原「巨人終身名誉監督」へ 反対派粛清開始で松井監督の芽も

10月15日(月)16時0分 NEWSポストセブン

全権監督の胸中は?(写真:時事通信フォト)

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 高橋由伸・監督の3年間、常にエースであり続けた菅野智之は今季最多勝を決めた登板後、「今日は監督のために投げようと思っていた」と語り、退任する指揮官に餞の完封勝利を贈った。


 だが、CSでの最後の戦いを残す中でも、チーム内の話題は来季に向けた人事情報一色に染まっている。エースの熱い言葉さえも“明日からは新しい監督のために投げる”と、悪意混じりの翻訳をする球団関係者もいる。すでに巨人軍では、菅野の伯父である原辰徳・次期監督のカラーに塗り替えるために、周到に準備された「原シフト」が進んでいる。


◆“監督不在中”のコーチ人事


「要請を受け、(監督就任を)前向きに考えるということは申し上げた」


 10月10日、巨人軍の球団事務所から現われた原氏は、取り囲んだ報道陣にそう語り、後は何を訊かれても神妙な表情を崩すことなく、「正式に決まった時に」と繰り返して迎えの車に乗り込んだ。だが、原氏に先がけて取材に対応した山口寿一・オーナーはこう明言していた。


「巨人を建て直してもらうことで了解を得た」


 笑顔こそなかったが、「大問題を解決したようで、満足気に見えた」(記者)という。



 その前日(9日)、本誌は巨人から去ることになった“監督”に直撃していた。


 辞任が決まった高橋監督ではない。今季、二軍監督を務めた川相昌弘氏だ(2016、2017年は三軍監督)。川相氏はファームの日本選手権の翌日(7日)に行なわれた球団との面談で「解任」を告げられたと明かす。


「率直に言えば、来季も続けたかった。18歳(でプロ入りして)からずっとユニフォームを着続けてきたので、戸惑っています。プロの世界ですから、球団に“来季は契約を結ばない”と言われれば仕方ない。自分では結果を出したという自負はあったのですが……」


 明暗分かれた「指揮官」の立場と表情は、これから吹き荒れる巨人の激烈人事を象徴しているように映る。


 高橋監督が球団に辞意を伝えた3日以降、原氏の監督就任が“決定”するまでの間に、巨人の来季人事構想は目まぐるしく動いた。


 まず、高橋監督の辞任とセットで発表されたのが鹿取義隆・GMの退任だった。「監督ひとりの責任ではない。フロントとチームが一体となって立て直せる体制を作らなければならない。GMを含めてですね」(山口オーナー)という言葉からも、事実上の引責更迭と受け止めるのが自然だろう。


 川相氏とともに二軍打撃コーチとしてイースタン4連覇に導いた田代富雄氏も“クビ”に。その指導力は球界から高く評価されており、すでに古巣・横浜DeNA(元大洋)のコーチ就任が有力と報じられている。



 選手獲得にも大きな変化が生じた。10月25日に控えるドラフト戦略の“転換”だ。巨人は当初、今夏の甲子園準優勝投手・吉田輝星(金足農)を1位指名する方針と伝えられ、鹿取GMも「吉田君を指名する」と公言していた。吉田も「巨人に行きたい」と話していただけに、競合覚悟で獲りにいくと見られていた。


 ところが高橋監督と鹿取GMの退任が決まるや、読売系列のスポーツ報知を始め「1位は大阪桐蔭の根尾(昂)」(6日付)と報じるようになった。60年来の巨人ファンとして知られる落語家のヨネスケ氏も首を傾げる。


「ファームで優勝した川相と田代をクビにする理由が全然分からない。ドラフトにしたって由伸監督の辞任が決まった途端にコロリと変わるんだから。今の巨人のイメージアップに必要なのは、昔でいうところの松井秀喜みたいなヒーロー。だったら、“巨人に行きたい”と言っている吉田君に応えるべきでしょう。クジで外したとしても、ファンは納得する。派閥とか方針とかがあるのかはわからんけど、計算高さばかりが見えてきてがっかりだね」


◆「松井監督」カードを握った


 ヨネスケ氏らファンの目にも“計算高く”映るのは、川相氏らとは対象的に、球団史上最長タイの4年連続V逸を招いた一軍コーチの去就が音沙汰なしであることだ。



「チームがCSに進出した状況とはいえ、本来なら村田(真一)ヘッドや斎藤(雅樹)投手コーチの責任論が浮上しそうなものですが、残留との見方が強まっている。2人とも原さんが高橋監督に引き継いだ主要コーチです」(巨人番記者)


 新加入の指導者の名も取り沙汰され始めた。


「川相さんの後釜として、篠塚(和典)さんの二軍監督の招聘が浮上。過去2度の原体制でも、原さんが侍ジャパンを率いたWBC(2009年)でもコーチを務めた盟友的な存在です」(同前)


 不思議なのは、こうした去就・残留人事を「誰が決めたのか」が、表からは全く見えないことだ。


 退任が決まった高橋監督や鹿取GMが来季陣容について意向を示すはずがないのは当然だが、この時点では「原新監督」も新GMも決まっていない。にもかかわらず、その間にも着々と「原監督が指揮を執りやすい体制に向けた地慣らしが行なわれていた」(同前)と見られても仕方ないだろう。ある巨人OBが回想する。


「川相さんは、2度目の原監督時代にヘッドコーチを務めたが(2013〜2015年)、方針を巡って意見が対立することも少なくなかった。コーチ人生をスタートさせた中日で落合(博満)監督の薫陶を受け、戦略性重視の野球を覚えた川相さんに対し、原さんは流れや瞬発的な判断を大事にするタイプ。村田さんや斎藤さんのような“原イエスマンコーチ”ではなかっただけに、煙たく思われたのかもしれない」



 鹿取GMと原氏との間にも溝があるといわれてきた。


「第1次原監督時代に鹿取さんはヘッドコーチに就任(2002〜2003年)するも、投手を頻繁に代えたがる原監督に対し、“それでは投手が酷使されて育たない”と意見していた。野手出身と投手出身の指導者にありがちな衝突ですが、鹿取さんは2003年に斎藤さん(当時はブルペン担当コーチ)と配置転換され、シーズン途中で退団した経緯がある」(同前)


 そうした因縁も踏まえると、「実績ある原監督」に再々登板を依頼するにあたり、迎える球団が原監督の意向を先回りして忖度し、「反タツノリ派」となり得る者を排除した構図にも見えてくる。


 さらに、「鹿取GMの後任は空席になる」(前出の番記者)とも囁かれている。そうなれば原氏は実質的な「原GM兼任監督」となり、選手獲得から采配、年俸査定までの全権を握る。


「来季以降の成績次第とはいえ、才能が開花した岡本和真や吉川尚輝らの活躍が期待でき、未来は明るい。


 3度目の登板でも“名将”の評価を得れば、長嶋(茂雄)さんと同じ“終身名誉監督”どころか、“終身名誉GM”になる可能性さえある。“ポスト原”の人事も原監督の意向が反映されることは確実で、高橋監督の再登板や阿部慎之助、そして松井秀喜といった“候補者カード”を選ぶ立場になれる」(前出の巨人OB)


 巨人ファン、そして長嶋氏が待望する「松井監督」の誕生を決めるのも原氏の胸三寸となりそうなのだ。



◆「原さんにしか分かりませんよ」


 チーム内の「原シフト」とともに、周囲のバックアップ体制も着々と進む。実は高橋監督の辞任が発表された10月3日夜、原氏の自宅近くの公園で、各スポーツ紙記者による“緊急共同取材”が行なわれていた。参加した記者が明かす。


「この会見は球団からではなく、原さんと親しい記者から“取材に応じる”と連絡があった。球団関係者を引き連れ、現われた原さんは“今は何とも言えない”と答えるばかりでしたが、翌日には各紙揃って“次期監督は原氏が有力”と報じることになりました」


 そうした報道と呼応するかのように、山口オーナーが「難しい状況。やはり経験実績といったことは必要」(3日)と語ったことで、スポーツマスコミも「3度目の原監督」一色になった。


「原さんの再々登板にあたって、暴力団に1億円を支払ったスキャンダル(※注1)や野球賭博問題(※注2)など、前回の退任に至った経緯を蒸し返されるかと思いきや、そうした論調は全くといっていいほど紙面に出ない。原さんと反目すれば、先々まで巨人の取材がしづらくなってしまいかねないと番記者が懸念するのは当然です」(スポーツライター)


【※注1/原監督が過去の女性問題に絡み、元暴力団組員に1億円を支払ったと『週刊文春』が報じた(2012年6月)】


【※注2/2015年9月、巨人軍の投手3人(当時)が野球賭博に関与していたことが発覚。翌2016年3月、さらに高木京介投手も関与していたことが明らかになる】


 トップに権力が一極集中し、親しい側近で首脳陣が固められ、批判するメディアもいない──そんな構図は現政権にも重なって見える。ただし、プロスポーツの世界である以上、問われるのは、この新体制によって巨人が復活するのかどうかということに尽きる。



 冒頭に登場した川相氏に、そうした疑問をぶつけた。


──育成手腕が評価され、イースタン優勝で結果を出しながら解任されたのはなぜだと思うか。


「自分に力がなかっただけ……そう言い聞かせるしかないでしょう」


──次期監督の原氏から評価されなかった理由は思い当たるか。


「原さんにしか分かりませんから……。監督とヘッドの関係でしたが、至らないところもあったのでしょう。監督と選手の間に挟まれながらも、原監督の方針をしっかり選手に伝えてきたつもりでしたが……」


──今回、解任されたのも当時の確執が原因では?


「ヘッド時代、(原監督との間に)確執があったとマスコミに書かれたことも確かにありました。でも、周囲が騒いでも僕は何とも思っていなかった。チームが勝利するためにベストを尽くすことだけを考えていた。これからもユニフォームを着続けたい。自分に何ができるか考えながら、オファーが来るのを待ちますよ」


 川相氏はそういって、寂しそうに笑った。


 最後のCSを戦う由伸巨人の“終戦”とともに本格化するチーム人事。新指揮官は「巨人軍の新しい形」をアピールできるだろうか。


※週刊ポスト2018年10月26日号

NEWSポストセブン

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