伝うか」という気持ちになります。

 それを頭ごなしに、「マナーだからやって」と言われても、善行を強制しているようなもの。そういう善行の押し売りは苦手です。

 折衷案としては、山盛りの砂を撒いたら、クラブハウスのコーヒー券をくれるとか。そういうことでいいんじゃないでしょうか。

 我々は、平日に1万円ぐらい払って、コンディションのいいコースで、ラウンドをする権利を得ているのです。コンディション作りに関して、決してさせられる側ではありません。あしからず。

Sportiva

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