WEC第2戦富士で見えたサクセス・ハンディキャップの影響。「こういった状況を想定してクルマが作られていない」

2019年10月6日(日)23時8分 AUTOSPORT web

 10月4〜6日に富士スピードウェイで行われた2019/20年のWEC世界耐久選手権第2戦富士。このラウンドからLMP1クラスで新たに発動した性能調整“サクセス・ハンディキャップ”は、ワン・ツーフィニッシュを飾った2台のトヨタTS050ハイブリッドに大きな影響を与えていた。


 WECのLMP1クラスではトヨタが投じているハイブリッド車と、レベリオンなどが投じているノンハイブリット車のパフォーマンス差を埋めるべく、ふたつの性能調整が導入されている。


 ひとつは2018/19年シーズンから導入されているEoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)。ハイブリッド車であるトヨタTS050ハイブリッドに対し、車両重量と燃料使用の面で制限を課すものだ。


 そしてもうひとつが2019/20年から導入されたサクセス・ハンディキャップ。これは獲得ポイントの差に応じてランキング最下位を除く全車にハンデを与える仕組みで、この第2戦富士から効力を発揮している。


 サクセス・ハンディキャップは1周あたりのラップペースに差をつけることが目的とされており、コース1kmあたり+0.008秒とする係数とサーキットの全長、そしてクラス最下位の車両とのポイント差を掛けることによって、ラップあたりのハンデ量が決められている。


 実際の調整は車両最低重量や最大搭載燃料量、最大燃料流量、給油リストリクター径で行われ、ハイブリッド車の場合はさらに1ラップあたりの最大エネルギー使用量、ハイブリッドエネルギーの最大エネルギー放出量なども調整される。


 この週末、7号車トヨタは、開幕戦でクラス最下位だった6号車ジネッタG60-LT-P1・AERに対し、富士スピードウェイ1周あたり1.4秒、僚友8号車とは1周あたり0.4秒の差がつくようハンデが課された状態でレースに臨んだ。


 しかし、7号車トヨタをドライブする小林可夢偉は、レースウイーク初日の金曜日から「(8号車トヨタに対し)1周あたりコンマ6か8くらい」の差があるとコメント。想定より大きなタイム差が生まれているとの感触を明かしていた。


 ハンデの影響は決勝レースにも表れており、7号車トヨタはスタート直後に1号車レベリオンR13・ギブソンに交わされ3番手に後退。その後はホームストレートの加速で引き離されるような場面や、テクニカルセクターで抜き返してもストレートで反撃されるような場面が見られた。


 最終的にはバックマーカーが絡んだタイミングで1号車レベリオンを攻略して、7号車トヨタは総合2位でフィニッシュしたが、優勝した8号車トヨタとは33.955秒の差がついている。


 可夢偉は「向こう(1号車レベリオン)に『いけるぞ』という姿勢を示しながらバックマーカーがきたところで(オーバーテイクを)決めようと思っていた」とレース序盤の攻防をふり返る。


「抜いてしまえば大丈夫なんですが、なかなか単独走行にならず自分のペースを守れなくて……」


「(実際に戦うと)正直に言って厳しい。僕たちが持っているパワーではだいぶ頑張ったほうだと思う。(8号車トヨタに対し)最低でもコンマ4秒差という想定で230周以上を走るとすると、単純計算で90秒以上のギャップになります」


「それを33秒台に抑えることができたことは、僕たちもいい仕事をしているということだと思う。ただ残念ながら、それが結果として出てこないんです。できる限りはやりましたが、ハンデが大きすぎましたね」


 優勝した8号車トヨタの中嶋一貴も「セブ(セバスチャン・ブエミ)やブレンドン(ハートレー)は周回遅れの相手(LMP1マシン)を処理するのに6〜7周かかるような場面もあったようです」と、少なからずサクセス・ハンディキャップの影響があったことを明かしている。


 サクセス・ハンディキャップが導入されるのは今シーズンが初めてで、特にトヨタTS050ハイブリッドは、ハイブリッドシステムとエンジンなどが高次元で協調することで高いパフォーマンスを発揮している面もあり、「そもそも、こういった状況を想定してクルマが作られていない」(一貴)ことも、ハンデの影響を強くしているようだ。


 サクセス・ハンディキャップはル・マン24時間レースを除く全戦で適用され、ランキング首位と最下位の差が40ポイントを超えるまで数値が重くなる。クラス唯一のハイブリット車ワークスチームとして戦うトヨタは、この新たな足かせとも向き合いながらシーズンを戦っていくことになる。

7号車トヨタTS050ハイブリッド
 


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