【津川哲夫の私的F1メカ】排熱機能だけではない、今どきのF1ブレーキダクト事情

9月27日(水)19時44分 AUTOSPORT web

 シンガポールGPの市街地コースはほとんどが直角コーナーで成り立っていて、それを直線でつなぐようなレイアウト。と言っても、カナダ的なストップ&ゴーとは違ってハードブレーキングが必要なコーナーは3カ所ほどしかない。この独特の市街地コースで重要になるのが、冷却系だ。


 もともと酷暑のシンガポールの気候に加え、コースはストレートが短く冷却時間が少ない。そこにシリーズ最多となる23のコーナーがあり、左右の直角コーナー連続的に続く、となればハードブレーキングは少なくとも、ブレーキをしながらコーナーを旋回する時間が多く、ますます冷却が難しい・・・と、シンガポールGPはブレーキにもっとも厳しいグランプリのひとつなのだ。


 カーボンディスク&パッドには効率の良い仕事をする温度レンジと言うものがある。冷えた状態ならば強力に挟んでも摩擦のミューは上がらず、かなりの高温まで持ちこたえられるが、それでも常時700℃を超えるような使用条件では酸化が起こり、摩耗が早まってしまう。


 そのブレーキ温度を下げるために登場するのがブレーキダクトだ。マシンの4つのアップライトに装着され、前方、またはタイヤ周りの内側から空気流を引き込み、ブレーキディスク、ブレーキキャリパー、パッド等を冷却してホイールの外側へ排出して放熱を行う。


 ひと昔前はこれこそがブレーキダクトの使命だったのだが、現在ではここにアクスル・ベアリングの冷却、アップライトに装着されたセンサーなどの電気部品の冷却機能が加わった。


そこで巨大なホイールドラム(写真でアップライトの上に置いてある巨大なドラムで、これでアップライトを包み込む用に装着する)を使ってホイールそのものの温度管理をブレーキの冷却排熱を使って行い、そしてさらにタイヤの空気温度と内圧の管理にまでつなげているというから、その役割の大きさがうかがい知れる。

ザウバーC36のブレーキの上に置かれたブレーキドラム。排熱と温度調整を兼ねた小さな穴がいくつも見える


 写真はザウバーのC36のブレーキまわりを撮影したもの。ブレーキディスクのベンチレーションホールから外周に向かって吐き出される冷却排熱は、ドラムに空いている窓からホイール内側に向かって放出される。排熱されら空気流はホイールに当てられ、タイヤの内圧温度を調整するのだ。


 このブレーキドラム周辺には他にも多くのエアロガジェットが組み込まれており、ブレーキダクトがダウンフォースを造るトリガーとなって、ドラッグの軽減にもつながっている。現代のブレーキダクトは、なかなか侮れないパーツと言うわけだ。


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