賭けに出た中上貴晶「やってやるという気持ちがあった」。フル参戦最後の母国GPでポイント獲得/第16戦日本GP
2024年10月6日(日)19時30分 AUTOSPORT web
10月6日、2024年MotoGP第16戦日本GP MotoGPクラスの決勝レースが栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた。フル参戦最後の母国GPとなる中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は13位でチェッカーを受け、ポイントを獲得した。
初日に比較的いい流れでスタートを切った中上は、予選で21番手に沈むもフル参戦として母国GP最後となるスプリントに意気込みを見せていた。ところが、早々の5周目にチームメイトのヨハン・ザルコ(カストロール・ホンダLCR)と接触。転倒と悔しさが残る結果となり、中上は「心が痛いです」と囲み取材でも口にしていた。
また「やっぱり自分の中でやりきったというレースにしたいです」ともコメントし、決勝に向けてはその悔しさも晴らすべく臨んだ。そんな中上は、決勝レースで唯一リヤにソフトを選択した。中上以外のライダーはフロントにハード、リヤにミディアムだったが、一か八かの勝負に出た。
リヤにソフトを選択したのには、少し賭けに出る思いもあったという中上は、「うまくマネージメントすればソフトでも問題がなかったので、『だったら勝負しようよ』というのが自分の中でありました。でもチームも自分の気持ちをすぐに受け止めてくれて『タカが言うならソフトで行こう』と言ってくれました」とコメント。
さらに「元々のグリップがないなかで、みんなと同じタイヤを選んでもギャップが変わらないので何か少しでも……と思いました。もちろんグリッドが後方なので守るものもないですし、ダメならダメでいい。でも自分の中でなにかやってやりたいという気持ちがありました」と続けた。
大きなリスクがなかったとはいえ、大勝負に出た中上は小雨が降るなかでグリッドへとついた。オープニングラップではジョアン・ミル(レプソル・ホンダ・チーム)とアレックス・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)のクラッシュをうまくすり抜け、17番手に浮上する。
難しいコンディションの影響もあり、転倒者が相次ぐなか、中上は集団の中で着実に順位を上げて走り進めていた。タイヤをマネジメントしながら、安定したペースで走る中上は残り9周で、ついに前を走るラウル・フェルナンデス(トラックハウス・レーシング)をパス。13番手にポジションを上げると、前を走るファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)とのギャップをじわじわと詰めていく。
わずか0.704秒届かなかったものの、最後はチェッカーに向けてマシンを運ぶ中上。彼にとってフル参戦最後となる母国GPは13位でチェッカーを受け、ポイント獲得に繋がる走りを披露した。最後には大きな日の丸国旗を掲げて走行し、ピット戻った際にはチーム員に囲まれながら俯く様子も見せた。その後はヘルメットを被ったまま自身の応援席にも赴き、ファンに感謝を送った。そんな中上はレースを次のように振り返った。
「いいレースでした。リスクを負ってソフトで走って、最後まで保たせられましたし、自分のなかで工夫しながら最後もタイムが落ちることもなく、プッシュできました。母国で違うアイデアを出してくれて、今回うまくいったので、タイヤチョイスに関しては間違いではなかったと思います」
また、決勝レース中は新たな気づきもあったようで、ミサノテスト以降に使用している新しいエアロについても言及した。
「特にレース序盤のフルタンク時にバイクが止まりづらい感覚がありましたが、残り10周くらいから燃料が軽くなり初日に近い感覚に戻りました。奥までよりブレーキを遅らせて、なおかつしっかりバイクを止めることができたので、落ち幅もなく盛り返せた要因のひとつでもあります」
「インドネシアGPもそうでしたが、レース後半に新しいエアロの違いが出ています。今までそこまでの違いはありませんでしたが、この2戦はレース後半にバイクのフィーリングが良くなることが続いています。バイクバランスが変わって空気抵抗の流れも変わってくるので、そのあたりはいいデータが取れたと思います」
スプリントでの悔しさも跳ね除け、厳しい状況下でもフル参戦最後の母国GPで見事ポイント獲得に繋げた。最後には「走れば走るほどバイクのパッケージを理解してきているので、残り4戦しっかり全力を尽くしたいです」と終盤戦に向けての意気込みも語った。
ホンダは未だ厳しい状況にあるが、少しずつマシンもいい方向へと向かっている様子。中上としては残り4戦とレース数も少なくなってきているが、日本GP以降の終盤戦でどのような走りを披露してくれるだろうか。残されたレースでしっかりと彼の走りを目に焼き付けたい。
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