松井秀喜氏、特別インタビュー(下) 高木京に贈る言葉、そして自身の今後

9月21日(木)11時24分 フルカウント

自身の今後、“親友”ジーターのマーリンズ共同オーナー就任は?

 選手生活を終えて5年がたつ。米大リーグ、ヤンキースのゼネラルマネジャー特別アドバイザーを務める松井秀喜氏は傘下のマイナーリーグで打撃指導を担当する充実の日々を送っている。編成にも携わる現在の仕事や、日本球界への思いなどについてニューヨーク州にある1Aスタテンアイランドの本拠地で聞いた。全3回の特別インタビュー。第3回は「高校の後輩・巨人高木京、そして自身の今後」について。(聞き手・江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授、神田洋)


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 松井氏がマイナーで指導したこともあるアーロン・ジャッジ外野手、ゲーリー・サンチェス捕手は、メジャーでスーパースター候補生として華々しいスタートを切った。若手選手にとって、かつてのヤンキースの主軸打者と過ごす時間は、貴重なものとなっている。そして、ゼネラルマネジャー特別アドバイザーとしての日々は、松井氏本人にとっても、今後の野球人生へ向けての貴重な経験となる。

 新しい選手の台頭だけでなく、大リーグは変化を続けている。テクノロジーの進歩や新規則の導入があり、元同僚のジーター氏がマーリンズを買収してオーナーになるという驚きのニュースもあった。

「大きな変化と言えば、かつて薬物がどれだけまん延していたか。僕の1年目から薬物検査はあったが、罰則ができたのは2年目だった。それから規定が厳格になり、ようやく正常になった。そういう意味で良かった。チームメートにも公の場で筋肉増強剤の使用を認めた選手がいたし、殿堂にグレーの選手がいても不思議ではない。そういう時代だったと考えるしかない。

 テクノロジーの進歩にはついていっていない部分がある。球の回転数などを数値化しているが、皆どう活用しているのだろう。興味はあるし、やるのはいいと思う。ただ自分はそういう時代の選手でないから、分からない。選手はそこまで気にしなくてはいけなくなったのか。僕が打撃で気にしたのは、投手攻略のための打席でのアプローチと自分の打撃。ほぼその2本の柱だけを意識していた。むしろ余計な情報は入れないというタイプだった。今の立場で他人の打撃を指導することになり、ビデオだけはよく見るようになった。ダッグアウトからではコースや投球の軌道が分からないから。

 ヤンキースは規律という意味ではそんなに変わっていない。ジョー・ジラルディ監督がやろうとしていることは、ジョー・トーリ監督時代のチームとそれほど違わないはずだ。ただコア・フォー(ジーター、ポサダ、リベラ、ペティットの生え抜き4人)がいなくなった。それが大きな違い。彼らほどトーリ野球を体現していた選手はいない。キャンプでタンパに行ったときに4人がいない違和感はある。

 ジーターがオーナーになるのは楽しみ。これから何をやってくれるのか。感じとしてはバスケットボール界のスーパースターでNBAホーネッツのオーナーにもなったマイケル・ジョーダンに近いと思う。オーナーとしてどこまで野球に携わるかが楽しみ。一番仲のいいポサダがマイアミにいるし、あの2人は一緒に何かやるかもしれない」

失格処分を受けた高木京への言葉「成績ではない。姿勢」、自身の今後は「はっきりしたプランは…」

 日本では古巣の巨人で球界を揺るがせた事件が起こった。15年10月に巨人の投手による野球賭博への関与が発覚。16年3月までにいずれも巨人の4選手が処分を受けた。松井氏にとって石川・星稜高の後輩である高木京介投手は1年間の失格処分を受け、今年3月に育成選手として復帰した。

「ああいうことを少なくとも4選手がやっていた。罪悪感がないというか、これはプロ野球選手としてやってはいけないと思わない人間が少なくとも4人いた。それをお互い許している空気が普通じゃないと思う。見つからなかったらOKでしょうとか、もしくは最初から全然悪いことだとは思っていないとか。その感覚はプロ野球選手として非常に残念。もうちょっと上の人が知っていれば咎めたのだろうけど、いくら若い選手でも、続けていたのはなんでだろうと思う。

 ただ、自分が選手の時に百パーセント誰もやっていなかったと断言はできない。それは分からない。チームメートだとしても普段何をしているかまでは分からない。今回は少なくとも4人が自分で何をしているかを自覚していて、それを悪いことと考えなかったのは普通でない。

(高木京は)1年間の謹慎で許してもらえたのがいいか悪いかは別として、本人が復帰の道を選び、球団が戻したというのは彼も球団も相当な覚悟があったのだろう。もしかしてやめた方が楽と考えることもできなくはない。(野球賭博に関与して)戻ったという前例はないのかもしれない。本人が望むなら復帰できればいいと思うし、極めて個人的な意見だが、彼の今後に期待している。

 ただ、大変な道だ。戻してもらったことをみんなに納得してもらえることはまずない。でも戻してあげて良かったと思ってくれる人が少しでも増えるような姿勢を見せてほしい。成績ではない。姿勢。はっきり言って結果で恩返しをするということではない。今後の彼の野球に対する、またファンに対する姿勢にかかっている。こういうことが2度と起こらないようにするための活動の力にもならないといけない。いろいろなことを背負って戻ってきたと感じている」

 監督としての日本球界復帰を望む声がファンの間にはある。米国で暮らし始めて15年目。ヤンキースの一員として多忙な日々を送る。日本球界への貢献について思うところも当然ある。

「この仕事をしていると、日本のプロ野球について聞かれることは結構ある。80数年の歴史があり、いまだに人気はトップ。改善点はもちろんあるだろうが、日本の野球は素晴らしい。プロ野球に10年間お世話になってそう実感する。

 今こうやって素晴らしい経験をヤンキースにさせてもらっている。まずこういう機会を提供してもらったことをヤンキースに感謝しなくてはいけない。なかなかしたくてもできないこと。この経験をいつか生かす時があるのか。それも考えなくてはいけない。日本球界にどういう形で返すのか。もちろん今はヤンキースでの仕事に集中して組織の力にならなくてはいけない。今後のはっきりしたプランは持っていない。20年間選手をやったことを土台として、3年間この仕事をやっている。この3年間で積み上がった部分は、これまでの20年間とはまたちょっと違う。これをどうするか。これからの課題にしたい」

◇プレゼント 松井秀喜氏の著書「エキストラ・イニングス 僕の野球論」に本人の直筆サインを入れて2名にプレゼントします。ご希望の方は、氏名、年齢、住所、電話番号をご記入の上、「松井秀喜氏サイン本プレゼント応募」とタイトルにつけて、9月31日までにinfo@full-count.jpまでメールを送信してください。当選者の発表は、発送をもってかえさせていただきます。

(神田洋 / Hiroshi Kanda)

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