阪神ドラフト5位・村上頌樹は桑田真澄の再来!? 勝てる投手「お得な指名」の系譜

10月27日(火)12時4分 REAL SPORTS

26日にプロ野球ドラフト会議が行われ、東洋大の村上頌樹投手が阪神タイガースの5位指名を受けた。智辯学園高校時代には甲子園優勝を経験し、大学でも3年時に圧巻の結果を出した逸材だ。ではなぜ彼は5位指名だったのか? 今ドラフトの大卒1位指名投手と比較することで、過小評価を生みやすいある法則が見えてきた。

(文=大島和人、写真=KyodoNews)

今年ブレイクした早川隆久。とにかく勝てる投手・村上頌樹

26日のプロ野球ドラフト会議で、思わず唸った指名があった。それは阪神タイガースによる村上頌樹投手(東洋大)の5位指名だ。

その1時間半前には、早川隆久投手(早稲田大)に4球団の1位指名が集中していた。早川は常時150キロ台の速球と制球力、優れた変化球を兼ね備えた左腕。その高評価は当然で、筆者も彼が今ドラフトのベストピッチャーだと考える。

早川は木更津総合高時代から評価が高く、大学入学後に球速アップも見せていた。ただし3年の秋季リーグ戦が終了した時点で東京六大学の通算成績は7勝12敗。つまり「実績」が伴っていなかった。
しかし大学4年で急成長を見せ、一気に評価を上げた。新型コロナウイルスの影響で順延された8月の春季リーグ戦、9月に開幕した秋季リーグ戦の「ブレイク」がなければ、1位指名もなかっただろう。
巨人の1位指名を受けた平内龍太投手(亜細亜大)もケガ明けで4年秋の最終シーズンにぎりぎりで間に合い、評価を戻した人材だ。

3年までの実績を見れば、彼らより村上のほうが上だ。村上はまず智辯学園高3年の春に第88回選抜高等学校野球大会を制した甲子園優勝投手。東洋大入学後も1年春から登板機会を得て、3年までに12勝3敗という成績を残した。
特に「ドラ1トリオ」が卒業した3年時はエースとしてフル回転。春季リーグ戦で6勝0敗、防御率0.77という圧巻の結果を出した。東京六大学と並び大学野球のトップに位置する東都大学野球で、この数字は強烈だ。

村上は速球の最速こそ149キロ止まりだが、回転数が多く「伸びる」タイプ。加えて素晴らしいスライダー、チェンジアップ、カーブを持ち、何より制球が抜群だ。開きを抑え、いわゆる「溜め」をしっかり作れる実戦的フォームも持っている。174センチの体格こそ平凡だが、とにかく勝てる投手という印象だ。

2020年春段階では「村上は1位か2位で消える」という予想

もちろんドラフトの指名順位は現在でなく未来の評価で、当然ながら伸びしろが大きく加味される。平内や入江大生(明治大/DeNA1位)のような180センチ台後半の体格、150キロ超の速球といったスペックがあれば上位指名は得やすい。対する村上は完成度の高い実戦派タイプで、化けるイメージが湧きにくいのかもしれない。ただ、そうだとしても2020年春の段階では「村上は1位か2位で消える」という予想が一般的だったはずだ。

しかし今年9月22日の秋季リーグ開幕戦で、村上は不安を感じさせる投球を見せた。神宮球場のスピードガンに表示される球速が、なかなか140キロ台に達しない。4回1失点で早々に降板し、チームからは右前腕肉離れと発表があった。そしてそこから1カ月に渡ってリーグ戦の登板を回避している。つまりケガやコンディションへの懸念が、評価低下の一因だろう。

ケガやコンディションはセンシティブ情報だし、プロ野球のスカウトたちが報道以上の情報をつかんでいた可能性もある。一方で過去の事例を見ると「大学4年で負傷に苦しんだ投手」「大学4年で評価を落とした投手」は意外に“当たり”が多い。

「小さな大投手」も大学4年次の秋季リーグ戦を全休している

中日ドラゴンズの大野雄大は今シーズン既に10勝を挙げ、防御率首位に立つ32歳の左腕。彼は左肩痛により、佛教大4年の秋季リーグ戦に1試合も登板していない。中日は少し評価が落ちた彼を一本釣りで獲得した。斎藤佑樹、大石達也、澤村拓一と大学生投手に逸材が揃っていた2010年のドラフト1位で、大野は今のところ最大の成功者となっている。

昨年までの18シーズンで通算171勝を記録している「小さな大投手」東京ヤクルトスワローズの石川雅規も、青山学院大の4年次は左肘の痛みで秋季リーグ戦を全休している。もちろん石川は4年春までに通算23勝8敗の成績を残していた。当時は自由獲得枠があり、ヤクルトの内定を先に得て無理をする必要がなかった背景もある。ただ石川はすぐ持ち直してプロ1年目から12勝を挙げ、新人王に輝いた。

福岡ソフトバンクホークスも、そういう投手の獲得がうまい。高橋礼は専修大2年のリーグ戦で台頭したものの3年、4年と大きく成績を落とした。しかしソフトバンクは2017年のドラフトで彼を2位指名し、髙橋はプロ2年目で新人王を獲得した。
大竹耕太郎も早稲田大2年までに東京六大学で9勝を挙げたにもかかわらず、3年以後は2勝にとどまった投手。ソフトバンクはその彼を育成ドラフト4位で指名し、大竹はプロ2年目の2018年、3年目の2019年とチームの日本シリーズ制覇に貢献した。
津森宥紀も東北福祉大4年のリーグ戦、全国大会とかなり不安の残る内容を見せていたが、プロでは1年目の今シーズンから出番を得ている。

一時的に評価を落としている選手は「お得な選択」

もちろんプロのスカウトはコンディションに加えて技術的な修正ポイントを見抜き、「ここを直せば良くなる」という判断もしていたはずだ。プロ入り後の環境や取り組みも当然ながら重要だろう。とはいえ採用の成否は球団のその後を大きく左右する。

高校野球とプロはレベル差が大きく、高校で伸び悩んだ選手の獲得はリスクが大きい。過去に中学生年代や高校下級生時の実績を評価して指名された選手はいるが、結果はあまり伴っていない。

一方で大学野球は高校に比べてレベルが高く、東京六大学や東都のような名門リーグならばプロの二軍レベルですぐ通用する人材がザラにいる。また20歳を過ぎたアスリートは右肩上がりの成長が難しくなり、ある種の停滞に入る局面もある。技術的な試行錯誤、コンディションの変化などで「波」が生まれやすい。

大学4年の秋季リーグ戦はドラフト直前で、そこの結果や内容はどうしてもプロの評価を大きく左右する。一方でそこに一番高い波の来た選手が過大に評価され、たまたま波の下がった選手が過小評価される印象も受ける。大学3年までに「兆し」を見せた投手なら、4年で一時的に崩れても評価していい。それが過去のドラフトを見た率直な感想だ。

もちろん故障は選手をスポイルするマイナス要素だが、大野や石川のような好投手は大学時代のブランクを経てプロで大成した。トミー・ジョン手術(肘の靱帯再建手術)からのリハビリ期間中ながら巨人に指名された山崎伊織(東海大)もそうだが、ケガやコンディションの低下で一時的に評価を落としている選手は、中長期的に見るとお得な選択となり得る。

今は医療やコンディショニングも発達していて、「不治の負傷」はまずない。トミー・ジョン手術から元のレベルに復帰するまでは18カ月程度がメドとされるが、プロで長くプレーできるポテンシャルを持つ選手ならば、それくらいのブランクは見過ごしてもいい。

村上は今年の大学4年生投手の中でも、屈指の能力を持つ人材だ。巨人で活躍した桑田真澄のように「体格以外」の要素を高レベルで兼ね備えた右腕だ。そんな人材の5位での指名権獲得を阪神のファンは喜んでいい。右腕・左腕の違いはあるが大野雄大や石川雅規、大竹耕太郎のような「プロでの復活劇」に期待したい。

<了>

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