U-19日本、山田康太が描いたゴールへの道筋。成長を体現、競争力高めW杯かけた大一番へ

10月27日(土)12時29分 フットボールチャンネル

理想的なグループリーグ突破の形

 U-19日本代表はインドネシアでAFC U-19選手権に参戦している。28日は来年ポーランドで開催されるU-20ワールドカップ出場権のかかった準々決勝のインドネシア戦。その大一番に向けて、チーム内の競争力は高まり続ける。鍵になったのはグループリーグ最終戦の選手起用だった。(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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 U-19日本代表が世界の舞台まであと一歩のところまできた。25日に行われたAFC U-19選手権のグループリーグ最終戦でイラクに5-0の圧勝を収め、グループBの首位で決勝トーナメント進出を決めている。

 3失点を喫しているものの、攻撃陣がしっかりと結果を出して13得点。これは出場全チーム中最多で、8選手がゴールを記録している。例えばグループリーグ3試合で11得点を奪ったカタールはアブドゥルラシード・ウマルが5得点、ハシム・アリが4得点と、2人の力に頼っているのがわかる。一方で日本はどの選手でも、どこからでもゴールできる力を示している。

 チームの好調を維持しながらターンオーバーを敷けたことも決勝トーナメントに向けて追い風になるだろう。日本のフィールドプレーヤーは全選手がグループリーグ3試合のいずれかで先発起用され、出場時間も90分から180分の間でコントロールされている。

「突出した10人がいて、それ以外と差があるという集団ではないんです。それぞれに個性を持っていて、いろいろな組み合わせによって違う色が生み出される」という影山雅永監督の言葉通り、3試合ともメンバーを入れ替えても大きな問題は起きなかった。さらに試合展開の中で4バックと3バックを使い分け、決勝トーナメントを見据えながら戦えたことも大きい。

 そんな中、すでに決勝トーナメント進出が決まった状況で迎えた25日のイラク戦は、これまで出場機会の少なかったメンバーが数多く先発起用された。GK大迫敬介、DF小林友希、DF荻原拓也、MF山田康太、MF滝裕太、FW原大智の6人が今大会初先発で勝利に貢献している。

 彼らのプレーには影山監督も「いろいろな複雑な胸中があったと思うんですよ。チーム全体としてはいい雰囲気で勝ちながら進んでいくと言いながら、やっぱりそれ(悔しい思い)を個人個人で押し殺しながら『いつか見てろ』と、そういう『この野郎』的なそういう気持ちがなかったら嘘ですよね。それを殺しながら、この時のために堪えて、チームのために献身的にやってくれているのは素晴らしいことだと思います」と目を細めていた。

「数字」に残らないパスが意味するもの

 滝と原がゴールを奪えば、荻原は2アシスト。小林と大迫も手堅い守りで今大会初の無失点を実現させた。そして初先発組で唯一「数字」に直接関与していないながら、大きな貢献を果たしていたのが山田だった。

 初戦の北朝鮮戦の前日、山田は「しっかりした大会は個人的にも初めてですけど、チーム全員で誰が出てもいいサッカーができる自信はある」と意気込んでいたが、やはり今大会初出場となったグループリーグ第2戦のタイ戦の後半は中盤でのバランスを見出すのに時間を要した。

 しかし、初先発となったグループリーグ最終戦のイラク戦は攻守に出色の働きを見せた。ボランチでコンビを組んだ藤本寛也も「お互いにバランスを取れる選手で、そんなに気にすることはなかった」と語るほど、山田との連係はスムーズだった。

 そして先制点と2点目の起点となるパスは、まさにチームの狙いを体現したもの。「ボールを奪った後、相手のバランスがルーズになるというのは聞いていたので、奪った後はしっかり前にパスをつけようというのは意識していた」と要求通りのプレーで結果につなげた。

 序盤の10分、山田は右に流れる原の裏のスペースにゆるやかな浮き球のボールを送る。パスをコントロールした原は敵陣ペナルティエリア右角付近で時間を作り、寄ってきた久保建英にボールを渡す。最後はドリブルでペナルティエリア深くまで侵入した久保の折り返しを、逆サイドから走りこんだ滝がヒールキックでゴールに押し込んだ。

 この場面で山田は原にパスを通したあと、スプリントをかけてゴール前まで入り込み、ニアサイドで「タケ! タケ!」と久保にボールを要求している声がスタンドからも聞こえた。山田は「感覚的なもの」を共有するチームメイトを信じて走ったその局面を「タケが1点目、滝にアシストしたやつ、自分にくれってめっちゃ言っていたんですけど、あとで『ごめん』って」と振り返る。

指揮官の狙い通りだった崩しの形

 中盤で怖がらずにボールを受けて有効なスペースや人にパスを預け、さらに動き直して空いたスペースに走り込み、相手の陣形を崩しながらゴールに近づいていく。これはまさに今季の横浜F・マリノスで山田ら中盤の選手に求められていた動きの1つ。

 U-19代表でもイラクのDFが2人目、3人目が連動するプレーについていけないことがスカウティングの時点で判明し、チームに共有されていた。何気ないパスとゴール前への走り込みだったかもしれないが、今季の積み上げと成長、試合の中での戦術理解とが合わさった決定的なプレーだった。

「スプリントを入れて、(パスを)出した後は自分もしっかりああやってゴール前に入れているのは収穫かなと思います」と山田自身も手応えを感じている。

 田川亨介のゴールにつながった場面で、左サイドバックの萩原を走らせた起点のパスも、「球際はすごくくるんですけど、2人目の動きとか、背後にサイドバックが出てくるところに、こういう相手はルーズになるので、そういうのはチャンス」と対人能力の高い相手DFの癖を逆手にとったもの。細かな連動が効かない相手守備陣の間隙を縫うプレーが冴えた。

 これらのプレーがチーム戦術の一部に組み込まれていたというのは、指揮官の言葉で裏づけられる。イラク戦に向けて「サイドバックのビルドアップや、サイドハーフが持った時にどう関係性を作るか」という部分の向上を感じていた影山監督は、「イラクには人に強いDF、そしてアクションを起こした選手にしっかりついてくるDFがいたので、そこにできたスペースをうまく使っていこう」という狙いを選手たちに伝えていた。

 爽やかな好青年の印象が強い山田は、守備でも体を張ることをいとわなかった。「アジア予選は自分たちのバランスをあまり崩してはいけない大会」と、藤本とともに守りにも意識を割く。もともと攻撃的なプレーを好むテクニシャンだが、セカンドボールの回収などにも精を出した。

「もし出番が少なくても、腐るのは絶対に違う」(山田)

 もちろん課題もある。前半の終わり際にはボランチが2人とも立ち位置を後ろにとりすぎてしまい、チーム全体の重心が下がってしまった。山田自身も大事な場面でシュートを決められず、なかなかボールに絡めない時間帯もあった。

 出番が得られない試合があっても、上手くいかないプレーがあっても、折れずに結果を出すことに対してフォーカスできたのには、「必ずU-20ワールドカップの出場権を獲得しなければいけないと思っていますし、この大会に来たくても来られなかった選手がいるので、自分がもし出場機会が少なかったとしても、腐るのは絶対に違うと思う。100%の準備をして、チームの優勝に貢献できるように頑張りたい」という山田なりの信念があったから。

 他の選手たちも大なり小なり同じような思いを胸に秘めているはず。滝や萩原、原、大迫といったイラク戦で出番を得て躍動した選手たちのプレーからは、チームのために貢献するだけでなく、これまでの悔しさをボールにぶつけるような闘争心が感じられた。

 彼らに触発されたか、翌日の練習ではイラク戦でベンチに回った選手たちの振る舞いからもメラメラと燃えるものを感じた。北朝鮮戦、タイ戦こそチームの中心として戦ってきた者たちも踏ん反り返ってはいられず、世界への切符をかけた大一番に誰が出場するのかは現状全くわからない。

 チームの戦術浸透や一体感、競争力を高めることができたイラク戦での収穫は大きい。U-20ワールドカップまであと1つ。完全アウェイのインドネシア戦、そこに全員が持てる力の全てを注ぐ。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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