最も入手困難なヴェネツィアのユニフォーム!人気の秘密とは?

2022年10月4日(火)16時0分 FOOTBALL TRIBE

ヴェネツィア2022/23ユニフォーム イラスト:Molly

近年スポーツブランドではない高級路線のアパレルブランドが、サッカー業界との距離をじわじわと縮めてきている。PSG(パリ・サンジェルマン)のワードローブデザインを『Dior(ディオール)』が担当したり、アーセナルのユニフォームを『ステラ・マッカートニー』が製造するなどだ。


それに伴い、サポーターのユニフォームに対する意識もまた進化してきているようだ。例えば、レプリカユニフォームを着用して試合観戦するというのが現代のスタイルだが、今や単純にお気に入りの選手やクラブに対する意思表示としての役割だけではない。特にプレミアリーグの本拠地イングランドを含めたヨーロッパ地域では「ファッション」と捉えられる方向に、役割が変化してきている。


サッカー好きの方なら1度は目にしたことがあるであろうが、極めて入手困難なユニフォームはご存知だろうか。1999年に元日本代表MF名波浩も所属していたヴェネツィアFC(当時ACヴェネツィア)のものだ。2008/09シーズンに経営困難のため破産をした同クラブは、翌シーズンセリエDから再スタートし、昨2021/22シーズンはセリエAまで復帰を果たした(現在セリエB)。


ヴェネツィアは決して、抜きん出て目立つクラブではない。しかしユニフォームについては、恐らく世界でもトップに入る人気を誇っている。既に様々なメディアで「入手出来ないユニフォーム」と騒がれており、サポーターではなくとも絶対に購入したい!と、古着までもを探し回っている熱いファンも多い。では、そのユニフォームは一体どんなものなのか?そして、その秘密は一体何なのか?少し探ってみよう。




元ヴェネツィア MF名波浩(1999)写真:Getty Images

秘密1:ゴールドを採用した色の構成


2022/23シーズンのヴェネツィアのユニフォームデザインはというと、全体的にシンプルなよくあるストライプ模様に、肩と袖に沿ったラインデザインなど至って普通の仕様。しかし、人気の秘密第1として、色の構成が挙げられる。クラブのメインカラー「オレンジ」「黒」「グリーン」の3色構成に加え「ゴールド」が使用されていることがポイントとなっている。


単にオレンジとグリーン、黒だけでは、カボチャ色がどうも強調され、恐らくこんなにも人気に火がつかなったかもしれない(ハロウィンには良いかもしれないが)。ゴールドが入ることによって、一気に全体が高級感を帯びて大人っぽさが強調されている。もしもゴールドが赤だったら?白だったら?さて、どうだろうか。







秘密2:オレンジと緑の巧みな色の使い方


ヴェネツィアのユニフォーム人気の秘密第2は、色の使い方だ。扱いが難しいオレンジとグリーンについてはなるべく少量をポイントとして活用し、またパターンデザインにする場合は、それら2色の色味を抑えられるような工夫が施されている。わぁこれは憎い使い方だな、と感じたのが、サードユニフォームのデザインだ。


大胆な全面ゴールド地に襟と袖口、ロゴのみが黒の仕様なのだが、どこにオレンジと緑が使われているのかと思えば、なんとボタン部分の見えない内側スペースに使用されているのだ。やはりオレンジと緑については、なるべく少量を意識しているのが伝わってくる。


ヴェネツィア2022/23ユニフォーム イラスト:Molly

秘密3:計算し尽くされた書体とサイズ感


ヴェネツィアのユニフォーム人気の秘密第3は、クラブ名「VENEZIA(ヴェネツィア)」の書体だ。フォントデザインと呼ばれる文字の形状というのは、商品の売れ筋や物の雰囲気を360度コロッと変えてしまうほど、非常に影響のある部分。この技を存分に活かし大成功をさせているのが、ヴェネツィアのユニフォームだと筆者は確信している。


特にホームユニフォームが謙虚にそれを物語っていて、黒地のダークな雰囲気にゴールドの華奢な書体で「VENEZIA」と上品。文字サイズも控えめに、周りの黒の余白を残す。すると文字は小さめなのに、黒の中の小さなゴールド文字から、ヴェネツィアの強さが訴えかけられて来るよう。これがもしゴシック体と呼ばれる、ややポップで太めの文字だったら?うーん、と考えてしまうだろう。







秘密4:ファッション雑誌広告仕様の演出


ヴェネツィアのユニフォーム人気の秘密第4は、最初から他のクラブとは違う路線でユニフォームがリリースされていることだ。通常サッカーの新ユニフォームを発表する際は、そのクラブのプレーヤー数名が着用し、強さを強調するポーズや、イメージに沿った構成で表現される。もちろんヴェネツィアも同様ながら、根本的にサッカーというスポーツ目線ではユニフォームを紹介していないところが、大きな違いを生み出している。


モデルは選手ではなくファッションモデルを起用。ユニフォームを単純に着用するだけではなく、ファッションとしてアレンジさせた状態の写真をリリースしている。例えば、半袖ホームユニフォームに白のブラウスを重ね着したスタイルや、ショートパンツとゴールドの大ぶりイヤリングとの組み合わせなど、一見すると有名ファッション誌『Vogue(ヴォーグ)』などの、見開き数百万円の広告ページのような仕上がりだ。







サッカークラブよりもファッションブランド化?


こうなるとヴェネツィアは、サッカークラブよりもファッションブランド化していくのではないか?と考えていた矢先、ついに今年(2022年)9月21日に、クラブはイタリアのリアルト橋の側にユニフォームを販売する旗艦店をオープンした。完全なファッションブランドへの道へと順調に進んでいる。オープン初日はイベントも開催され、多くの人々が念願の入手困難なユニフォームを手に取ることが出来たようだ。


なお、ヴェネツィアのユニフォームの製造元は『Kappa』だが、デザインはドイツのグラフィックデザイン会社『ビューロー・ボルシェ(Bureau Borsche)』が担当。高級ファッションブランド『バレンシアガ』などを手掛けるデザイン会社である。


サッカーのユニフォームが「ファッション」として、その役割が今刻々と移り変わろうとしている。非常に楽しみだ!

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