【あなたは何しに?】開幕戦のレッドブル・ホンダF1表彰台を機内アナウンスで祝福したJALの名物機長

2019年9月20日(金)7時30分 AUTOSPORT web

 F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。今回は開幕戦オーストラリアでホンダ表彰台を機内アナウンスで祝福していたJALの機長がプライベートでイタリアGPに訪れていたので話を聞いた。


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 レッドブル・ホンダのチームシャツを着てパドックに立つこの日本人は、ホンダの関係者でもなければ、レッドブルのチームスタッフでもない。簡単に言えば、一般のF1ファンのひとりだ。


 しかし、ただのファンではない。この方の名前は山田太理さんで、職業はJAL(日本航空)の機長。そう聞いて、うなずけた読者はかなりのF1通だ。そう山田機長は、今年の開幕戦後にメルボルンから成田へ向かうJL774便の機長を務め、機内アナウンスでホンダの表彰台獲得を祝福するメッセージを贈った、あの名物機長さんなのである。

JALの機長、山田太理さん


 その山田機長が、どうしてイタリアGPに来ているのか。


「じつは私は学生時代からのF1ファンなんです。大学受験のときだから、1986年だったと思います。まだ日本ではフジテレビさんの中継が始まる前で、カーグラTVでダイジェストを見たり、雑誌のオートスポーツを買って記事を読んでいました。当時ホンダさんはウイリアムズと組んでいて、ピケやマンセルを応援していました」ほどの、筋金入りのF1ファンだったのである。


 1992年にJALに入社した山田さんは操縦士になるためのトレーニングを積むためにアメリカ・カリフォルニアへ。厳しい訓練の日々とF1がポピュラーでない土地柄ということもあり、しばらくF1から遠ざかることとなった。


 しかし、F1への愛が消えることはなく、帰国後に再びF1をフォロー。同じ年のミハエル・シューマッハーを応援しつつ、自らもJALの機長として、世界へ羽ばたいて行った。


 その山田機長は現在、JALが保有するボーイング787機の国際線の機長を務めている。JALの787機が就航している都市のひとつにメルボルンがあり、今年の3月中旬に担当した。ちょうどメルボルンではF1オーストラリアGPが開幕しており、山田機長の次のフライトは3月18日(月)。つまり、オーストラリアGPのレース翌日。こんなチャンスは滅多にない。山田機長はアルバートパーク・サーキットへ観戦チケットを買いに行った。


 その目の前で、ホンダが11年ぶりに表彰台を獲得。86年からホンダを応援してきた山田機長が歓喜したのは、言うまでもない。


 成田へのフライトには、日本からF1観戦に来ていた乗客が大勢乗っていた。そこで山田機長は、機長によるウェルカムアナウンスに、ホンダF1の話題を採り上げることを決断。あとはそのタイミングだった。通常であれば、離陸した後、機体が安定飛行に入ってからというのが一般的だ。


 しかし、メルボルン発成田行のJL774便は、深夜発。飛行前の先任客室乗務員とのミーティングで「安定飛行に入ったときには、すでに就寝したしている乗客が大勢いるので、ウェルカムアナウンスはメルボルン離陸後ではなく、成田着陸前の早朝のタイミングにしよう」ということになったという。目覚めとともに、スピーカーから流れてきた山田機長によるウェルカムアナウンスは、大勢のF1信者にとって、ご来光ならぬ、ご来声となったわけだ。着陸後、JALに乗客から好意的なメッセージも寄せられたという。そのひとりがホンダの山本雅史F1マネージングディレクターだった。


 残念ながら、山田機長の今回のイタリアGP訪問は機長としての仕事ではなく、完全なプライベートということと、ホンダもイタリアGPでは表彰台に上がることはできなかったので、私たちが山田機長による名ウェルカムアナウンスを聞くことはなかった。しかし、JALの787機が就航している都市はメルボルン以外にもあり、そのいくつかの国はF1を開催している。再び山田機長による名ウェルカムアナウンスを、私たちが聞くチャンスが訪れる日は、そう遠くないかもしれない。


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