最後まで信念を貫いた中日・山本昌 ブレなかった“引き際”への考え方

10月13日(火)7時0分 フルカウント

自身を「古いパソコン」と評していた大ベテラン

 レジェンドの名に恥じない幕引きだった。中日の50歳左腕・山本昌投手が今季限りでユニホームを脱いだ。

 来季も現役続行となれば、ジェイミー・モイヤーの持つ49歳180日のメジャー最年長勝利記録の更新がかかっていた。しかし、8月に左手人さし指を負傷。快挙達成に向け、復活への歩みを進めていた中での突然の決断は、世間に大きな驚きを与えた。

 谷繁、和田、小笠原らベテランの引退ラッシュもあったが、以前から抱いていた“引き際”への考え方にブレが生じたわけではない。昨年までも、現役続行か引退かの判断基準に置いていたのは、記録ではなく戦力として貢献できるか。それも「先発」という形に大きなこだわりを持っていた。

 山本昌はよく、自身を「古いパソコン」と評する。「電源を落とすと、起動するのに時間がかかるから」という理由からだ。その調整法は独特。シーズン中はもちろん、年末年始ですら1日も体を休めることはしない。継続して体を動かし続けることで、パソコンに例えるならば「スタンバイ」状態を保ってきた。

 だが、近年は球速や体力とは別の面から衰えを感じるようになった。これまで考えられなかった形での故障が増え、自身の感触よりも復帰に時間を要するようになった。走り続けることにより、ぎりぎりでコンディションを維持してきた大ベテランにとって、何度も待ったをかけられる不安やストレスは相当なものだったはずだ。

自分自身で現役続行を選べた中で下した引退の決断

 極めつきは今季初登板だった8月9日のヤクルト戦。投球動作の過程で指を痛めるという想定外の負傷で、「戦力」としての自身の価値に疑問を抱かざるをえなかっただろう。

 それでもこの先、恐らくは数十年、山本昌にしか挑戦できない記録への挑戦権を得ていた。通算219勝。引き際を球団ではなく、自分自身で決められるだけの実績も残してきた。最年長記録にこだわるなら、年に数度の先発と割り切っての現役続行や中継ぎ、ワンポイントで1勝の機会を伺うことも可能だった。

 しかし、信念を曲げることはなかった。10月7日、プロ野球史上初の50代での出場を成し遂げたラスト登板。首脳陣の配慮があったとはいえ、32年間の現役生活の締めくくりに踏んだ舞台もまた、こだわり続けた真っさらなマウンドだった。

 これまで数え切れないほどの記録を塗り替えてきた。周囲から大きな期待を受け、励みにもしてきたモイヤーの最年長記録の更新は果たせなかったが、背番号34は引退会見で「世界で一番幸せな野球人生を送れた」とすがすがしい表情を浮かべていた。

 記録ではなく、チームのために。哲学を貫いてその道程に終止符を打ったからこそ、残してきた数字の重みは増した。

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