鍵は柳田と梶谷の起用法? 日本シリーズ「ホークス対DeNA」徹底分析

10月28日(土)17時14分 フルカウント

ホークス「王道野球」、DeNA「深慮遠謀」

 質実剛健の強さで2年ぶりにパ・リーグ王座に返り咲いた福岡ソフトバンクと、クライマックスシリーズを勝ち上がった横浜DeNA。今年の日本シリーズは、前身の球団を含めて初の顔合わせとなった。勝敗の行方を左右する流れや勢いは理屈で表し切れるものではない。引き分けがなければ最大7試合4戦先勝の戦いで、チーム、個人ともにシーズン成績の示す傾向が必ずしも顔を出すとは限らないことは、過去67回の歴史が証明している。それでも、これまでの戦いの蓄積から読み取れる情報とその比較は、やはりシリーズの勝敗を占う上で欠かすことができない。

【投手力、守備力で優位の福岡ソフトバンクと、失点を防ぐための工夫が必要な横浜DeNA】

 両チームの大まかな強さを把握するために、まずはシーズン中の1試合あたりの得点、失点を比較したい。福岡ソフトバンクは4.46/3.38、横浜DeNAは4.17/4.18で、リーグ1位と3位のチームの力量差が見て取れる。得点力に大差はないが、失点の数をリーグ最少の483にとどめた福岡ソフトバンクに対し、横浜DeNAは598点を取られた。

 一見、福岡ソフトバンクが大きなアドバンテージを握っているように映る。だが、先発の防御率3.46は横浜DeNAの3.76とさほど変わりがない。「何が起こるか分からない」短期決戦では、いかに「計算」の立つ要素を増やしていくかが重要となる。その点で、今シリーズは奪三振率の高い先発投手が多いことに注目したい。投手が三振を奪えば、何も起こらない可能性が高いからだ。

 福岡ソフトバンクのバンデンハーク投手は奪三振率9.53、千賀滉大投手は9.50のハイレベル。今季はともに2桁奪三振を5度記録するなど、はまった時は打者を圧倒する投球が期待できる。対する横浜DeNAは、ルーキーの濱口遥大投手が規定投球回未満ながらリーグベストに相当する9.90をマークした。石田健大投手は8.75、今永昇太投手も8.51と高い数値を記録している。クライマックスシリーズファイナルステージで横浜DeNAに敗れた広島の先発陣では、奪三振率がリーグ平均を上回っていたのは薮田和樹投手だけだった。

 投手の仕事は三振を奪うことではないが、その数が多ければ味方の守備機会を減らすことにもつながる。今季の福岡ソフトバンクは投手陣全体でリーグトップの奪三振率8.49をマークした。そのためグラウンドに打球が飛ぶ回数も少なく、5281守備機会は両リーグ最少で、1試合平均36.9守備機会はリーグ史上6番目に少ない数字となっている。シーズン最少タイとなる38失策での記録樹立には、味方の守備機会を減らしたピッチングスタッフの投球が一役買った。横浜DeNAの66失策も少なく、失策の多寡で守備力は測り切れないが、バックの安定感でも福岡ソフトバンクに軍配が上がるだろう。

 奪三振と言えば、打者238人と相対して、その半分近くの102三振を奪ったサファテ投手だが、クローザー対決では横浜DeNAの山崎康晃投手の実力もそん色ない。となれば、いかに最終回までリードを保つかも重要になりそうだが、福岡ソフトバンクの救援防御率2.78に対して、横浜DeNAは3.90と先発を下回る数字だった。先取点を挙げた試合は福岡ソフトバンクが73勝9敗(勝率.890)で、横浜DeNAは54勝20敗(.740)でしかない。ラミレス監督がその点を留意していたことは、クライマックスシリーズファイナルステージでの采配からも見受けられる。

 シーズンの戦い方から日本シリーズでの試合展開を予想すると、後半に進むほど主導権を握るのは福岡ソフトバンクになりそうだ。また、シリーズが長引いて第6戦、第7戦まで突入すれば、これは「短期決戦」ではない。そうなると、横浜DeNAはクライマックスシリーズで8試合を消化しており、疲労によるパフォーマンスへの影響も懸念される。手数が足りなくなれば、クライマックスシリーズファイナルステージで見せたように総力戦で挑む展開も想定しているはずだ。

クリーンアップはほぼ互角

【クリーンアップの打力はほぼ互角で、鍵は柳田と梶谷の起用法か】

 打線の得点力については、打率よりも相関関係の高い長打率と出塁率を軸に比較したい。福岡ソフトバンクはチーム長打率.421/出塁率.331で、横浜DeNAは.391/.311と打力に差はあるが、DH制の有無を考慮すると総得点数638/597ほどの差はないものと考えていいかもしれない。

 まず、得点を叩き出す機会の多いクリーンアップを見ると、両チームの3〜5番の打撃成績は長打率、出塁率ともに同じような数値が並ぶ。中軸に起用されることが多かった選手はタイプも似通っている。柳田悠岐選手と筒香嘉智選手はパワーと選球眼を備え、内川聖一選手と宮崎敏郎選手は首位打者を獲得するほど打撃技術が高く、デスパイネ選手とロペス選手は来日以降に多くの長打を積み重ねながら安定した打率も残してきた。打線のボディは甲乙つけがたい。

 ならばテーブルセッターコンビの働きが重要になりそうだが、両チームの1、2番の出塁率もほぼ同等。違っているのは2番打者に求められる役割だ。福岡ソフトバンクは58犠打を記録しているが、横浜DeNAは20犠打のみ。福岡ソフトバンクのほとんどの試合で2番を任された今宮健太選手は、年々長打の数を増やしているが、それでも必要な場面では1アウトを犠牲にして走者を進める。一方、横浜DeNAはチーム最多の59試合で2番を務めた梶谷隆幸選手は送りバントがひとつもなかった。

 そもそも横浜DeNAはチーム全体でも両リーグ最少の84犠打で、福岡ソフトバンクが記録した156犠打の半分ほどでしかない。成功率も75.9%と低く、投手の送りバントを除けば57犠打だけだった。1点が欲しい場面の多かったクライマックスシリーズ8試合でも5つのみ。先述したように、福岡ソフトバンクは少ないリードを守り切れるが、横浜DeNAは救援投手が心許なく、なるべく畳みかけて多くの得点を奪いたいところだ。そう考えると両軍の打線は、それぞれのチーム事情を反映したスタイルだと言えるのではないだろうか。

 盗塁の数と成功率は福岡ソフトバンクが73/60.8%で、横浜DeNAは39/68.4%。横浜DeNAで盗塁を記録したのは7人のみと、こちらも積極的ではない。攻撃についてはあまり小技を用いないチームだが、日本シリーズで仕掛けは見られるだろうか。

注目される采配は…

【いつもどおりの強さを見せたい工藤監督と、采配で違いを作り出したいラミレス監督】

 2チームのシーズン得失点差は福岡ソフトバンクが+155で、横浜DeNAが-1。143試合を戦えばリーグ1位と3位の差はしっかりと表れるだろうが、最長7試合で終える日本シリーズにはシーズン中と異なる戦い方も存在する。戦力充実の福岡ソフトバンクに対して、横浜DeNAのラミレス監督はクライマックスシリーズファイナルステージで見せたように、必要とあらば先発投手をリリーフのマウンドに送り出し、矢継早の継投策も見られるかもしれない。

 サウスポーの多い横浜DeNA投手陣が、左腕に強い福岡ソフトバンク打線をどう攻略しにかかるかもひとつのポイントになる。今季は対右と対左で打率.256/.268、長打率.409/.464、出塁率.328/.344と、サウスポーは鷹の格好の獲物だった。勝負所では特に、ラミレス監督とバッテリーは間違えを許されない。

 野手では柳田選手と梶谷選手の起用法に注目したい。福岡ソフトバンクは1番打者の出塁率.325がチーム平均を下回っていた。クライマックスシリーズファイナルステージ第5戦でリードオフとして復帰した柳田選手は今季、リーグトップの出塁率.426を記録している。もし、トップバッターとしての起用で柳田選手がシーズンと同様に活躍できれば、チームの弱点は一気に強みへと変わる。その場合、中軸の迫力は薄れるが、他球団であればクリーンアップを任されても不思議ではない松田宣浩選手や中村晃選手が繰り上がることになりそうだ。弱点の解消か、中軸の厚みか。工藤公康監督も決断を迫られている。

 梶谷選手はシーズン中に打順が定まらず、クライマックスシリーズでも相手投手との相性や他の打者との兼ね合いもあって、2番が6試合、6番が2試合と打順が固定されなかった。横浜DeNAの2番に梶谷選手が入ると長打率.374が.468まで上昇する。なるべく「大量得点差」で「先行逃げ切り」を図りたい横浜DeNAにとって、上位打線の得点力増はミソだ。

「普段着の野球」を心掛けたい福岡ソフトバンクに対して、「持たざるチームの戦い方」を心得ているのが横浜DeNAだ。両軍を率いる監督の現役時代の対戦成績は55打数14安打、打率.255、1本塁打。開戦前日の監督会見では、ラミレス監督が工藤監督の予告先発案を拒否して、細工は流々であることを匂わせた。(「パ・リーグ インサイト」藤原彬)



(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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