ドラフト競合必至の金丸夢斗の将来像は? 過去20年で最高の完成度 目指すは江夏、工藤レベルか
2024年10月6日(日)15時30分 ココカラネクスト
金丸は即戦力の逸材。競合は必至だろう(C)産経新聞社
いよいよ10月24日に迫った今年のドラフト会議。ポジションを問わず、一番人気になる可能性が最も高いのが関西大のエース・金丸夢斗だ。その凄さを何よりも表しているのがここまで残してきた成績である。
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4年春のリーグ戦終了時点で通算20勝3敗、防御率0.88。近年では現在DeNAのエースとして活躍している東克樹が立命館大時代に同じリーグで通算19勝9敗、防御率0.93という成績を残したが、金丸が最終的にそれを上回る数字で大学生活を追える可能性は極めて高い。
関西学生野球は全国の大学リーグの中でも上位のレベルであり、そこでこれだけの成績を残せる投手はそうそういるものではない。もちろんアマチュア時代の成績がそのままプロでの成績に直結するわけではないが、この数字だけを見ても金丸が並の投手ではないことはよく分かるだろう。
では、そんな金丸はプロでどんな投手になっていくのだろうか。先述した東とは抜群の制球力という点で共通しているが、ストレートの球威については金丸の方が明らかに上回っており、投球スタイルもより本格派という印象を受ける。体格面やボールの角度などを考えても、東とは少し異なるタイプと考えるのが妥当だろう。
直近でプロ入りした左腕では武内夏暉(国学院大→2023年西武1位)がいきなり10勝をマークする大活躍を見せており、比較対象となりそうだが、武内が高い位置から投げ下ろすスタイルなのに対して、金丸はホームベースにより近い位置でリリースしており、ボールの質も少し違うように感じられる。ただ少なくとも大学4年時の武内よりも、現在の金丸の方があらゆる面で上回っている印象であり、それを考えてもコンディションさえ万全なら1年目から二桁勝利も十分に期待できるだろう。
なかなかピッタリ当てはまる選手は見当たらないが、特長やスタイル的に近いピッチャーとして挙げたいのが杉内俊哉(元ソフトバンク、巨人)だ。
まず共通しているのが上半身の力感の無さである。右足をゆっくりと上げて左足に体重を乗せ、そこから下半身主導でリードしていくが、杉内も金丸も腕を振る直前までほとんど力みのようなものが感じられないのだ。
侍ジャパンの井端弘和監督も金丸について「150キロを投げそうもないフォームから150キロのスピードボールを投げられるところが特長」と話しており、そのギャップが大きな武器となっていることは間違いない。
二人に共通している点でもう一つ挙げられるのが奪三振が多く、四死球が少ないという点だ。杉内は現役時代に通算2091回1/3を投げて2156個の三振を奪いながら、与四球はわずか614にとどまっている。金丸も4年春のリーグ戦までの数字を見ると、224回2/3を投げて294奪三振、与四球30という記録が残っている。左の本格派投手というと三振は奪うものの、コントロールは荒れているというタイプも多いが、そうではないことがよく分かるだろう。ただ杉内と比べてもストレートの勢いは金丸の方が上回っている印象で、プロでも杉内を超える成績を残す可能性も十分にありそうだ。
他にも多くの名投手がいるが、少なくとも過去20年の間にプロ入りしたサウスポーで金丸ほどの完成度を備えた投手はいない。そうなるとさらに過去までさかのぼる必要が出てくるが、最終的に目指すべき対象としては工藤公康(元西武など)、さらには江夏豊(元阪神など)といった往年の大投手になるのではないだろうか。まだプロ入りもしていない選手に対して期待が大きすぎるという声も聞こえてきそうだが、実際に金丸の投球を見れば、それも理解してもらえるはずだ。もっと言えば、金丸を獲得できた球団は来年のチーム成績が上がる可能性も極めて高く、それくらいのインパクトのある投手なのである。
果たして金丸に何球団が競合するのか、そしてどの球団が戦力アップを果たすのか、今年のドラフト会議の最大の注目ポイントと言えるだろう。
[文:西尾典文]
【著者プロフィール】
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。