F・マリノス、逆転優勝の重要なカギは「特別な選手」仲川輝人にアリ

10月21日(月)6時40分 Sportiva

 力強い足取りで先頭グループを追いかける横浜F・マリノスが、ついに首位の背中に張りついた。

 J1第29節、3位の横浜FMは湘南ベルマーレに3−1で勝利。一方で、首位の鹿島アントラーズが松本山雅と1−1で引き分けたため、両者の勝ち点差は最少の1まで縮まった。

 鹿島と勝ち点で並ぶ2位のFC東京を含め、優勝争いは3チームがほぼ横一線。最近6試合で5勝1分けと勢いに乗る横浜FMの逆転優勝も、いよいよ現実味を帯びてきた。

 今節対戦した湘南にしても、現在16位に低迷しているとはいえ、決して戦いやすい相手ではなかったはずである。

 湘南は曺貴裁(チョウ・キジェ)前監督のパワハラ問題が発覚して以降、6試合勝利から遠ざかり(2分け4敗)、最近2試合は0−5、0−6と大量失点での敗戦が続いていた。そこで、新たに就任した浮嶋敏監督は、自身の初陣に際し、”F・マリノス対策”を準備。前監督時代からの3−4−3をベースにしつつも、横浜FMのボール保持率の高いサッカーに対し、「引いて守るのではなく、しっかり前からプレッシャーをかけて、いい形でボールを奪うことを考えて」(浮嶋監督)、守備時は4−4−2にシフトする可変システムを採用した。中盤から前により多くの人数をかけることで、高い位置から積極的にプレスを仕掛けようという狙いである。

 シーズン途中の監督交代というカンフル剤も相まって、湘南は心機一転の試合で、「自分たちのもともとのスタイル、フォームを取り戻すよう1週間やってきた。前の試合に比べると、自分たちらしさを取り戻せた」(浮嶋監督)。

 だが、横浜FMが動じることはなかった。自在のポジショニングで湘南ディフェンスを翻弄した右サイドバック、DF松原健が語る。

「やりにくさはなかった。相手(の布陣)は関係なく、(相手選手の)間で受けることだけ考えていたので、(湘南が4−4−2にしたことは)気づいていなかった」

 横浜FMは、時に素早くワンタッチで、時にタメを作ってツータッチで、相手の出方を見ながら緩急織り交ぜ、テンポよくパスをつなぐ。湘南の果敢なプレスを前にしても、確実に敵陣に攻め入るだけでなく、ペナルティーエリア周辺での崩しのアイデアも豊富だった。

「(終了間際に失点したが)90分、ほとんど自分たちがゲームをコントロールし、チャンスを作れた」

 ボランチのMF扇原貴宏がそう語ったように、横浜FMは攻撃から守備への切り替えも早く、ボールを失っても高い位置ですぐさま奪い返すことができていた。まさに横浜FMらしい内容で、完全に試合を支配した。

「勝つことも大事だが、自分たちがやろうとしているサッカーで勝ちたい。それができずに勝ってもうれしくない」

 そう語る横浜FMのアンジェ・ポステコグルー監督も、この試合については絶賛だった。

「試合開始からとても強いパフォーマンスを出せ、F・マリノスらしいサッカーを見せられた」

 先制点を奪ったのは前半39分と、少しばかり時間がかかった。しかし、その後は後半7分、23分に追加点。苦境から脱しようと必死で向かってきた湘南を、内容、結果の両面で圧倒しての勝利だった。キャプテンのMF喜田拓也が語る。

「質の高い練習もしているし、(自分たちのサッカーを)自信を持ってやるだけ。(首位に迫ったとはいえ)何位にいてもやることは変わらない」

 優勝争いが佳境を迎えるシーズン終盤、横浜FMがチームとして極めて完成度の高いサッカーを遂行できていることは間違いない。

 だが、今の横浜FMが優れた試合内容を結果に結びつけることができているのは、最終局面で決め手を持つ選手がいるからだろう。

 FW仲川輝人である。


湘南戦でも貴重な先制ゴールを決めた仲川輝人

 右ウイングとして、キレッキレのドリブルで相手守備網を破ることのできる仲川だが、とりわけ彼の危険性が増すのは、ボックス内、すなわちペナルティーエリア内である。相手DFの動きを見て、シュートを打てるタイミングやコースを作り出すのが抜群にうまいのだ。

 この試合で仲川が決めた先制ゴールも、実に巧みなシュートから生まれている。

 右サイドからペナルティーエリア内に入り、中央の喜田からパスを受けた仲川は、ボールを一歩分だけ左に動かすと、目の前のDFが足を伸ばす前に左足を小さく振り、フワリと柔らかいボールを、GKの手が届かない絶妙なコースへと送り込んだ。

 扇原が「ずっとチャンスがあるなかで(それを生かせず)、嫌な展開になりかけていた。すごく助かったし、大きな先制点だった」と振り返った、価値あるゴールである。

 今季J1全試合に先発出場している仲川は、これが今季12点目。J1得点ランキングでも4位タイにつける。

 シーズン前半の横浜FMは、現在J1得点ランキングトップのマルコス・ジュニオール(14ゴール)や、負傷離脱中のFWエジガル・ジュニオ(11ゴール)に、得点という面では依存している感があった。

 ところが、シーズンが後半に入り、横浜FMが首位を猛追するなかでは、仲川が横浜FMの得点力を支えていると言っていい。エジガル・ジュニオの離脱直後は、センターフォワードを任されるなど、「理解力があり、マルコスとうまく連係できる」と指揮官からの信頼も絶大だ。

 第21節からの3連敗で、優勝争いから脱落しかけた横浜FMが、再び息を吹き返し、首位に肉薄するところまで来られたのも、仲川の奮闘によるところが大きい。チームとしてすばらしいサッカーをしていることは大前提としてありつつも、仲川が”特別な選手”であることも認めなければならない。

 しかし、それだけに仲川の負傷が心配される。好事魔多しとはよく言ったものである。

 仲川は試合終盤、ピッチ中央で加速力のあるドリブルを見せた直後、右太もも裏を手で押さえて、自らプレーを止めた。そして、その場に座り込むと、タンカに乗せられ、ピッチから退くこととなった。

 試合後は、言葉少なだったが、自ら歩いて取材エリアを通っていた。それほど足を引きずる様子もなかった。おそらく肉離れだろうが、重篤なものではなさそうに見える。

 とはいえ、筋肉系のケガは試合復帰を焦れば、長引かせる恐れもあり、慎重な対応が不可欠。幸いにして、J1は10月26日にルヴァンカップ決勝が行なわれる関係で、次節まで2週間空くが、仲川が今季J1で初めて欠場となる可能性は十分にあるだろう。

 ポステコグルー監督も「仲川が出られなければ、他の選手がその穴を埋め、いつもどおりにやってくれると思う」と言いつつも、「仲川は重要な選手のひとり。大きなケガだと痛手になる」と、その存在の大きさを口にする。

 今季J1も残り5節。首位と勝ち点1差に迫り、逆転優勝をはっきりと視界にとらえた矢先だけに、”特別な選手”の負傷の具合は気になるところである。

 はたして、ケガの具合はどの程度のものなのか。そして、どのタイミングで復帰できるのだろうか。

 いずれにしても、キャリアハイのゴールを積み重ねている仲川が、横浜FMが逆転優勝を成し遂げるうえでのキーマンであることは間違いない。

Sportiva

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