半端ない大迫の守備力。質実剛健な神戸が横浜FM撃破【J1現地取材】

2023年9月30日(土)18時30分 FOOTBALL TRIBE

DF角田涼太朗(左)FW大迫勇也(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第29節の3試合が9月29日に行われ、首位のヴィッセル神戸が2位横浜F・マリノスに2-0で勝利した。


横浜FMの本拠地、日産スタジアムにて行われたシーズン終盤の首位攻防戦。ここでは神戸のDF酒井高徳の試合後コメントを紹介しながら、スコアが動いたこの試合の前半を主に振り返り。そのうえで神戸の勝因を解説する。




横浜F・マリノスvsヴィッセル神戸、先発メンバー

横浜FMvs神戸:試合展開


前半19分、酒井が敵陣右サイドからペナルティエリア内へクロスを送ると、このボールに味方FW大迫勇也が反応。同選手のヘディングパスを結実させようとした同クラブFW武藤嘉紀が、シュート体勢に移った。


シュートを放とうとした武藤と、横浜FMのDFエドゥアルドの足がペナルティエリア内で接触したことを受け、ビデオアシスタントレフェリーが西村雄一主審にオンフィールドレビュー(※)を進言。レビューの結果、エドゥアルドのキッキングの反則により、神戸にPKが与えられた。このチャンスをキッカーの大迫が物にする。


同43分にはDF初瀬亮のコーナーキックに武藤がヘディングで合わせ、神戸が追加点をゲット。前半で2点差をつけた同クラブが後半も落ち着いた試合運びを見せ、2位横浜FMとの勝ち点差を4に広げている。


(※)VARの提案をもとに、主審が自らリプレイ映像を見て最終の判定を下すこと。




ヴィッセル神戸 FW大迫勇也 写真:Getty Images

神戸のハイプレスが威力を発揮


[4-4-2]の守備隊形を軸に、横浜FMに対抗した神戸。基本布陣[4-2-1-3]の横浜FMがGK一森純や最終ラインからパスを回そうとするやいなや、大迫とMF佐々木大樹の2トップがホームチームの2センターバック(エドゥアルドとDF角田涼太朗)から2ボランチ(渡辺皓太と山根陸の両MF)へのパスコースを塞ぐ。かねてより神戸が得意としているこのハイプレスが、今節も威力を発揮した。


横浜FMがゴールキックからパスを繋ごうとした前半4分、大迫が右サイド(相手から見て左サイド)へのパスコースを塞ぐような走り方で、横浜FMのGK一森に寄せる。左サイドにパスを出せなくなった一森は味方MF山根への縦パスを選択するも、これを佐々木が狙っていた。


山根が佐々木にボールを奪われる前にかろうじて右サイド(神戸から見て左サイド)へパスを散らしたものの、相手のパス回しを片方のサイドへ追いやるという首位チームの守備の狙いが、顕著に表れた場面と言える。横浜FMが自陣後方でパスを回そうとした前半9分と17分にも、大迫が左右どちらかのパスコースを塞ぐような走り方で一森に寄せ、苦し紛れのロングパスを誘っている。安定感溢れるポストプレーや空中戦も然ることながら、欧州や日本代表での豊富なプレー経験に裏打ちされた大迫の、巧みな守備も光っていた。


試合後会見で神戸の吉田孝行監督が発した「(大迫は)半端ないでしょ」のひと言には、同選手の献身的かつインテリジェンスに溢れた守備を称える意味も含まれていたに違いない。


ヴィッセル神戸 DF酒井高徳 写真:Getty Images

「ひとりではなく、チームで守った」


試合後の囲み取材に応じた酒井高徳も、自軍の守備への手応えを口に。ハイプレスを掻い潜られる場面もあったが、チーム全体の帰陣が素早く、試合全体を通じて堅固な守備ブロックが維持された。これも神戸の勝因のひとつと言えるだろう。


「ひとりで守ったのではなく、チームで守ったと思っています。F・マリノスさんを相手にハイラインを立てる(敷く)のは難しいことではありますけど、自分たちは今回の試合に限らず試行錯誤して、ラインの上げ下げのタイミング、人に対して食いついて行く時とそうでない時、剥がされた時など、色々修正を入れてやっています。それらの良さが今日の試合ではすごく出たと思います」


「前半から高い位置にラインを取って、相手の前線の選手をオフサイドにすることが、より相手選手にはストレスになると思っていました。そうすることで(相手の)プレーを限定できる場面も多いので、そうした試合展開にしていこうというのは(チーム内で)話していました。前半に関してはそれが上手くできていて、ボールを取りに行くことができていました」




ヴィッセル神戸 GK前川黛也 写真:Getty Images

シンプル・イズ・ベストの神戸


自陣で漫然とパスを回さず、GK前川黛也や最終ラインからのロングパスを徹底したことも、ハイプレスからのボール奪取を試みた横浜FMを苦しめた要因に。大迫と武藤は大方の期待通り、安定感溢れるポストプレーで神戸のロングカウンターを牽引した。


途中出場のFWジェアン・パトリッキとMF新井瑞希も、推進力のあるドリブルで神戸のロングカウンターのアクセントに。体力の消耗によりハイプレスをかけづらく、撤退守備が主になっていた試合終盤の神戸の頼みの綱として、十分以上の働きを見せた。


敵陣では相手の守備組織を細かいパスワークで破ることにこだわらず、サイドからのシンプルなクロスを徹底。高い確率で空中戦に競り勝てる大迫や武藤を擁する神戸にはこの攻撃がうってつけであり、横浜FMには脅威となった。


神戸に与えられたPKも、酒井から大迫へのクロスによってもたらされたもの。神戸に揃う非凡な個は、平凡な戦術によって活かされた。


シンプル・イズ・ベスト、質実剛健という言葉がよく似合う神戸が、クラブ史上初のJ1リーグ制覇にまた一歩近づいている。

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