浦和レッズレディース塩越柚歩が好きだった選手。「実は昔からプレー集とか見たりしてました」

9月25日(土)10時40分 Sportiva

 どこか遠慮がちにプレーしていた。「もっと積極的に!」指揮官から何度も声がかかる。塩越柚歩はそんな選手だった。しかしオリンピックで見せた彼女のプレーは軽やかですべてをふっきったプレーに見えた。ほんの1年前まで人前で話すことが苦手だったプレーヤーが大きな成長を見せ、日本で初めてとなる女子サッカーのプロリーグであるWEリーグに臨んでいる。飾らず真摯に紡がれる等身大の言葉には確かな覚悟が秘められていた。


東京五輪とWEリーグでの試合について語った浦和レッズレディース塩越柚歩
──2年前、浦和レッズレディースに森栄次監督が就任し、チームが大きく変わり始めました。

「森さんのサッカーは簡単に言うと、ポゼッションサッカー、パスサッカーです。流動的なサッカーも好きだし、自分に合ってるなって思いました。そんな矢先にケガをしてしまって......。だから手術も勇気が必要だったし、悩みました。みんなのコンビネーションが深まっていくのを感じながら早く混ざりたい気持ちも、悔しい気持ちもあって......一緒にプレーできない自分にモヤモヤしている時期がありました」

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──今でこそ、阿吽の呼吸でゴールを生む菅澤優衣香選手との連係プレーですが、復帰して間もない頃はとてもぎこちなかったですよね。どう構築していったのでしょう?

「ひとつひとつのプレーが途切れた時に、『こうしたかった』とか『こうしよう』という話はしていました。プレーしながらお互いの特長と動き出しのタイミングをわかり合ってきた感じ。お互いが求めてる感覚が合ってきたのかなって思います」

──塩越選手独特のボールを失わないプレーにおいて、心がけていることは?

「相手がどっちにプレスをかけてきそうだなっていうのはパスを受ける前に感じ取るようにはしています。相手を引き寄せるトラップをして逆にターンをするのは得意なんです。相手を背負ってる時は、相手からボールが見えないポジションを取ったり......。優衣香さんみたいに体の強さでキープはできないので、タイミングをずらすことを意識しています」

──相手にとってすごく嫌なところに立っているんですよね。

「裏を走ってみたりして相手をチェックしますね。どんなプレーを嫌がるのか、相手がちょっとサボってるところを突くとか......。なんか私、嫌な感じですけど(笑)、そこは狙っています」

──浦和はファーストディフェンスが速いです。塩越選手としてはやりやすいですよね?

「めちゃくちゃやりやすいです! ボランチのふたり(柴田華絵、猶本光)がボールを取ってくれるのでそのこぼれ球を拾って攻撃につなげられる。本当にボランチのふたりあってのレッズの守備だなって思います」

──そうした浦和での取り組みがなでしこジャパン入りにつながりました。高倉麻子監督(東京五輪後に退任)とは2016年のU−20ワールドカップでも一緒に戦っています。当時と比べて今の自分だからできるという実感はありましたか?

「U−20のときは本職じゃないサイドバックで呼ばれていて、あまり試合に絡めませんでした。今回は本来のポジション(MF)での評価だったので嬉しかったです。ただ周りのレベルも上がっていますから、自信はありませんでした。それでも毎回代表に呼んでもらって、求められるプレーを感じられるようになっていくうちに自分はもっとやれるんだって思ったんですよね」

──いろいろポジションを試されていましたけど、自分のなかでしっくりきたのはオリンピックに入ってからでしょうか?

「そうなんです。オリンピックを目指しながらも、今まで世界大会を経験した選手たちのなかでほぼ経験のない自分が選ばれるわけないっていう気持ちもどこかにあったんです。でも選ばれて、やっとなでしこジャパンの一員になれたなって。そこから気持ちの変化が出てきました。実際のオリンピックは初めてだったからこそ、相手に対する怖さがなくて、みんなが感じるほどのプレッシャーはありませんでした」

──これまでになく伸び伸びとプレーしていたように見えました。納得できるプレーはできましたか?

「結局出場は2試合でしたけど、イギリス戦は守備の部分で上手くハマった手応えがありました。自分の守備から相手のミスを誘ったり、それがいい攻撃につなげられたタイミングが何回かあった。どうしても攻撃で目立ちたいっていうのはありましたけど、イギリスが相手だと攻撃は上手くさせてもらえないので守備で頑張ろうって自分のなかでシフトチェンジしたんです。自分だけの守備の力ではなく、周りからの声かけとかで「ここ行ける!」っていう感覚がオリンピックで一番印象に残ってます」

──対戦相手で「すごい!」と感じた選手はいましたか?

「イギリスの左サイドハーフのローレン・ヘンプ選手です。とにかく足が速くて強くて。事前のスカウティングでも場合によってはファウルをしてでも止めたほうがいいという話でしたが......ファウルすらさせてもらえないんですよ(苦笑)。全然追いつかないし、ふたりで囲んでも倒れない選手でした」

──チーム内で一緒にプレーしたからこそ感じた「すごい!」選手は?

「やっぱりブチさん(岩渕真奈)。(熊谷)紗希さんもそうですけど、ずっと世界と戦ってきて、今も海外でプレーしているし、W杯優勝を経験しているからこそのメンタリティーもすごかった。初戦の前にブチさんが『この大会が人生で一番頑張る大会にしたい』って言っていたのがすごく心に響きました。ここに賭けてるものが、自分が思う以上に大きいものなんだなって感じました。イギリス戦ではブチさんがケガでスタメンでは出られなくて、イングランドでプレーしてるからこそ試合に思い入れもあったはず。ブチさんのためにもっと自分はやらなきゃ!って試合に臨んだんです。交代してからブチさんが『今日ホントよかったよ〜!!』って声をかけてくれたのがすごく嬉しかったです」

──日本はクレバーさもさらに必要になってきますよね。

「必要ですね。個人的にクレバーさで目が行くのは(長谷川)唯さんです。攻撃のオプションもたくさんあるんですけど、それ以上に唯さんってすごく守備が上手で、体が大きくなくても(157cm)、賢さがある。実は昔から唯さんのプレーが好きで動画でプレー集とか見たりしていました(笑)」

──塩越選手から「これが出たら長谷川選手の影響だ」というプレーは?

「ロングシュート! 唯さん、GKを見て蹴り分けるんですよ。もちろんそこには技術が必要だけど今までの自分じゃない、あまりやったことはないプレーなので意識して見ています。コツがあるんでしょうね、あの身体の小ささであの飛距離って......オリンピックの時に聞けばよかった(笑)」

──待ちに待ったWEリーグが開幕しました。心境の変化はありましたか?

「サッカーでお金をいただくことで、責任感は強くなりました。周りの見る目が変わってきていることも感じます。一番身近に感じるのがSNSをフォローしてくれる人が増えたこと! オリンピック前はインスタが7000人くらいだったのが今3万人になっていて、オリンピックってすごいですね」

──開幕戦は日テレ・東京ヴェルディベレーザとの注目のカードでした。

「開幕ということで、お客さんもたくさん入って、すごく楽しみでワクワクしていました。ベレーザからしたら、去年優勝したレッズに勝ちたいっていう気持ちかもしれないけど、自分のなかでベレーザってなかなか勝たせてもらえない相手なんですよね」

──決勝ゴールは塩越さんでした。相手が3枚でコースを消しに来ていたなかでの会心のゴールでしたね。

「ああいうターン(ゴールを背にしての反転)が結構得意なんです。右足のインサイドで前を向くのは好きなので、こぼれ球が来た時点で前を向けそうな感覚があった。シュート練習も去年より増やしていて、アップの時も調子がよかったので狙いどおりでした。今年は点に絡むプレーを増やしたいんです」

──あまりゴールを目標にするタイプに見えないのですが。

「確かにいつもは年間1ゴールとかですから。でも去年は3点とって、皇后杯でも決めて、代表でのゴールもできたので、自分のなかで点をとれるプレーヤーになりたいって思い始めたんです。レッズってボールを回してる時間は長いけど、誰かが仕掛けなきゃ局面の打開はできない。そのプレーが自分にはできるなぁって思って。シュートのパワーもなくはない。身体もそこそこ大きいし(166cm)、周りを生かしながら生かされたい。ここ最近、点をとる機会が増えて、自分のなかで『ひょっとして自分も点をとれる選手なんじゃないか?』って自信がついてきたのかもしれません」

──第2節はノジマステラ神奈川相模原との対戦で2—0での勝利。ホームゲームでしたが、スタジアムの雰囲気はいかがでしたか?

「開幕戦で貴重な勝ち点3をとれたので、第2節がとても大事だなと思って試合に臨みました。ホーム開幕戦ということもあり、たくさんの方が見に来てくれたなかでしっかり勝ちきれたことはよかったです。自分たちが試合のペースをにぎりながら、自分たちらしいサッカーができたことはプラスに捉えて、修正すべきところはしっかり修正して次節に臨みたいです」

──WEリーグと言えば、リーグの理念にある「多様性社会の実現に向けた活動」を推進するWE ACTION DAYが設定されてますよね。今後こういうことをしてみたいというイメージはありますか?

「ひとりでも多くの子供たちに女子サッカーに興味を持ってもらうことが大事だと思います。プロになったからこそ、チームで動くのもそうですけど、今までお世話になったチームに自分が個人的に何かできたらなって思っています。自分は女子チームに入っていたので、そのチームの選手にとって私の存在は憧れであるとは思うんですけど、一番身近な存在でもある。そういう自分が所属したチームに顔を出して女子サッカーのよさを伝えてみるのもいいのかなって思います。

 自分はサッカーを楽しむことを大事にしているので、そういった姿を見て、周りの人たちにも楽しんでもらいたい。浦和はみんな楽しそうにサッカーしているなっていうのを感じてもらって、また見に来たいなって思ってもらえると嬉しいです」


塩越柚歩
しおこし・ゆずほ/1997年11月1日生まれ。埼玉県川越市出身。川越高階イレブンス/川越女子ジュニアSC→浦和レッズレディースジュニアユース→浦和レッズレディースユース→浦和レッズレディースを経て、現在、三菱重工浦和レッズレディースのMFとして活躍中。なでしこリーグ2020ベストイレブンに選出。日本代表として、FIFA U-20女子ワールドカップ(2016年)、東京2020オリンピック(2021年)に出場した。Twitter→@yuzuho_19 Instagram→@yuzuho_shiokoshi19


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