三大駅伝で優勝を狙う東洋大。酒井監督の「強制なし」マネジメント術

10月13日(日)6時15分 Sportiva

 前回の箱根駅伝で、往路優勝を果たしながら総合3位に終わった東洋大学。就任11年目の酒井俊幸監督は、6年ぶりの箱根駅伝の総合優勝に向けて、どのようなチームを作ってきたのか。10月14日の出雲駅伝を前に、他大学の印象、東洋大で実践しているチームマネジメントなどを聞いた。


前回の箱根駅伝で往路優勝を果たした東洋大学

——2年連続の往路優勝を果たした今年の箱根駅伝は、どのような戦略で臨んだのでしょうか。

「ライバルと見ていた青山学院大学と東海大学を研究し、シミュレーションしていく中で、両大学とも2区にはエース級の選手を置かないと予想しました。だから2区は山本修二(当時4年)で勝てると考え、彼を起用。そして4区に相澤晃(当時3年)を置き、確実に往路優勝を勝ち取って『主導権を握った状態で復路に挑もう』という戦略で臨みました。青学大も東海大も、5区には強い選手がいたので、そこまでに十分なアドバンテージがないと往路を制することはできないと思っていました」

——往路は酒井監督の狙いどおりだったと。

「そうですね。まず1区の西山和弥(当時2年)が区間賞。2区では最後に国士舘大学に先頭を奪われ、3区でも青学大の森田歩希くん(当時4年)が区間新記録を出し、一時は首位を譲ったんですが、4区の相澤で1キロもいかないうちに追いついて突き放すことができた。5区の田中龍誠(当時2年)も調子がよく、安心して見られる状態でしたから、4区、5区で青学大のリズムを崩せたかなと思います。

 しかし、うちは7区で苦戦しました。実は7区の小笹椋(当時4年)が走行中に、両足にマメができてしまったんです。序盤は順調だったのですが、中盤地点からマメができはじめて、その影響で終盤はフォームが崩れてしまっていました。これが大きく影響しましたね」

——多くの収穫・課題があった中で、次回の箱根駅伝で勝つためのポイントを、今の段階でどのように分析されていますか?

「ここ2年は往路で優勝しているので、『(東洋大は)主力選手を往路に投入してくる』と、他大学は予想してくるでしょう。次回大会では、ライバルの2大学はもちろんですけど、山登りの5区に強い選手がいる国学院大学、あとは法政大学もかなり勢いがあります。両校とも『往路優勝を取ろう』と考えていると思いますが、うちが総合優勝するためには往路を制することはマストだと感じています」

——ただ、チームの主力だった山本選手が卒業するなど、3年連続で往路を勝つためのチーム力の底上げが大きな課題だったのではないでしょうか?

「そこは確かに課題でしたが、5月の関東インカレを境に一気に選手層に厚みが出てきましたね。というのも、関東インカレ前に箱根を走ったメンバーの故障が相次いだこともあり、2年生の宮下隼人、蝦夷森(えぞもり)章太を初めて起用したんです。すると、宮下はハーフマラソンで日本人トップの2位で、蝦夷森も4位。加えて定方駿(さだかた・しゅん/4年)も6位に入り、出場した全選手が入賞することができた。彼らはこれまで三大駅伝とインカレには出たことがなく、チームとしても新戦力の台頭を待ち望んでいましたから、本当に大きな結果となりましたね」

——そこにエースで主将である相澤選手がいい状態で加われば、かなり期待値の高いチームに仕上がりそうですね。

「そう思います。相澤は本当に”学生長距離界のエース”らしくなってきました。振り返ると、昨年の出雲駅伝では惜しくも区間賞を逃しましたが、全日本大学駅伝はアンカーで区間賞を取ってリベンジを果たし、箱根では区間新記録を達成。今年の全国都道府県対抗男子駅伝(1月)でも実業団選手に勝って区間賞を取り、日本学生ハーフマラソン(3月)も優勝、ユニバーシアード(7月)でもハーフマラソンで金メダルを獲得しています。

 彼の実力を考えれば、もう学生の中のトップを狙うのではなく、東洋大の先輩でもある設楽悠太(ホンダ)や服部勇馬(トヨタ自動車)ぐらいのレベルを目指して、五輪でメダルを獲得できる選手になってほしい。相澤は実際に1万mで東京五輪を目指していますし、その延長線上で2024年パリ五輪のマラソンで勝負するという目標がある。ただ、1万mを27分30秒ぐらいで走れる走力がないと、マラソンでトップ争いができる2時間5分台は出せません。だから今は、トラックでスピードを磨いている最中なんです」

—— 一方でチームとしては、相澤選手がそういった多くの大会に出場している間は他の4年生がカバーしたりと、組織力が高まっている印象を受けます。

「やはり相澤に走りで依存、チームづくりでも依存では、エースに負担ばかりかけてしまう。そういう意味でも、彼が不在の間は副主将の今西駿介(4年)を中心にみんなをまとめてくれたので、チームにとっていい経験ができた期間になったと思います」

——酒井監督ご自身は、チームマネジメントという観点で何か実践されていることはありますか?

「私は監督に就任して11年目になりますが、毎年、あえて夏合宿を開催する場所を変えたり、練習メニューも固定化せず、選手たちに自分に合った練習場所・メニューを考えさせたりするようにしています。最終的には『一人ひとりが自立自走できるチーム』にしていきたいからです。

 もちろん東洋大らしい走りができるよう逆算してメニューを作ることも正しいですし、そこが辿り着くべき目標ではあります。ですが、やはり『優勝した時はこういう練習をしていたからこのメニューをやりなさい』と強制するのではなく、自分たちで自らの走り、状態を常に把握して構成を考えてほしいのです。

 これは大学で結果を残すことだけではなく、卒業後に実業団チームに入って以降のことを考えてのやり方でもあります。実業団選手になれば、多くのことを自分で決めなくてはいけませんから、大学の頃から己を知り、プランニングを考え、実践できる選手になる必要があるのです。実業団に入ってから『はい、スタート』では遅い。自立した人間でないと、強い選手にはなれませんから」

——では、今年の夏合宿を9年ぶりに福島県・猪苗代町に設定したのも、選手たちの意見を考慮したうえで決定されたのですか?

「それもあります。選手によってはクロスカントリー派や、ロードで練習したいという選手もいました。加えて、足の状態がよくない選手、競歩の選手がいることも考慮して、最終的に猪苗代町に決めたんです。クロカン向けの起伏あるコースもあれば、競歩選手用に平坦なコースもありますし、柔らかい芝もあるので。また、クロカンのコースが充実している山形・上山市蔵王への交通アクセスもよかったのも合宿の拠点に決めた理由のひとつです」

——水分補給に関しては、合宿ではスポーツドリンクではなく、ミネラル入りの麦茶を多く取り入れたということですが、どういった理由からですか。

「スポーツドリンクは、飲みすぎると選手たちのウエイトの問題があり、エナジードリンクではカフェインを摂り過ぎてしまう。そこで昨年からは、主に無糖のドリンクで麦茶を導入しています。水を飲む機会が少なくて脱水症状を起こす選手がけっこう多いんですよ。ですが、麦茶ならミネラルも補給できるし、副交感神経にもいいので血流がよくなると言われています。

 あとは単純に、麦茶を飲むとホッとするじゃないですか(笑)。体調管理をするための”コンディショニング飲料”という位置づけで、選手たちに推奨しているというのもありますね」

——10月から駅伝シーズンに突入しますが、ライバルである青学大と東海大のチームとしての印象はいかがですか?

「青学大は今年、久しぶりに(箱根駅伝で)優勝できなかったところから始まったシーズンなので、全力で箱根を取りにきている感じが伝わってきます。前半のトラックのシーズンは選手を出さず、大人しい印象でしたから。それほど駅伝シーズンにかけているんだと思います。

 東海大は4年生のパフォーマンスが非常に高い。ユニバーシアードで館澤亨次くん(4年)と阪口竜平くん(4年)の走りを見ましたが、あらためて能力が本当に高いなと感じました。ケガなくベストメンバーが揃い、最高のコンディションで臨んできたら、どの大会でも頭ひとつ抜けるかなと思います。

 あとは帝京大学や法政大、国学院大もかなり勢いがありますし、駒沢大学にもいいルーキーが加わったので、だいぶ混戦になるのではないでしょうか」

——最後に、三大駅伝に向けて、東洋大の意気込みをお聞かせください。

「それぞれの大会で優勝を狙っていきたいです。明確に『三冠』という表現ではなく、その時のチーム状態を見て、選手を組み替えながら、その中で上を目指していこうという考えですね。でもやるからには、どの大会でも頂点を狙えるような戦術で臨みたいと思っています」

Sportiva

「駅伝」をもっと詳しく

「駅伝」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ