必ずしも順風満帆とはいかない? 若くしてプレミアリーグデビューを果たした“神童”たち

2022年9月21日(水)18時1分 サッカーキング

ヌワネリ(中央)はレノン(左)やエリオット(右)のようなキャリアを歩めるのか [写真]=Getty Images

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 18日に行われたプレミアリーグ第8節ブレントフォード対アーセナル戦で、アーセナルのMFイーサン・ヌワネリが「15歳181日」というプレミアリーグの最年少出場記録を打ち立てた。左利きのプレイメーカーは飛び級で呼ばれているU−17イングランド代表でも既にゴールを奪っており、アーセナルのアカデミー史上最高傑作との呼び声も高い。今夏から同クラブのU−18チームの監督を務める元イングランド代表MFジャック・ウィルシャーをも超える才能だという。

 ヌワネリには大いに期待したいところだが、果たして“神童”と呼ばれる逸材は大成するのだろうか? プレミアリーグで注目を浴びた過去の“逸材”はどんなキャリアを送っているのか見てみよう。

[写真]=Getty Images

■ハーヴェイ・エリオット


 ヌワネリに抜かれるまでプレミアリーグ最年少記録を保持していたのが、現在リヴァプールで活躍するMFハーヴェイ・エリオットだ。フルアムに所属していた2019年5月に「16歳30日」でプレミアリーグデビューを果たし、当時の最年少記録を樹立。そのシーズンはプレミア残り2試合に出場したが、チームが降格の憂き目に遭ったこともあり、シーズン終了後にリヴァプールへと移籍した。

「彼は間違いなく傑出したタレントであり、何より良い子だね」とユルゲン・クロップ監督が絶賛した才能は、加入1年目には主にユースチームとU−23チームでプレー。翌2020−21シーズンにイングランド2部のブラックバーンへ武者修行に出ると、そこでリーグ戦41試合に出場して7ゴール11アシストと大活躍した。

 満を持して迎えた2021−22シーズンの第2節にプレミアリーグ初スタメンを果たしたが、直後に足首の脱臼骨折という大怪我を負って5カ月ほど離脱した。それでも見事に復帰を果たすと、今はすっかりトップチームの一員に定着しており、今季リーグ戦はチーム最多タイの6試合に出場している。

 移籍情報サイト『Transfermarkt』によると、現在エリオットの市場価値は3150万ポンド(約50億円)。同じ2003年に生まれた選手としては、イングランド代表MFジュード・ベリンガム(ドルトムント)、ドイツ代表MFフロリアン・ヴィルツ(レヴァークーゼン)、ドイツ代表MFジャマル・ムシアラ(バイエルン)に次ぐ4位の市場価値となっている。

■マシュー・ブリッグス


 2007年5月にフルアムで当時最年少となる「16歳68日」でプレミアリーグデビューを果たしたDFマシュー・ブリッグスは、プレミアリーグの舞台に定着することができなかった。フルアムではレギュラーを掴むことができず、期限付き移籍を繰り返したあとに退団。その後は主に下部リーグのクラブに所属しながら、15クラブを渡り歩いてきた。一時はイングランド8部のクラブに所属し、その後はデンマークのクラブを経て、2021年からイングランド7部のセミプロクラブであるゴスポート・バラに在籍している。

 現在31歳のブリッグスは、U−21イングランド代表経験もあるが、2015年から祖母のルーツであるガイアナの代表選手となっており、今年6月のCONCACAF(北中米カリブ海)ネーションズリーグにも出場していた。

■イザイア・ブラウン


 2013年5月にウェスト・ブロムウィッチで「16歳117日」でのプレミアリーグデビューを果たしたMFイザイア・ブラウンは、同年の夏に争奪戦が繰り広げられるほど才能を高く評価されていた。結局、チェルシーが獲得したのだが、16歳の引き抜きは物議を醸すことに。わずか200万ポンド(約3億円)の補償金で“神童”を引き抜かれたWBAは、育成しても引き抜かれるのならアカデミーを経営する意味がないとして、一時はユースシステムの撤廃を検討したという。

 そんな才能も、チェルシーでは公式戦1試合に起用されたのみ。期限付き移籍を繰り返したあと、契約満了に伴い2021年に2部のプレストン・ノースエンドに加入した。しかし、プレシーズン中にアキレス腱断裂の怪我に見舞われて試合に出られず、今夏チームから放出され、現在は無所属となっている。

■アーロン・レノン


 プレミアリーグの最年少デビュー上位14名のうち、同リーグで200試合以上に出場しているのはアーロン・レノンしかいない。現在35歳の快足ウインガーはリーズ時代の2003年8月に「16歳129日」でプレミアリーグデビューを果たすと、2005年夏にトッテナムへ移籍し、同クラブで10年間プレーした。その後はエヴァートンでも活躍し、昨季までバーンリーに所属。プレミアリーグでは歴代34位となる通算416試合に出場して36ゴール。今夏にバーンリーを退団してからはフリーエージェントとなっている。

■ジョゼ・バクスター


「次のウェイン・ルーニー」と謡われた逸材は29歳で引退を余儀なくされた。2008年8月に「16歳191日」でプレミアデビューを果たした攻撃的MFジョゼ・バクスターは、エヴァートンの先輩であるルーニーと比較される神童だった。エヴァートンでは公式戦15試合の出場に留まり、その後はイングランド3部と4部のクラブを転々。2020年には渡米してアメリカ2部のクラブにも所属したが、翌年8月に29歳で現役引退を発表した。

 彼が大成できなかった原因の1つが、若すぎる成功だった。過去のインタビューで本人も認めているが、若くして大金を手にしたことで「自分の周りにはイエスマンばかりが集まった」という。中には悪い道へ誘う者もおり、バクスターは薬物に手を出してしまった。そのせいで20代前半の大事な時期に長期出場停止処分を受け、所属していたシェフィールド・Uから放出され、最終的に3年ほど公式戦の舞台から遠ざかった。「人生最悪の時期で、死のうとも考えた」と明かしている。

 そんな彼に助けの手を差し伸べたのは、古巣エヴァートンの会長だった。練習に招くだけかと思いきや、1年契約まで用意して、違法薬物の使用で解雇された選手に人生をやり直すチャンスを与えたのだ。それでも空白の時間が長すぎて、バクスターが再びプレミアリーグの舞台に返り咲くことはなかった。引退を発表した日、バクスターはこう語った。「プレミアリーグやヨーロッパリーグでプレーして、年代別代表のキャプテンまで務めた。そして聖地ウェンブリーでもゴールを決めた。それでも今は暗い気持ちだし、才能を活かせなかったと思っている。若い頃の馬鹿な過ちのせいで3年間も試合から離れた。あれ以降、自分の体は以前とは変わってしまったんだ」

 だが、そんな過ちを犯した男だから後輩たちに何か伝えられることがある。バクスターは引退後、古巣エヴァートンのアカデミーでコーチを務めているのだ。

 このように、若くしてプレミアリーグでデビューを果たしても、順風満帆のプロキャリアが約束されたわけではない。むしろ、それが足かせとなって挫折する選手もいる。それでもサポーターは神童と呼ばれる逸材に期待してしまうもの。だからこそ、今後も若き才能に注目していきたい。

(記事/Footmedia)

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