パ・リーグ名物審判・山崎夏生氏、希代のスラッガー・山﨑武司氏が語る"神ホームラン"、史上最高の1本

10月16日(土)6時0分 週プレNEWS

野球といえばホームラン! 特に今年はエンゼルスの大谷翔平が46本のホームランを放つなど、何かと注目された。

そこで、パ・リーグの名物審判・山崎夏生氏と、希代のスラッガーである山﨑武司氏に、日本のプロ野球史上で印象的だったホームランを振り返ってもらった。

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パ・リーグの名物審判が語る美しすぎるホームランの思い出。
山崎夏生「審判の目から見たホームランのすごさ」

【写真】山崎夏生氏、山﨑武司氏

■何百万払っても座れない特等席

——パ・リーグ審判員として29年間1451試合に出場した山崎さんの記憶に残るホームランとは?

山崎 1993年、野茂英雄(当時近鉄)相手に打ったイチロー(当時オリックス)のプロ初ホームランは印象的です。当時は無名選手でしたが、すでに審判の間では「すごい打者がいる」と評判になっていました。

でも、私も一塁塁審として見てましたが、あのグラウンドにいた誰ひとりとして、このふたりがメジャーのスーパースターになるなんて想像してなかった。そんな対決に立ち会えるのも、審判の醍醐味(だいごみ)のひとつです。

——審判の目線で感じるイチローのすごさは、打撃のポイントの近さとスイングスピードとのことですが。

山崎 150キロの球なら到達時間は約0.4秒。普通なら0.2秒くらいで打ちにいかなきゃ間に合わないところ、彼は感覚的には0.3秒、私がストライクのコールをしようとしたところでバットが出てくるんです。

——この打撃と同じ特徴を持っていたのが当時ロッテの落合博満

山崎 右の落合、左のイチローが私が見たなかでは最もすごかった。落合さんのバッティングの真骨頂は川崎球場でのライトへのホームラン。川崎球場は狭い代わりに高いフェンスがあって、それを狙いすましてポーンと高い放物線を描く打球で越していく。まるで棒高跳び選手がバーを越えるような芸術性がありました。

野茂英雄と清原和博の対決で球審を務める山崎氏。「清原と松坂は高卒新人で完成されていた唯一の選手」
野茂英雄と清原和博の対決で球審を務める山崎氏。「清原と松坂は高卒新人で完成されていた唯一の選手」

——打者の真後ろ。そこには球審にしか味わえないたくさんの感動があったのでは?

山崎 門田(博光)さんは本当にスイングが速くて、振った後に「ブン」という音が遅れて聞こえてくる。イチローの息遣いも鬼気迫るものがあった。長いこと審判をやったけど、こういう大打者を間近で見られるのは野球好きの私にとってこの上ない喜びでした。

——そんな特等席から見るホームラン。さぞ見ごたえがあったでしょうね。

山崎 私は西武球場のホームランが好きでした。デーゲームなら緑に囲まれた突き抜けるような青空に、ナイターならカクテル光線に吸い込まれていく清原(和博)や秋山(幸二)の打球は本当に美しかった。これは何百万円払っても、総理大臣でも座れない審判だけの特等席だったと思ってます。

●山崎夏生(やまざき・なつお)
1955年生まれ、新潟県出身。パ・リーグ審判員として84年に1軍デビュー。現役引退後は審判技術指導員を務め、後進の育成に尽力。現在は審判応援団長としてアマチュア野球に深く関わる

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希代のスラッガーが振り返る印象的なホームランとは?
山﨑武司「一瞬で試合をひっくり返せるのがホームランの魅力」

©GA Link,inc
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■逆転満塁サヨナラが究極のホームラン

——403本のホームランを打った山﨑さんですが、印象に残っている一本は?

山﨑 プロ5年目(1991年)に横浜の田辺(学)さんから打った初ホームランは印象深い。とりあえず振ったら当たっただけですが、それまで苦労してたからめちゃくちゃうれしかった。まぁ、当時の中日の監督が星野(仙一)さんだったからあんまりはしゃぐと怒られるのでグッと押し殺しましたけど。

——そしてプロ入り10年目(96年)でホームラン王(39本)に輝きます。

山﨑 世の中の野球ファンは僕が取るなんて誰も思ってなかったでしょうね。でも前年に16本打って手ごたえがあったから、今年は自分の背番号(当時22)以上打てるんじゃないかって気持ちでキャンプインしたんだけど、メーカーが普段僕が使ってるバットより1インチ長い35インチのバットを間違って送ってきたんですよ。

僕は気づかず、「やけにバットが長く感じるな。調子悪いな」って思いながら振ってた(笑)。半月後くらいに気づいたけど、それで練習しちゃってたから渋々そのままシーズンも同じバットを使ったら外のスライダーがとてもよく拾えてね。メーカーが間違えてくれたからホームラン王が取れたのかも。

——その翌年は本拠地がナゴヤ球場から広いナゴヤドームに変わりました。

山﨑 ナゴヤ球場より8m以上も広くてフェンスも高いから、ちゃんと振らなきゃって意識が強くなって、どうしてもスイングを崩しちゃうよね。ナゴヤ球場のままだったら、(通算)500本は打ててたよ(笑)。

——山﨑さんのホームランで有名なのは、1999年の、対阪神戦で放ったリーグ優勝を引き寄せる逆転サヨナラ3ラン。

山﨑 あれは全部自分のイメージどおりになったから鮮明に覚えてるよ。2点ビハインドの9回裏1アウト。ベンチで、前の打者のゴメス、立浪(和義[たつなみ・かずよし])が塁に出て僕に打席が回ってきたら初球はスライダーで誘ってくる。

それを見逃せば、次はストレートが来るはずだから、それを仕留める、とシナリオを描いてたら、全部そのとおりになった。野球の神様ってほんとにいるんだなと思いました。

——楽天に移籍後の2007年には2度目のホームラン王を獲得します。

山﨑 あの年は前半戦絶好調で、王(貞治)さんの日本記録(55本)を抜けるかもって思ってやってました(最終的には43本)。でも、フルキャストスタジアム宮城(現・楽天生命パーク宮城)は、レフトからライトに東北の重い風が吹くし、当時は統一球がなくて楽天はZETT社の飛ばないボールを使ってた。

ずっと球団に「ミズノに変えてください」って訴えたけど、全然受け入れられず......もしミズノ球を使ってればあの年は60本は打ててたね(笑)。

——そんな山﨑さんのベストホームランは?

山﨑 2009年のCS 1stステージ第2戦でホールトンから打った3ランかな。完璧なホームランはほかにいっぱいあるけど、あそこで打ててファイナル進出をグッと引き寄せて、野村(克也、当時監督)さんと抱き合えたのがジンときました。

——山﨑さんにとっての理想のホームランは?

山﨑 一瞬で試合をひっくり返せるのがホームランの魅力だから、逆転満塁サヨナラホームランが究極だよね。北川(博敏)なんてそれで優勝を決めてるし、あれが理想のホームランだと思います。

●山﨑武司(やまさき・たけし)
1968年生まれ、愛知県出身。主に中日と楽天で活躍し、プロ生活27年で通算本塁打数は歴代20位の403本。96年と2007年に本塁打王を獲得。両リーグで本塁打王に輝いたのは落合博満、タフィ・ローズに続き、史上3人目

取材・文/武松佑季


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