モウリーニョの策略を凌駕。ローマを苦しめたナポリの主将【セリエA試合分析】

2022年10月25日(火)12時0分 FOOTBALL TRIBE

ジョバンニ・ディ・ロレンツォ(左)タミー・アブラハム(右)写真:Getty Images

2022/23シーズンのセリエA第11節が10月24日(日本時間)に行われ、ローマとナポリが対戦。


後半35分に、途中出場のFWマッテオ・ポリターノからのロングパスを受けたFWビクター・オシムヘンがペナルティエリア内で右足を振り抜き、先制ゴールをゲット。この1点を守りきったナポリが1-0で勝利している。


ローマの粘り強い守備に苦しめられながらも、勝ち点3をもぎ取ったナポリ。ローマを率いるジョゼ・モウリーニョ監督がどのような対策を施し、これにナポリがどう抗ったのか。まずはこの点について言及する。




セリエA第11節、ローマvsナポリのスターティングメンバー

モウリーニョが施したナポリ対策とは


ロレンツォ・ペッレグリーニをトップ下に置く[3-4-1-2]の布陣でこの試合に臨んだローマは、ナポリのパスワークのキーマンをマンツーマン守備で捕捉。


ナポリの基本布陣は[4-1-2-3]で、中盤の底のスタニスラフ・ロボツカやインサイドハーフのタンギ・エンドンベレを起点に自陣後方からのパスワークを試みたが、前者にはペッレグリーニ、後者にはマディ・カマラが張り付き、自由を与えず。昨シーズンのリーグ戦でもモウリーニョ監督はナポリのビルドアップの起点となる選手にマンマークを割り振っており、この守備戦術を今節でも用いた。


タミー・アブラハム 写真:Getty Images

前半8分すぎには、センターサークル内でカマラがエンドンベレからボールを奪い、敵陣ゴール前までドリブル。カマラのパスを受けたタミー・アブラハムがペナルティエリア左隅から惜しいシュートを放っている。モウリーニョ監督仕込みのマンツーマン守備の効果があらわれた場面だっただけに、ローマとしては先取点に結びつけたかった。


ロボツカやエンドンベレを経由するパスワークを封じられたナポリを救ったのは、右サイドバックの主将ジョバンニ・ディ・ロレンツォ。タッチライン際だけでなく、時折ハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)近辺にポジションをとり、対面のレオナルド・スピナッツォーラに捕捉されないようにしていたほか、正確なロングパスで攻撃の起点に。前半26分すぎにはこのイタリア人DFからのロングパスが最前線のオシムヘンに繋がり、最終的にはピオトル・ジエリンスキが強烈なミドルシュートを放っている。


ナポリ DFジョバンニ・ディ・ロレンツォ 写真:Getty Images

特に前半はディ・ロレンツォに対するスピナッツォーラのプレスが緩い場面が見受けられ、故にローマはナポリの攻撃を止めきれず。ディ・ロレンツォが内側にポジションをとった際に、ローマのどの選手が対応するのかも不明瞭だった。


ナポリの先制ゴールも、もとを辿ればディ・ロレンツォが自陣後方でパスを捌き、このボールがポリターノに繋がったことで生まれたもの。ここでもローマの選手のプレッシングが遅れており、前述の問題が尾を引く形となった。


今シーズンよりナポリの主将を務めている29歳のイタリア人DFの配球力が活きた場面でもあり、同選手がローマ撃破に大きく貢献したのは確かだろう。


ナポリ FWビクター・オシムヘン 写真:Getty Images

ナポリは攻守ともに洗練されたチームに


ナポリの勝因をもう一つ挙げるとすれば、ローマに引けを取らない緻密なハイプレスだ。


ローマが自陣後方でボールを保持するやいなや、イルビング・ロサノ、オシムヘン、クビチャ・クワラツヘリアの3トップが、相手の3バック(ロジェール・イバニェス、クリス・スモーリング、ジャンルカ・マンチーニ)を目掛けてアプローチ。最終ライン付近でボールを受けようとしたローマのインサイドハーフ、ブライアン・クリスタンテにはジエリンスキが張り付き、ビルドアップの中継ポイントを封じた。


ローマの2トップ、アブラハムとニコロ・ザニオーロへのロングパスは、キム・ミンジェとファン・ジェズスの2センターバックが封殺。この2人が最終ラインの背後のスペースも危なげなくケアしたことで、ローマに付け入る隙を与えなかった。


ナポリ ルチアーノ・スパレッティ監督 写真提供:GettyImages

世界屈指のファンタジスタ、故ディエゴ・マラドーナ氏が在籍していた1986年以来となる、公式戦11連勝を達成したナポリ。


昨シーズンより指揮を執っているルチアーノ・スパレッティ監督のもとで、自陣後方からのパスワークが多彩に。ロボツカ、ジエリンスキ、エンドンベレ、アンドレ・フランク・ザンボ・アンギサらをはじめとする、基本布陣[4-1-2-3]の3セントラルMFによる流動的なポジショニングで、相手にプレッシングの的を絞らせていない。


また、今節のように彼らがマンツーマン守備に遭った場合は、サイドバックがハーフスペースに立ってビルドアップや敵陣でのパスワークを手助け。ディ・ロレンツォやマリオ・ルイがこの動きを得意としており、今やナポリの攻撃の潤滑油になっている。オシムヘン、ロサノ、クワラツヘリア、ジャコモ・ラスパドーリ、ジョバンニ・シメオネらの豪華FW陣へ確実にボールを届ける術が整えられているのが、“スパレッティ・ナポリ”の特長だ。


今シーズンのセリエAでスタートダッシュに成功し、首位の座をキープ。UEFAチャンピオンズリーグの決勝ラウンド進出も確定させた南イタリアの名門が、何か偉業を成し遂げるかもしれない。

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