熾烈な残留争いに挑む3クラブのキーマンたち【J1リーグ2023】

2023年9月29日(金)12時0分 FOOTBALL TRIBE

山下諒也(左)マテウス・サヴィオ(中)キム・ミンテ(右)写真:Getty Images

残り試合数も1桁となり、ますます熱を帯びる2023明治安田生命J1リーグの順位争い。優勝争いでは首位ヴィッセル神戸(勝ち点55)を2位横浜F・マリノス(勝ち点54)、3位浦和レッズ(勝ち点49)、4位名古屋グランパス(勝ち点47)が僅差で追う展開で勝敗の行方はまだまだ分からない。


一方、残留争いに目を向けると、最下位湘南ベルマーレと勝ち点6差以内にはわずかに2チーム(柏レイソル、横浜FC)。現時点では、この3チームからJ2降格が出る可能性が高い。来シーズンより各リーグのクラブ数が変わることに伴い、今季J2へ降格するのは1チームのみ。そんなレギュレーションなだけに、ここから先は下位3チームを中心に文字通りプライドと生き残りをかけた戦いになることだろう。


ここでは、第28節終了時点で危険な順位にいる3チームの展望について、夏の補強や今後のキーマンも含めて見ていこう。




柏レイソル MFマテウス・サヴィオ 写真:Getty Images

柏レイソル(第28節終了時点16位)


キーマン:MFマテウス・サヴィオ


昨2022シーズンは後半に失速したものの7位と1桁順位でシーズンを終えた柏レイソル。しかし、今季は開幕から勝ち星を挙げられない期間が続き、ようやく初勝利を挙げたのは4月9日の第7節だった(対鹿島アントラーズ1-0)。その後もなかなか勝利を得られず、5月には長くチームを率いてきたネルシーニョ監督を解任。井原正巳コーチが監督へと昇格しここまでを戦ってきた。


今夏の移籍では、過去に清水エスパルスや鹿島アントラーズで守備の中核を担ったDF犬飼智也を期限付きで獲得。ゴール前での身体を張ったブロックなど、早くもベテランらしく頼もしい働きを見せている。複数得点がなかなか奪えず打ち合いでは負けてきた今季の柏にとって、犬飼の加入により守備に1本確固たる軸ができたことは大きい。しかし、残留に向けて他クラブも意気を揚げて白星を掴みに来る中、同じように勝利を求めていくにはやはり攻撃面の改善は不可欠。


それを思えば、夏にMF山田雄士が期限付きから復帰したものの、即戦力となる攻撃的な選手を獲得しなかったことには疑問が残る。とはいえ、U-23日本代表のFW細谷真大や冬に柏へ加わった新戦力のFWフロートなど実力者が揃っていることから、彼らが正常に機能するのであれば問題ないことも事実。そして、そんな攻撃陣の活性化のカギを握るのがMFマテウス・サヴィオだ。


その高い技術と豊富なアイデアで柏の攻撃を牽引してきたが、ここまでは残念ながら迫力ある攻撃場面を作るには至らなかった。今夏の補強で守備の安定が図れたからこそ、改めて90分間の献身性と豊富な運動量を誇るサヴィオを軸に、より前線のタレントが活きる攻撃を作れるかがJ1残留に繋がることは間違いない。残る6つの対戦カードの中には、浦和レッズや名古屋グランパスといった堅守を誇るチームとの試合もある。現在16位の柏。最下位の湘南ベルマーレとは勝ち点差5で安全地帯にいるように見えるが、攻撃を組み上げきれずに勝ち点を取りこぼすようであれば、下位に飲まれる可能性は低くない。


横浜FC FW山下諒也 写真:Getty Images

横浜FC(第28節終了時点17位)


キーマン:FW山下諒也


現在は残留圏内ぎりぎり17位の横浜FC。J1残留を争うライバルの柏レイソルに敗れ(第27節1-2)、同じく昇格組であるアルビレックス新潟にも敗れたことで(第28節1-3)、直近は下位チームを相手に手痛い連敗となってしまった。


この夏の移籍市場では、昨年のJ2得点王であり今季もチームトップスコアラーとして最前線で存在感を発揮していたFW小川航基が欧州へ期限付きで移籍。その後釜と呼べる補強はできていない。下位に沈むチームが軒並み緊急補強で即戦力を獲得していることから見ても、やはり厳しい状況と言わざるを得ないだろう。


そんなチームにあって、残り6試合での活躍が期待されるのがFW山下諒也だ。ここまで28試合に出場している俊足アタッカーはゴール数こそ2つとやや寂しいが、攻撃時、特にカウンターでの存在感は抜群。最大の持ち味である超高速ドリブルでボールを運びながら相手を置き去りにする。特徴が最も際立ったのは第14節の川崎フロンターレ戦。1点リードで迎えた後半開始早々の場面。同点に追いつきたい川崎を出し抜き、圧倒的なスピードで敵陣を突き進んで追加点をマーク。フィールド中央付近から一気にゴールへ向かう迫力を見せた(2-1)。


ここから先、横浜FCの対戦カードは現状の順位で言えばボトムハーフのチームが多い。警戒されても止めることの困難な山下のスピードがあれば、わずかなチャンスを活かして勝ち点を拾っていくことは十分に可能だろう。だからこそ間違いなく残留に向けて欠かせないキーマンと言えよう。




湘南ベルマーレ DFキム・ミンテ 写真:Getty Images

湘南ベルマーレ(第28節終了時点18位)


キーマン:DFキム・ミンテ


現在最下位と苦しむ湘南ベルマーレ。夏にはチームの稼ぎ頭であり日本代表のFW町野修斗がドイツのホルシュタイン・キールへ移籍。残留争いのライバルである横浜FC同様、貴重な戦力を失っていた。しかし、大きな違いがひとつある。湘南は補強による戦力ダウンを最小限に留めている点だ。


町野に代わり湘南の最前線に加わったのは、町野がギラヴァンツ北九州時代に2トップを形成した戦友でもあるFWディサロ燦シルヴァーノ。さらにJ3で得点王争いに加わっていたMF福田翔生も獲得した。いずれも下のカテゴリーからの加入だが、得点力の高さはこれまでの実績からも見て取れる。今季開幕戦ハットトリック男のFW大橋祐紀も健在なことから、攻撃力の不安は少ない。


一方、課題となっていた守備力についても今夏頼れる男を獲得している。鹿島アントラーズから期限付き移籍で加わった新戦力DFキム・ミンテは、加入後6試合に先発出場。鹿島で今季出番を得ていなかったのが嘘のように、DFラインの中央で高い存在感を放っている。残念ながらリーグワーストの失点数となっている湘南だが、Jリーグで豊富な経験を誇るキムの加入により改善が見込める。湘南らしい積極的な守備陣の形成と成熟にも一役買ってほしいものだ。


残り6戦、湘南は首位の神戸や名古屋といった上位勢との対戦や、互いにこのままの順位でシーズンが進めば死闘が予想される横浜FCとの裏天王山も控えている。現時点では最もJ2降格の可能性が高い湘南だが、戦力不足は感じられない。最終盤は苦しい試合も多くなるだろうが、J1残留が叶う17位横浜との勝ち点差は小さい。1戦ごとの結果がより重要になるだけに、新戦力を含めた戦い方にも注目が集まる。

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