日本の背番号10・安部裕葵が示す鹿島での“質と経験” 日の丸の誇りと共に決戦へ/AFC U-19選手権

2018年10月27日(土)21時8分 サッカーキング

タイ戦では2アシストだった安部 [写真]=佐藤博之

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 格の違いを見せていると言ってしまうと、さすがに少し言い過ぎかもしれない。ただ、そんな言い方をしてしまいたくなるほど、U−19日本代表MF安部裕葵(鹿島アントラーズ)の見せているパフォーマンスの質は高い。

 AFC U−19選手権の初戦となったU−19北朝鮮代表との試合で登場早々に鮮烈なゴールを突き刺すと、U−19タイ代表との第2戦では2つのアシストを記録して試合を動かしてみせた。そうした「数字」に見える活躍だけではなく、ハードワークして戦う部分でも存在感を見せ、苦しくなった時間帯で見せる簡単に奪われないプレー一つでもチームに貢献してみせた。

 実を言えば、開幕するまで安部はチームの不安要素だった。ルーキーイヤーから鹿島で出場機会を掴んで活躍を見せたその実力に疑問の余地はないものの、国内合宿では専ら別メニュー調整。AFCチャンピオンズリーグにも出場した連戦の中で肉体的なダメージから痛みも残っており、スタッフの判断もあって初戦の先発も見送られることとなっていたからだ。

 戻ってこられたとして、日本の10番は果たしてどのくらいの状態なのか?

 そんなドキドキを外野に与えていたのだが、結果としてこれは完全に杞憂だった。堂々たるプレーぶりで日本を引っ張り、ある種の安心感と安定感をもチームにもたらす存在になっている。すでに前売りで5万5千人分のチケットが売れているという準々決勝に向けても、この男がキーマンであることに疑問はない。

 この試合における最大の脅威は、大観衆から与えられるプレッシャーだが、それだけに「自分はメンタルが乱れるということがないので」と言う安部の存在は頼もしい。

「メンタルゲームになったときには自信がありますし、僕個人的にもメンタルの乱れがないのが強みですし、それを他の選手へ伝染させられるようなそういう立ち居振る舞いだったりは意識しています」

 第1戦が終わったときにも、そう言ってのけていたメンタルコントロールの力は19歳のそれではない。

 常々「周りにいい影響を与えられる選手でいたい」と語っているが、この試合に向けても「自分はうまくいかなくても動揺することとかはないと思う。もしかしたらそういう選手も出てくるかもしれないけれど、そういうのもカバーできるくらいやれればいい」と言う。

 また、年代別日本代表として臨む大きな国際大会は初めての経験だが、鹿島で出場したAFCチャンピオンズリーグの経験が生きている面もある。

「間違いなく(ACLの経験は)生きていると思います。やっぱりまず相手のことを知らないので、その中でやるとJリーグとは違うメンタルの状況になる。試合の雰囲気というか、そういうものを始まってから掴む必要がある。時間のかかる選手は、そうやって試合の雰囲気を掴むまでにかかるけれど、僕は鹿島アントラ−ズというチームで経験させてもらっているので、誰よりも早くそういう雰囲気を感じ取ってチームに伝えたりできると思うし、そういうのが大事になる」

 アジアのサッカーは「別のスポーツみたい」(安部)な一面もあり、難しさがあることは分かっている。ただ、そこにネガティブになることもない。当然、大観衆で埋まる完全アウェイのスタジアムに怯むこともなく、「スポーツ選手ですから、それをエネルギーに変えるくらいじゃないと」と笑って言ってのける。

 ここまでの仕事は背番号10にふさわしいもの。そして「番号にこだわりはないけれど」と前置きした上で言った次の言葉が現実のものになれば、自ずと日本の世界切符は見えてくるだろう。

「日の丸を背負うことに誇りを感じていますし、10番というのは偉大な先輩方が付けてきた背番号。その先輩たちに負けないように、それ以上に10番というものの大きさを、僕自身がこの大会でより大きいものにすることが理想です」

 決戦は10月28日。地元インドネシアを破り、世界への扉を開くのみ。

取材・文=川端暁彦

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