モンゴル代表はかつての日本代表。格下と対戦するW杯2次予選の価値

10月12日(土)16時45分 Sportiva

 10月10日、埼玉スタジアム。カタールW杯アジア2次予選の試合前に、モンゴル代表のメンバー表の訂正があった。係の女性が新しい用紙を記者席で配り歩いていた。第3ゴールキーパー、「サイハンチュルーン・アマルバヤスガラ」が、「サイハンチュルーン・アマルバヤスガラン」になるという訂正だった。選手名の訂正は大事だが、気に掛ける人はほとんどいない。

「ポルシェに、トヨタの小型車がレースを挑むようなもので、勝てる見込みはなかった」

 試合後、モンゴル代表を率いるドイツ人指揮官ミヒャエル・ワイスは語った。しかし、日本との実力差はそれ以上。同じステージに上がっていることに違和感があるほどだった。

 この日、FIFAランキング183位のモンゴルは、日本に対してまったく太刀打ちできていない。そもそも体格的に劣っており、プロの体からはほど遠かった。たとえば、中島翔哉に対して2人がかりでマークするも、子ども扱いで置き去りにされた。技術的には、日本のJ1クラブユースの選手にも劣るレベルだろう。戦術的にも未成熟で、プレッシング、リトリートの線引きがはっきりせず、それぞれがばらばらに奮闘。エリア内で自由にシュートを打たれる場面が連続した。

 結果、モンゴルは6−0で大敗。シュートは1本も打てなかった。明らかなワンサイドゲームだ。では、この試合に価値はなかったのか?


W杯予選で日本に大敗したモンゴル代表

 試合後の記者会見で、モンゴルのワイス監督に質問が飛んだ。

——モンゴルではスパイクを売っている店がなく、代表選手も海外遠征でスパイクを購入しているとか?

 ワイス監督は英語で答えた。

「日本のような専門店がないだけで、スパイク自体は買えます。ただそれだけ、環境は違うという話ではあるでしょう。2年半、私は指導してきましたが(2017年1月に代表監督就任)、モンゴルはサッカーでは小さな国というより、小さなコミュニティーで。ベストの選手を選ぶと、30人で収まってしまう」

 モンゴルサッカーは、まだ黎明期にある。代表チームが使用するナショナルスタジアムも人工芝。それも状態はよくないと言われる。そもそも、W杯1次予選を勝ち抜いたのが初めてのこと。あらゆる面で遅れている現状がある。

「日本の攻撃は、まるで止められなかったです。思わず、拍手しそうになったほどでした」

 ワイス監督は言う。

「どうにか数的優位を作って守ろうとしましたが、無理でした。コンパクトなディフェンスをしようとしましたが、できなかった。前線はほとんど何もできませんでした。ただ、我々が持っているレベルの最大限を出せたと誇りに思います。20分過ぎまでは0点に抑えることもできました」

 特筆すべきは、モンゴル代表選手の闘争心だろう。前半だけで4失点を喫し、後半11分に5点目を奪われたものの、最後の最後まで集中を切らさなかった。何度となく、シュートをゴールライン近くでかきだした。勤勉かつ粘り強い戦いぶりだった。

「我々は、”どんな結果でもしっかり戦い抜く”とスタートしました。先制点を奪われてから、熟れたリンゴが木から落ちるように失点を続けましたが、後半はよくなって、可能性を見せられたと思います。もしかすると、日本のことをリスペクトしすぎたかもしれません。ハーフタイムに、”同じ人間なのだから、もっとアグレッシブにファイトすべきではないのか”と伝えました。力をつけることができているので、成長のプロセスをずっと続けたいです」

 ワイス監督は、戦いに及第点を与えた。

 かつて、日本も黎明期には列強国の胸を借りることがあった。1980年代まではサッカー弱小国のひとつだった日本だが、90年代になるとフランス、アルゼンチン、ブラジルに挑むようになり、大敗するたび、力をつけた。主力選手が経験を重ね、それを国内に伝え、改革が行なわれ、有力選手が出てくる——。そのサイクルのなかで強化されてきたのだ。

 次は、日本が胸を貸す番なのかもしれない。

 たしかに、日本がモンゴルと対戦し、得られるものはほとんどないだろう。ただ現実に、日本のみがグループで突出したW杯2次予選はこれからも続く。弱小国に力を見せつけることは、アジアにおける日本の立場を不動にし、尊敬される対象になることにもつながるはずだ。

「2年後にはセンセーショナルを起こせるようにしたい。ミドルレベルの相手との対戦も大事だが、日本のようなハイレベルのチームと対戦することで、力をつけられる。今日のような経験を選手は忘れないだろう。何年後か、モンゴルのサッカーを見せたい」(ワイス監督)

 来年3月、モンゴルは日本を本拠地に迎え撃つ。9月にミャンマーを1−0で下したように、独特のピッチ状況もあって、ひと泡を吹かせようと挑んでくるだろう。厳寒の気候も彼らの後ろ盾となる。

 日本はそこで横綱相撲を見せるだろう。四苦八苦する彼らに、サッカーをレッスンする。そうして歴史は巡るのだ。


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