日本代表、豪州戦ドローの原因は。アジア杯イラン戦の教訓活かせず【現地取材】

2024年10月18日(金)19時0分 FOOTBALL TRIBE

日本代表vsオーストラリア代表 写真:Getty Images

FIFAワールドカップ26(W杯)アジア最終予選グループC第4節が10月15日に行われ、日本代表がオーストラリア代表と1-1で引き分けた。


後半13分、日本代表は中盤でのボールロストからオーストラリア代表のサイド攻撃を浴びると、DFルイス・ミラーのクロスにDF谷口彰悟が反応。谷口のクリアボールが無情にも日本代表が守るゴールへ向かい、オウンゴールとなった。


先制を許した日本代表の森保一監督は、後半17分にMF伊東純也、同25分に中村敬斗と鎌田大地の両MFを投入する。伊東を右、中村を左ウイングバックに据えたことでサイド攻撃の威力が高まると、中村が同31分に敵陣左サイドを突破。ペナルティエリア左隅へ侵入した同選手の低弾道クロスが、相手DFキャメロン・バージェスのオウンゴールを誘発した。その後も日本代表が攻め込んだものの、勝ち越しゴールを奪えず。同代表のW杯アジア最終予選の連勝は3で止まっている。


日本代表が勝利を逃した原因は何か。ここでは埼玉スタジアム2002にて行われたオーストラリア代表戦を振り返るとともに、この点を中心に論評していく。現地取材で得た森保監督の試合後コメントも併せて紹介したい。




日本代表vsオーストラリア代表、先発メンバー

守田が日本のパスワークを司る


両チームともに[3-4-2-1]の基本布陣で臨んだなか、日本代表がボールを支配。町田浩樹、谷口、板倉滉のDF陣(3センターバック)を起点にパスを回そうとする意図が窺えた。


オーストラリア代表がFWミッチェル・デューク、及びライリー・マクグリーとアイディン・フルスティッチの両MF(2シャドー)の計3人で日本代表の3センターバックに寄せようとしたところ、MF守田英正が最終ラインへ降りてパス回しに関与。これによりオーストラリア代表の前線3人と、日本代表の最終ライン4人による布陣のミスマッチが生まれ、ゆえに後者のパスワークが安定した。


この布陣のミスマッチを受け、オーストラリア代表は撤退守備へ移行する。[5-4-1]の守備隊形で自陣のスペースを埋め、日本代表の攻撃を受け止め続けた。




三笘薫 写真:Getty Images

三笘と久保が豪州を翻弄


後半途中まで左ウイングバックを務めたMF三笘薫のドリブルは、この日も破壊力抜群。広い歩幅から繰り出され、瞬く間にトップスピードに達する同選手の鋭いドリブルは、大柄なオーストラリア代表の選手たちにとって脅威となっていた。


2シャドーの一角を務めたMF久保建英も、適宜右サイドへ流れ日本代表の攻撃を活性化。同選手の軽快なステップや、守備者の重心の逆を突くドリブルにもオーストラリア代表は手を焼き、度々サイドを突破されている。三笘と久保が持ち前のドリブルスキルを遺憾なく発揮し、サイドの攻防で優位に立てたことも、日本代表が試合の主導権を握れた要因のひとつだ。


鈴木彩艶 写真:Getty Images

日本代表が見せてしまった隙


相手の守備の段取りを察知し、当意即妙な立ち位置でパスワークを司った守田と、持ち前のドリブルスキルでサイド攻撃を牽引した三笘や久保。この3人の躍動により日本代表の攻撃は概ね機能していたが、今回の試合では僅かな隙が失点に直結してしまった。


同代表はFW上田綺世へのロングパスを時折織り交ぜたものの、最前線でのボールキープ(ポストプレー)が得意な同選手へのオーストラリア陣営の警戒心は強く、それゆえ同選手が空中戦を物にできない場面がちらほら。前半4分の守田からMF堂安律(右ウイングバック)、同18分の谷口から三笘へのパスなど、相手ウイングバックの背後を突くロングパスは効果的だったが、上田やセンターサークル近辺へのロングボールはことごとくオーストラリア代表の選手に跳ね返されていた。


後半13分の失点は、日本代表GK鈴木彩艶が繰り出したロングパスをオーストラリア陣営に回収されたことで喫したもの。鈴木のロングパスがふわりとした軌道ではなく、跳ね返されたボールの飛距離が伸びやすいライナー性であったこと、そしてそのボールが相手DFジェイソン・ゲリア(センターバック)の手前且つセンターサークル近辺に落ちたため、ゲリアのクリアボールがそのままオーストラリア代表の攻撃の起点になってしまった。


今年2月に行われたAFCアジアカップ準々決勝(イラン代表戦)でも、日本代表は後半10分にGK鈴木のロングパスを回収され、この直後に浴びた速攻から同点ゴールを奪われている。相手センターバックにライナー性のロングパスを弾き返された場合、このボールがそのまま相手チームの速攻や中央突破に繋がりかねない。ロングパスの送り先は相手にボールが渡ったとしても速攻に直結しにくく、相手GKとしても飛び出しづらいサイドバック(ウイングバック)の背後を原則とするのが得策だが、アジアカップのイラン戦と今回のオーストラリア戦で日本代表は同じような失点を喫している。アジアカップで得た教訓を、今回のW杯アジア最終予選で活かしてほしかった。




森保一監督 写真:Getty Images

森保監督が明かしたチームビルディングの方針


今回のW杯アジア最終予選で、先発メンバーや基本布陣をほぼ固定している森保監督。オーストラリア戦後の会見で、ある記者からターンオーバー(先発メンバーの大幅入れ替え)を提案されると、現段階における自身のチームビルディングの方針を明かした。


ー先発メンバーが悪かったという意味ではありませんが、後半になると全体的に疲労が見られました。監督はどう感じていらっしゃいますでしょうか。また、これからの戦いを考えたときに、2試合(連戦)でうまくメンバーを替えていくことも考えますか。


「ゲームプランとして、できれば先行勝ち切り(に持ち込みたい)。アクシデントが起き先制されたとしても、後半にギアを上げて追いつく勝ち切るというのを想定してメンバー編成をしました」


「(選手の)コンディション面で言えば、ターンオーバーをするのが正解かもしれません。けどトレーニングをゼロに戻して“1”から始めて、原則的なところから始める(チームのプレー原則を試合の都度作り直す)ことで勝利の可能性や確率を上げられるかと言うと、今回の最終予選ではできるだけ選手を替えずに、トレーニングしたことや前の試合で経験したことを次の試合に活かしていけるようにと考えています」


ロングパスの球質や送り先をチーム内で共有しきれなかったこと。これが今回の連勝ストップの原因だと筆者は考える。ターンオーバーをすべきだったかを考える前に、プレー原則の共有・浸透が十分だったかを森保監督は振り返る必要があるだろう。

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