グランツーリスモ・ワールドツアー第4戦、日本の宮薗が初表彰台。欠場のフラガは公式に謝罪【大串信の私的レポート】

2019年9月25日(水)12時32分 AUTOSPORT web

 9月13〜14日に行われた『FIA グランツーリスモ チャンピオンシップ』第4戦レッドブル・ハンガー7のネイションズカップで、ミカエル・ヒザル(ドイツ)がとうとう勝った。第3戦ニューヨークでイゴール・フラガ(ブラジル)と激しく争い、フラガからその後物議を醸すことになるリフティングを受けて優勝を逃したヒザル。これまでも勝利を目の前にしながら2位に終わることが続いた。


 実は今回、フラガがネイションズカップを欠場したためヒザルとの再戦は実現しなかった。フラガはすでにワールドファイナルへの出場権を確保したため、自身のリアルモータースポーツ活動を優先し、フォーミュラ・リージョナル・ヨーロピアン・チャンピオンシップのテスト走行を優先したからだ。


 しかしテストを終えたフラガはネイションズカップ決勝スタート直前に会場へ姿を現し、前回の自分のドライビングについて公式に謝罪、ヒザルも気持ちを入れ替えてレースに臨むこととなった。


 フラガのいないネイションズカップでヒザルの前に立ちふさがったのは進境著しい宮薗拓真(日本)だった。宮薗は前回のニューヨーク大会で奇策3ピットストップ作戦を繰り出し、フラガ、ヒザルのトップ争いに加わるところだった。


 しかしコディ・ニコラ・ラトコフスキー(オーストラリア)のラフプレーでコースオフ、惜しくもトップ争いからは脱落していた。

第4戦の舞台となったのはレッドブル・ハンガー7。全体をガラスで覆う特徴的な建物
普段は航空機やレーシングカーのコレクションが無料で一般公開される会場のハンガー7


 今回、宮薗は公式予選でポールポジションを獲得したヒザルの、わずか1000分の2秒に迫るタイムを記録、今回もその速さが健在であること、むしろ速さを増していることを示した。


 そして予選3番手には因縁のラトコフスキーが続き、ネイションズカップのワールドツァースターティンググリッドは相変わらずのスーパーハイレベルな顔ぶれとなった。

決勝を走るヒザル、宮薗、ラトコフスキーのレッドブルX2019コンペティション


 9月14日、現地時間20時からレッドブルリンクを舞台に、マシンはレッドブルX2019で開催された決勝レースは緊迫した展開となった。上位3台はスタートでソフトタイヤを選択する順当な作戦を選択。スタートの瞬間、宮薗は1コーナーに向けてヒザルのイン側に飛び込もうとしたがヒザルはこれをブロック、ヒザル、宮薗、ラトコフスキーの順でレースを引っ張り始めた。


■無給油でトップに立った宮薗、追うビザル


 宮薗はなんとしてでもヒザルに食らいついていかねばならないところだったがヒザルは冷静に安定したペースで飛ばす。そして7周目、宮薗はわずかにミスをしてヒザルとの間隔は開いてしまった。


 ラトコフスキーは8周目でタイヤをミディアムへ交換、ヒザルと宮薗は9周目にミディアムへ交換したが、宮薗は給油をせずヒザルの前へ出る思い切った作戦を採り、ヒザルは順当に給油をして宮薗の後でレースに復帰した。ラトコフスキーは1周で再びピットイン、ハードタイヤを捨ててミディアムタイヤに交換する作戦に出た。


 宮薗はトップで逃げる。ガス欠覚悟の身軽な状態でヒザルを突き放しておかなければならないところだが、ヒザルは冷静な走りでペースを守り、宮薗との間隔を維持する。周回を重ねる毎に、状況はヒザル有利に傾いていった。


 12周目、3番手のラトコフスキーはピットイン、もう一度ソフトタイヤを履き直し給油を行った。リスクはあるが、安定したペースで格闘する宮薗とヒザルを逆転するために必要な奇策だった。コースに復帰したラトコフスキーはファステストラップを記録しながら猛然と追い上げを始めた。


 15周を走り終え、宮薗はガス欠寸前の状態でピットイン、ハードタイヤへ交換して給油を行った。この間にヒザルがトップに立った。宮薗は18秒遅れでコースに戻ったが、むしろソフトタイヤで追い上げる背後のラトコフスキーを意識しなければならない状況だった。


 17周終えてヒザルはピットイン、ハードタイヤへ交換するとともに少量の給油を行って宮薗の6秒前でコースに復帰した。勝負がついた瞬間だった。その後、ヒザル、宮薗、ラトコフスキーの間隔は少しずつ縮まっていったがヒザルはまったく動ずることなくペースを守り、トップのまま20周を走りきってフィニッシュした。4秒7差で宮薗が2位、さらに2秒1置いてラトコフスキーがレースを終えた。

フィニッシュ直後、健闘を称え合う初優勝のヒザル(右)と2位宮薗


 念願のワールドツァー初優勝を遂げたヒザルは、フィニッシュの瞬間、喜びをかみしめるような表情を見せた。今回は足の指を骨折するケガを押しての出場で、シューズを履かず足の痛みを避けてペダルを操作しながらの完勝だった。ニューヨークで表彰台を逃した宮薗にとっては初めての表彰台。ラトコフスキーはニューヨークでのミスを反省したのか、大人しいレース運びだった。


 なお前日に開催されたマニュファクチャラーシリーズ決勝では、アウディが速さを見せたが戦略のミスで順位を落とし、ニューヨーク大会に続いてメルセデスが2連勝を遂げた。2位にポルシェ、3位にはスターティンググリッド8番手から戦略を当てたトヨタが入賞した。

マニュファクチャラーカップ表彰台。メルセデスが2連勝を飾る


 ワールドツァー第5戦は東京モーターショーの会場で10月26日〜27日に開催される。



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