ERC:第7戦は弱冠20歳の若手が制す。最終戦を前にシリーズチャンピオンも確定

2018年9月28日(金)15時44分 AUTOSPORT web

 欧州選手権でありWRC世界ラリー選手権への登竜門でもあるERCヨーロッパ・ラリー選手権の第7戦PZMラリー・ポーランドが9月21〜23日に開催され、ERCジュニアU28登録の20歳、ニコライ・グリアシン(シュコダ・ファビアR5)が高速グラベル戦を制してキャリア2勝目をマーク。一方、選手権リーダーとして参戦した“ロシアン・ロケット”ことアレクセイ・ルキヤナク(フォード・フィエスタR5)はレグ1でクラッシュしたものの、ランキング2位のブルーノ・マガラエス(シュコダ・ファビアR5)が不出走となったため、イベント終了を待たずにドライバーズチャンピオンを手にした。


 今年で75回目の開催を迎えたラリー・ポーランドは夕闇迫る金曜のスーパースペシャルステージ、WRCでも使用されたミコワイキ・アリーナで開幕。今季ここまで3勝、2位表彰台1回とシーズンをけん引してきたルキヤナクが、落ち着き払ったマシンコントロールでまずはトップタイムを刻み、ラリーリーダーの座について土曜からの本格ステージに挑むこととなった。


 しかし、明けた土曜オープニングのSS2で早速首位が入れ替わり、ベストタイムを叩き出したのはERCジュニアU28のトップランナー、グリアシン。続く高速ナローステージのSS3でも首位タイムとなり、20歳の新鋭が操るファビアR5は、その後SS7まで連続ベストという驚異的な走りを披露する。


 一方、ライバルのポルトガル人が参戦を見合わせ、イベント前に戴冠が決まった37歳のルキヤナクは「それでもラリーは全開で行く」と決意を語ってSS3に挑んだものの、道幅の狭い超高速グラベルで攻めすぎたせいか、わずかにオーバーステアが発生。


 そのままバンプ越えのジャンプスポットに姿勢を乱したまま突入し、着地でライン取りがワイドになると速度を落とせぬまま右リヤを立木にヒット。レグ2の再出走も絶望的となるダメージを負い、そのままリタイアとなってしまった。


 これで初日首位はスポーツ・レーシング・テクノロジーのファビアR5を駆るグリアシンとなり、わずか3.1秒差の2番手にはSS5でグリアシンと同タイムベスト、さらにレグ1最後の2ステージでベストタイムを奪い返したヤリ・フッツネン(ヒュンダイi20 R5/BRCレーシング)がつけ、昨季はジュニアU27のタイトルを争った経験を生かし、今季はプレテストに未参加ながらも驚くべきスピードを披露してみせた。


「最後の2ステージは難しかったし、ERCジュニアU28のタイトル争いに集中していたこともあって、そこまでプッシュしなかった」と、サービスで振り返ったグリアシン。


「おそらくペースは現状でも充分だと思うが、まだ分からないね。フッツネンはプッシュしてくると思うけど、僕たちは反応しないつもりだ。いいポジションでラリーを終えて最終戦に向かうのが最大のタスクだからね」

ヒュンダイ・モータースポーツのテスト部隊として送り込まれたヤリ・フッツネンのi20 R5
イギリス出身のクリス・イングラムはレグ1から好調な滑り出しで3番手を確保
タイトル獲得の1戦でも”らしさ”を見せ、SS3で早々に戦列を去ったアレクセイ・ルキヤナク
慎重なコメントとは裏腹に、ニコライ・グリアシンは全15SS中8ステージで最速タイムを刻んで見せた


 続く11秒離されての3番手には、先のWRCトルコ戦にもWRC2で参戦したクリス・イングラム(シュコダ・ファビアR5)が続き、昨季のU27争いのチームメイトを追走。その背後にシュコダ・オート・ドイチェランドの支援を受けるファビアン・クルム(シュコダ・ファビアR5)が1.7秒差で続くオーダーとなった。


 迎えたレグ2は全6ステージ、97.90kmの勝負となる中、前日の予測どおりグリアシンとフッツネンが激しいタイムバトルを展開。


 とくに午後のループ3SSではフッツネンが連続ベストを奪うも、SS14でレイトチェックインとなり10秒加算のペナルティ。挽回を期した最終SS15ではリヤバンパーとスポイラーを失い、左リヤがパンクするほどハードなアタックを見せるも、8.3秒届かず。


 グリアシンがU28エントリーながら総合優勝を決め、総合登録のフッツネンが2位。同じく3位に入ったイングラムは、ジュニア登録外のオーバーオールで初となる表彰台を獲得した。


「クラッシュ後にチャンピオン獲得の感想を語るのはちょっと奇妙な感じもするけど、僕自身とチーム、そしてスポンサーにとって本当に良い結果になった。これはものすごく大きなステップを意味するよ」とラリー後に語った新王者のルキヤナク。


「昨季は大怪我でシーズンを棒に振ったし、ときにはオーバードライブでコントロールを失うこともある。でも、充分な練習期間もないなかで良いペース、良いフィーリング、良い雰囲気を維持し、こうして良い結果でシーズンを終えることができた」


「もちろん、予算の関係でここに来られなかったブルーノ(マガラエス)には申し訳ない気分だけれど、競争は本当に激しかった。僕らにとって本当にタフなシーズンだったけど、今はパーティを心から楽しみたい気分だ」


 続くERCの2018年シーズン最終戦は、10月12〜14日開催の東欧ラトビア、ラリー・リエパヤが舞台。当初は雪と氷のウインターラリーとして開催されてきたが、2016年から開催時期を秋に変更。高速グラベルステージで今季最後の勝負が繰り広げられる。

ドイツのADACからも支援を受けるファビアン・クルムは総合4位でフィニッシュ
SS14のミスを挽回すべく、最終SSでハードにアタックしたフッツネンだが、そのペナルティ差内の8.3秒及ばず
ERCジュニアU28争いも優位にするキャリア通算2勝目を飾ったニコライ・グリアシン
2017年はテストでの大クラッシュで大怪我を負い、キャリア継続が危ぶまれながらも復活の初戴冠となった


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