MotoGPで5度の王者に輝いたマルケスに聞く強さの秘密・前編「スピンさせてプッシュし続ける」

2018年10月25日(木)22時26分 AUTOSPORT web

 MotoGP第16戦日本GPで最高峰クラス5度目のタイトルを決めたレプソル・ホンダのマルク・マルケスに、イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーがインタビューを実施。2018年シーズンも圧巻の走りで王者に輝いたマルケス。その強さの秘密は何なのだろうか?


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Q:MotoGPが共通ソフトウェアとミシュランタイヤに切り替えてから3年になるけれど、何が変わっただろう? バイクをより労って走らなければならないだろうか?


マルク・マルケス(以下マルケス):そうだね、過去3シーズンのMotoGPにおける最大の変化はミシュランタイヤだ。なぜならミシュランタイヤはバイクのバランスを完全に変えてしまった。2015年末にみんなが初めてミシュランタイヤを試した時、多くのクラッシュが起きていたよね。なぜならブリヂストンタイヤでのマシンセットアップのバランスは、ミシュランタイヤに必要なバランスとはまったく異なるものだったんだ。


ブリヂストンのフロントタイヤはとても良かったが、リヤタイヤはまったくグリップしなかった。ミシュランタイヤはその反対だ。だから、まずバイクに適応しなければならなかったし、ライディングスタイルも少し調整した。


そして、ソフトウェアの変更で何もかもが変わってしまった。ファクトリーソフトウェアのときは電子制御を完全に信用し、望むように走ることができた。速く走るために電子制御を使えたんだ。今では逆だ。電子制御を使いすぎず、自然に、スムーズに走る必要がある。電子制御に逆らわないようにね。


Q:電子制御をあまり使わずにレースをしたい?


マルケス:そうだね、僕はあまり電子制御を使わない方がいい。なぜなら、すべてのことを自分自身がよりコントロールできるからね。今僕たちが使っているソフトウェアは悪いものじゃない。だけど、高いレベルの電子制御を使って走れることもよかったよ。他のことに集中できたからね。ただアクセルを全開にしてベストを尽くすんだ。その方が簡単だったよ。

マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)


Q:ミシュランのフロントタイヤで多くのスライドを膝と肘を使ってセーブしているのを見たけれど、セーブのことについて話してくれる? 膝と肘の他にアクセルを利用したりポジションを移動したりしている?


マルケス:たくさんの人にそのことを聞かれるよ、僕のチームさえも、何をやっているんだ? ってね。これはただ僕自身に起きていることなんだ。フロントを失ったときにできることは、僕の肘を押し下げることだ。状況にもよるけれど、アクセルを開けるときもあるし、閉じて待つこともある。でも、それを理解するのはとても難しいことなんだ。


あとは、どのタイヤを使っているかにもよるね。もし、とても硬いタイヤを使っている時にフロントを失ったら僕はクラッシュする。でも柔らかいタイヤを使っている時にフロントを失ったら、僕はクラッシュをセーブできるんだ。たとえば今年のヘレス(第4戦スペインGP)。僕は午前のウォームアップとフリー走行中に3回クラッシュしたけれど、それはすごく硬いフロントタイヤを使っていたからだ。それがレース用にはベストなタイヤだった。ハードなタイヤの時にフロントを失うと、いろいろなことがあっという間に起きるんだよ。


Q:今ではブリヂストン時代よりもコーナリングスピードを使うようになった?


マルケス:そうでもない。ミシュランタイヤでは、よりリヤグリップを使っていることは間違いない。一方でブリヂストンタイヤでは、フロントグリップをより使っていた。コーナーに差しかかる時にブレーキをとても強くかけるんだ。ミシュランタイヤではそれほど強くかけず、加速する時にリヤのグリップを使う。両方のタイヤでのコーナリングスピードはとてもよく似ている。ミシュランタイヤでは、加速する時はアクセルを開けてすべてのトラクションを使うんだ。


Q:今はどのようにコーナリングをするの? ブリヂストンのフロントタイヤはコーナリングの助けになったけれど、リヤブレーキかスロットルを使うの?


マルケス:それはバイクのジオメトリーを変更することにつきる。ブリヂストンからミシュランに変わった時、多くのことを試した。ライディングスタイルを変えたし、リヤブレーキをより使うようにした。アクセルを開けるのを早めたり遅めたり。コーナリングスピードを使ったり使わなかったりもした。だけどジオメトリーを変えるまでは、今までのコーナリングは不可能だった。今ではバイクのフロント荷重をよく使う。そうするとバイクのリヤ部分がより自由になる。そのおかげで感触は良くなったけど、他のホンダライダーたちの一部は逆のことをしているかもね。とにかく、フロント荷重を持ってくることで、バイクの態勢がすぐに整い、アクセルを早く開けられている。


Q:リヤの重量を軽くすることで、どのようにバイクは曲がりやすくなるの?


マルケス:ブリヂストンタイヤでは、リヤの荷重を使っていた。なぜならコーナーの進入と立ち上がりでリヤがよりスライドしたからだ。ミシュランタイヤではそのことは忘れていい。リヤのグリップは常に素晴らしいからね。だからリヤタイヤでプッシュして、それからフロントタイヤを気にすればいいんだ。これが、レースで僕がいつもフロントに硬いタイヤを選ぶ理由のひとつだ。

「スピンさせてプッシュし続けることを好んでいる」と語るマルク・マルケス


Q:現在のトラクションコントロールはどのように感じる? 時々リヤタイヤから煙が上がっているのを目にするけれど、それはアクセルワークでやっていること?


マルケス:そう、前よりもアクセルを使うようになっている。共通ソフトウェアになる前は、スライドを止めるためにトラクションコントロールをより多く使うことができた。でも今では自分のコントロールにかかっているんだ。


だけど、ミシュランのリヤタイヤはブリヂストンのリヤタイヤとは完全に違うスピンの仕方をする。だからスピードを出すためには、ミシュランタイヤを少しスピンさせることを理解しなければならない。スピンをしてもバイクは前に押し出されるからね。でもスピンさせすぎると、煙が上がってしまう。だからトラクションコントロールなしで折り合いをつけなければならない。トラクションコントロールはあまり役に立たないんだよ。


Q:ということは、ミシュランのリヤタイヤがスピンしてもグリップして走行できるの?


マルケス:そうだよ。低い回転数からスピンし始めると、それでもタイヤはバイクを前に動かす。だから僕は低い回転数からスピンさせてプッシュし続けるのを好んでいるんだ。


【後編へ続く】


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