豪州SC最終戦バサースト1000:ホールデン・ファクトリー有終の美。レッドブルのSVG/タンダー組が初優勝

2020年10月21日(水)15時48分 AUTOSPORT web

 2000年シーズン以来のフィナーレを飾るVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー・シリーズ最大の祭典『バサースト1000』が10月15〜18日の週末に開催され、レインシャワーの絡んだ161周をシェーン-ヴァン・ギズバーゲン/ガース・タンダー組(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が制し、SVGは自身待望の名物イベント初優勝。今季限りでブランド消滅のホールデン・ファクトリーにとっても、有終の美を飾る記念すべき勝利となった。


 木曜からプラクティスセッションの始まったマウントパノラマでの“グレート・レース”は、2022年からの『シボレー・カマロ・スーパーカー』参戦と新車両規定“Gen3”の概要発表に加え、2010年シリーズ王者ジェームス・コートニーの来季フォード残留や、同じく2014年チャンピオンであるマーク・ウインターボトムの、チーム18との新規2年契約締結など、いまだ新型コロナウイルス(COVID-19)第2波による厳しい環境制限は残るものの、お祭りの週末にふさわしいニュースが飛び交った。


 そんなムードのなか始まった公式練習だが、主導権を握ったのはやはりフォード・マスタング勢。しかしレギュラーシーズンとは様相が異なり、すでに前戦“ザ・ベンド”で破竹のシリーズ3連覇を決めた王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJRチーム・ペンスキー)によるトップタイム連発……とはならず、DJRとともにフォードのリーディングチームとして戦うティックフォード勢が席巻。


 とくに6号車のモンスターエナジー・レーシング、キャメロン・ウォーターズ/ウィル・デイビソン組が予選シュートアウトまでの2日間、8セッション中4つで最速を奪取する速さを披露する。


 残るセッションも耐久コドライバー登録選手のみのFP2では僚友スーパーチープ・オート・レーシングのジェームス・モファット(フォード・マスタング/ティックフォード・レーシング)が、そしてFP5はマクラフランが制すると、続く暫定予選はリー・ホールズワース(フォード・マスタング/ティックフォード・レーシング)が最速をマークするなど、マスタングが次々とセッションを制圧していく。


 対するホールデン陣営は3度目のコドライバー・セッションとなったFP6で、チャズ・モスタートと組むウォーレン・ラフ(ホールデン・コモドアZB/ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド)が唯一のトップタイムという厳しい展開となり、決勝レースでの苦戦が予想された。


 その趨勢は土曜午後17時のトップ10シュートアウトでも変わらず、モンスターエナジーカラーのマスタングをドライブするウォーターズが、2分03秒5592を記録してポールポジションを獲得。フロントロウ2番手に王者マクラフラン/ティム・スレード組が並び、背後のセカンドロウ3番手にホールデンの最上位となるモスタート/ラフ組、4番手に”SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン/ガース・タンダー組と2台のコモドアZBが喰い下がる。


 そして3列目5番手にはホールズワース/マイケル・カルーソ組のマスタングと、6番手にアントン・デ・パスカーレ/ブロディ・コステッキ組(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)が並ぶグリッドとなった。

レースウイークにTeam18との新規2年契約締結が発表された2014年チャンピオンのマーク・ウインターボトム
2020年限りで豪州市場から姿を消すホールデン・ブランドにとっても、今回のレースが最後の『バサースト1000』に
公式練習から速さを見せたキャメロン・ウォーターズ/ウィル・デイビソン組が予選シュートアウトも制してポールポジションを獲得する


■バサースト1000通算4勝のウインカップがまさかのクラッシュ


 日曜午前のウォームアップ走行でもアンドレ・ハイムガートナー/ディラン・オキーフ組(フォード・マスタング/ケリー・レーシング)が最速を記録して迎えた決勝。この日はレース前から嵐が到来する予報が出されていたため、主催者は急遽タイムスケジュールの変更をアナウンスし、スタート時刻を当初の11時30分から30分早め11時から全25台のマシンがマウントパノラマでの161周に挑んでいった。


 序盤は各車静かな立ち上がりを見せ、ドライ路面のもとで20周前後に最初のルーティンピットを終えると、33周目にこの日最初のアクシデントが発生する。


 その当事者はなんと『バサースト1000』で4勝を誇るシリーズ7冠王者のジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/トリプルエイト・レースエンジニアリング)で、9番グリッドからスタートしたクレイグ・ラウンズ(『バサースト1000』7勝の記録を持つ)から5番手でマシンを引き継いだウインカップは、エレバス・モータースポーツのコステッキとの勝負でインサイドを取られると、ターン4の“The Cutting(ザ・カッティング)”アウト側へと押しやられる。


 すでにタイヤカスの蓄積したレコードライン外側はほとんどグリップせず、レッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)の888号車はそのままウォールの餌食となってしまう。


 このクラッシュで最初のセーフティカー(SC)が導入されると、首位を入れ替えながら周回数を消化していく王者マクラフラン/ティム・スレード組とウォーターズ/デイビソン組に対し、スタートからダブルスティントをこなしたタンダーの97号車RBRAホールデンが3番手へと浮上。その背後に、ウインカップ撃墜で勢いに乗るパスカーレ/コステッキ組が迫っていく。


 50周を過ぎたところでふたたび後方でクラッシュが発生し2度目のSCが入ると、そのリスタート直後にレースの行方を決定づける出来事が。ペースカー先導走行からレーシングスピードへと復帰したタイミングで、トラック上にはついに雨粒が落ち始め、スリックタイヤを履く全車はレインタイヤ装着のタイミングを測り、順位がシャッフルされることに。

シリーズ7冠王者のジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Triple Eight Race Engineering)が、序盤33周目に姿を消す波乱に
幾度かのリスタートもこなし、スタートから最多リーディングラップを奪った王者スコット・マクラフラン/ティム・スレード組(フォード・マスタング/DJR Team Penske)
「雨が降り続けなかったのもありがたかったし、タイヤが磨耗してからのペースも抜群だった」と勝因を振り返ったSVG



■ホールデン最後のバサースト1000で見事勝利



 この短いレインシャワーを味方につけたのが3番手だったSVG/タンダー組の97号車コモドアZBで、ウォーターズ/デイビソン組をコース上で仕留めて首位浮上に成功。そのままタンダーにバトンを繋いでいく。


 100周目に3度目のSCで隊列が圧縮されたタイミングでも、リスタートで首位を守ったSVG/タンダー組は、残り3周のSC明けで再び”3ラップ・スプリント”を強いられるも、ラストスティントを担当したSVGがファイナルラップ目前にも関わらず、この日の全体最速となるファステストを記録して後続を突き放し、見事にトップチェッカー。


 161周の攻防を制し、これで4勝目となったタンダーとのタッグで、SVGも自身待望の『バサースト1000』初制覇を成し遂げた。


「今日はレースを通じてノーミスだったことが成功を呼び込んだ。最後のドッグファイトはとてもクールだったね! 父と母に電話したら、すでにお祭り騒ぎで酒を飲んでいたよ」と、喜びを語ったSVG。


「前半スティントはライバルの後方に着く展開だったが、テール・トゥ・ノーズでは熱の問題が起こり、エアロバランスを失いかねないから意図的に距離を取っていた。最後の60周はずっと全開で、強烈なドライブだったし楽しかった。最終スティントでは毎ラップ2分06秒台を刻めたのも最高だったね」


 2位ウォーターズ/デイビソン組、3位モスタート/ラフ組を従えたこの勝利は、ホールデンの歴史上34度目の『バサースト1000』制覇となったが、2020年限りでブランドが消滅するホールデンにとっては文字どおり“最後の勝利”に。


 RBRAのトリプルエイト・レースエンジニアリングは、2021年シーズンもコモドアZBのボディで戦うことを決めているが、オーストラリア市場から消えるブランド名を掲げることはせず、同時並行で2022年のGen3『シボレー・カマロ・スーパーカー』を開発しながらシリーズを追うこととなる。

ホールデンの歴史上34度目の『バサースト1000』制覇となったが、2020年限りでブランドが消滅するホールデンにとっては文字どおり”最後の勝利”に
最終スティントはクールスーツのトラブルを抱えながらも、ウォーターズ/デイビソン組が2位に入った
5位で最終戦を締めくくった王者スコット・マクラフラン(フォード・マスタング/DJR Team Penske)は、来季の北米インディカー本格参戦に向けVASCを卒業する意向を示した

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