U-19日本、GKチームの特別な絆。谷・大迫・若原、3人の逸材が紡ぐ最高のライバル関係

10月25日(木)13時41分 フットボールチャンネル

大迫と若原、そこに加わった谷

 U-19日本代表には3人のGKがいる。この世代をけん引してきた大迫敬介と若原智哉、さらに1つ下の世代から競争に加わり、正守護神の座に躍り出た谷晃生である。ピッチ上に1つしかないポジションを争う、ただでさえ難しい競争の中にありながら、3人が良好な関係を保てている要因に迫った。(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

——–

 サッカーは11人で戦うスポーツだが、GKのポジションはチーム内に1つしかなく、最も動かしにくい役割である。

 ひとたび正守護神が定まってしまえば、負傷や出場停止などのアクシデントがない限り、なかなか控えGKにチャンスが回ってくることはない。だからこそ節目でのポジション争いは熾烈で、その競争によって関係性がギクシャクしがちな側面もある。

 もちろんGKの競争はクラブレベルだけでなく、国を背負って戦う代表チームにも例外なく存在する。その国のトップクラスのGKが集まる場所だけに、代表でのポジション争いがより激しいものになることも珍しくない。

 もっと踏み込めば、よく「一体感をもって」と選手たちは言うが、本当の意味で一枚岩になれるチームはそれほど多くない。入れ替わりが多くどこかでチャンスが巡ってくる可能性が高いフィールドプレーヤーではなく、固定されがちなGKのアンバランスさが、「一体感」を損ねる原因の1つになることだってあるのだ。

 とはいえ日本では、いわゆる「GKチーム」が良好な関係性を保ちながらチームに貢献しているケースも多々見られる。現在、インドネシアでAFC U-19選手権に参戦しているU-19日本代表も、GKの3人は互いを高め合うポジティブな関係性を作り上げている。

 もともとこのチームでは1999年生まれの大迫敬介と若原智哉が、ハイレベルな競争を展開してきた。公式戦であろうとも、2人のどちらが起用されるか最後までわからず、サンフレッチェ広島と京都サンガF.C.の若手守護神が世代をけん引してきたのは間違いない。

 そこに今年になって、下の世代から強力なライバルが現れた。2000年生まれで、昨年のU-17ワールドカップにも出場した谷晃生である。ユース卒業を前にしてガンバ大阪とプロ契約を結び、今季は同クラブのU-23チームの一員としてJ3の14試合に出場している期待の守護神だ。

 今年3月のインドネシア遠征からU-19代表に加わった谷は、影山雅永監督からの信頼を獲得し、わずか半年で年上の2人からポジションを奪った。

「サコ(大迫)と(若原)智哉がいることはずっと知っていましたし、そこと争っていくとずっと自分でも感じていたので、すごくレベルが高い中でも、やっぱり年下だからというところを感じさせないようにしないと監督も使ってくれないだろうなと思っています。そういうところで自分がこのチームのリーダーとしてやっていくという意識を持ってやってきました」

サポートに徹する先輩2人の献身性

 来月18歳になる若き守護神は、追いつけ追い越せの精神でU-19代表の競争に乗り込んで、ポテンシャルの高さを示した。「もちろん自分が後から入ってきて、(大迫と若原には)本当に悔しいというところはあると思う」とも語るが、「しっかりといいサポートをしてもらったなら、(自分が出ない時には)それをするべきですし、自分が出るなら最高のパフォーマンスをするだけ。そこは変わらずやっていきたい」と先輩2人から受ける全身全霊のサポートへの感謝をピッチで表現しようとしている。

 では、ポジションを奪われる形になった大迫や若原は、現状をどう捉えているのだろうか。

 U-16代表の頃から今のU-19世代のトップを走り続けてきた大迫は、「お互いみんな尊敬しあいながら意見を出し合う、すごくいい関係だと思う」とGKチームの連帯を実感している。ピッチに立てばたった1つのポジションを争うライバルだが、ピッチ外では試合映像を見ながらGK3人で反省会をすることもあるという。

 もちろん大迫も「2試合は谷が出ていますけど、その2試合も自分自身もスタメンでもしっかりできるように準備はしてきましたし、絶対何らかのアクシデントがあっても大丈夫な準備をしてきたつもり」と、試合出場への意欲を失ったわけではない。

「いつでも最高のパフォーマンスを出し、常に自分に出番がきてもいい準備を続けながら、自分が仮に出られなくてもチームのためにというのを考えながら、チーム1つになって、試合を進めていければいいかなと思います」

 勝ち続けるために、大迫はチームスピリットを持ち続けている。それは若原にとっても同じことのようだ。J2の京都で今季のリーグ戦12試合に出場している期待のホープも、もちろん「直前キャンプまでは自分が出たいからというのでやっていた」。

 しかし「(谷)晃生が出ると決まったら、やっぱり自分の役割はそれをサポートすることとハッキリしているので、そこはブレずに。そこでもし僕やサコ(大迫)が嫌な雰囲気を出していたら、晃生も試合でやりにくいだろうし、明るく送ってあげたらいいプレーができると思う。それを続けていきたい」と、ベンチスタートならあくまでサポートに徹する姿勢だ。

「U-20ワールドカップにこの3人で行きたい」(若原)

 そうやってチームメイトをサポートすることの重要性は、自らがクラブで試合に出続けることで学んだことでもある。「僕は試合に出させていただいて、自分自身も結構手ごたえがあったんですけど、その中で逆に僕が出ている時に、清水さん(清水圭介)が出られなくて、そういったところでの清水さんの振る舞いをちゃんと見ていて、それが今、このチームで生かされている」と若原は言う。

「清水さんは一切暗い顔とかせずに、試合前のハイタッチの時でも明るく振舞ってくれて、自分自身がとてもプレーしやすい環境を作ってくれたので。練習の時も色々アドバイスしてくださったり、自分が聞いたら答えてくれるので、そういったいい雰囲気を清水さんが作ってくれているんです」

 試合に出たら最高のパフォーマンスを発揮できるよう万全の準備を整えるのは当たり前。先発GKのアクシデントで突然出番がやってくるかもしれないし、調子を落とした選手がいれば、正守護神の交代の可能性だってある。試合に出ているGKをサポートすることも、練習で毎日全力を尽くすことも、必ずその先にあるピッチの上でのパフォーマンスに繋がってくる。U-19日本代表のGKチームは、それを理解したうえで互いを高め合っている。

 日本はグループリーグ首位突破を決め、25日のイラク戦を終えた後、準々決勝のインドネシア戦に勝利すれば来年のU-20ワールドカップ出場権を獲得できる。そこが今大会最大の山場であり、最も重要な試合になり、世界への切符を勝ち取ればアジア制覇への道も大きく開かれる。ただ、谷、大迫、若原のうち誰がその大一番のピッチに立つかは、まだ決まっていない。

「誰が出ても優勝できたら、GKチームにとって全員が嬉しいと思います。今はまだ無失点がないので、ここからずっと無失点を続けていけたらGK陣にとっても自信になると思う。そしてU-20ワールドカップ出場を決めて、ワールドカップにこの3人で行きたい。3人、そしてノリさん含めて4人でこの大会の優勝を達成できたらいいなと思います」(若原)

 日本が世界の舞台に立つ、そして勝つ。そのためにはGKの成長が不可欠だ。U-20ワールドカップ出場権獲得を目指しながら、谷、大迫、若原のGKチームは、互いをリスペクトし合いながら団結力を日に日に深めている。でも、ただの仲良しではない。谷にポジションを奪われる形となった2人とて悔しくないはずがない。だからこそ成り立つ最高のライバル関係が、未来の日本代表を強くする。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

フットボールチャンネル

「ライバル」をもっと詳しく

「ライバル」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ