南ア監督の作戦がズバリ。日本でプレーしたポラードが成長を見せた

10月28日(月)18時0分 Sportiva

 最後まで互いのプライドがぶつかりあった激闘の趨勢(すうせい)を決めたのは、フィジカル強国が誇るFWの推進力と、常に冷静さを保った司令塔の右足だった——。

 10月27日、神奈川・横浜国際総合競技場にてラグビーワールドカップ準決勝の2試合目が行なわれた。舞台に駒を進めたのは、過去2度優勝の「スプリングボクス」南アフリカ代表と、初の決勝進出を目指す「レッドドラゴンズ」ウェールズ代表。過去の対戦成績は南アフリカ代表が28勝6敗1分と大きく勝ち越しているものの、この4年間は欧州王者ウェールズ代表が4連勝中と勢いに乗っている。


この試合の最優秀選手賞に選ばれたSOハンドレ・ポラード

 両チームとも強固なディフェンスがウリで、南アフリカ代表はSO(スタンドオフ)ハンドレ・ポラード、ウェールズ代表はSOダン・ビガーという優秀なキッカーを擁している。「ともに似たようなプレースタイル」(ポラード)なだけに、戦前から接戦が予想された。

 序盤はやはり、両チームともキックを軸に展開。互いがPG(ペナルティゴール)を決めて得点を積み重ねていく。前半はそんなヒリヒリとした状況が続き、南アフリカ代表が9−6で折り返した。

 だが、後半早々にウェールズ代表が9−9の同点に追いついた後、試合は大きく動く。後半16分、「相手の隙を見つけた」というポラードがラインブレイクしてチャンスを作り、最後はCTB(センター)ダミアン・デアリエンディが力強い突破で左中間にトライ。ゴールも決まり、16−9と再びリードを広げる。

 しかし、初の決勝進出に意気込むウェールズ代表も意地を見せる。後半24分、ゴール前で相手の反則を誘うと、PGを蹴るのではなくスクラムを選択して勝負に出る。そして、スクラムを押し込んでから左に素早く展開し、最後はWTB(ウィング)ジョシュ・アダムスがトライ。16−16の同点に追いついた。

 さらに後半32分、再びウェールズ代表に試合の流れが傾く。それを機に、ボールを継続したところで途中出場のSOリース・パッチェルが40メートルのDG(ドロップゴール)を狙った。ただ、キックはボールにジャストミートせず、残念ながらゴールに届かず。勝ち越し点を挙げることはできなかった。

 このまま延長戦に突入か……。そんな雰囲気になりつつあった後半33分、今度は南アフリカ代表が逆襲に転じる。

 試合前、南アフリカ代表を率いるラシー・エラスムス監督は、「スクラムとモール、そしてディフェンスでプレッシャーをかけたい」という狙いのもと、通常5人の控えFWを6人に増やして臨んでいた。

 試合終盤、6人の控えFWはすでにピッチに入っていた。すると終了間際、その6人の控えFWのひとりであるベテランFL(フランカー)フランソワ・ローがジャッカルを決めて、相手の反則を誘うことに成功する。試合の流れを再び呼び戻す、まさにビッグプレーだった。

「(このプレーが)大きかった。ベンチから投入された選手の貢献で、大きな違いが生まれた。フランソワのプレーは決勝へ駒を進めるのに、とても重要だった」(エラスムス監督)

 相手の反則で得たペナルティで、南アフリカ代表はタッチに蹴り出す。そして、自慢のFWを武器にモールを押し込む作戦に出た。南アフリカ代表の圧倒的な推進力の前に、たまらずウェールズ代表は故意にモールを崩して反則を犯す。

 残り5分、南アフリカ代表はPGを選択する。蹴るのはもちろん、ここまで4本のプレースキックをすべて決めてきた司令塔のポラードだ。

 ポラードは2012年のU20世界選手権で南アフリカ代表を優勝に導いた若きスター選手で、4年前のワールドカップでは日本代表に敗れた試合にも出場していた。当時は21歳。2015年度にはトップリーグのNTTドコモでもプレーしていたが、当時はどことなく頼りない印象もあった。

 しかし4年の月日を経て、今ではスーパーラグビーのブルズ、そして南アフリカ代表の主力にまで成長した姿がそこにはあった。

 右中間、距離は約33メートル。このキックを決めれば、南アフリカ代表は勝利をほぼ手中にする。

「緊張しましたが、蹴る瞬間は置かれている状況をいったん忘れて、キックのプロセスに集中しました。これまで激しい練習をしてきましたし、こういったシナリオは頭の中で何度も想定していた」

 後半36分、ポラードはゴールを見た後、右足を振り抜くと、ボールはポストの間を抜けていった。

 2度追いつかれたものの、最後は19−16と引き離した南アフリカ代表が試合を終わらせてノーサイド。2007年大会以来、3大会ぶり3度目の決勝進出を果たした。最優秀選手賞「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」には、19点中14点を決めたポラードが選出された。

 試合後、黒人選手として初めて南アフリカ代表のキャプテンを務めているFLシヤ・コリシは、「最後の数分間、すべての選手を投入して大きな違いを生み出した」と胸を張った。

 一方、惜しくも敗れたウェールズ代表のキャプテンLO(ロック)アラン・ウィン・ジョーンズは、「私たちは最後まであきらめなかった。2度追いついたことを誇りに思います。ただ、追う展開になってしまって、あと少しのところで追いつけなかった」と唇を噛んだ。

 11月1日、ウェールズ代表は3位の座をかけて「オールブラックス」ニュージーランド代表と対戦する。そして南アフリカ代表は11月2日、日本代表の前指揮官であるエディー・ジョーンズHCが率いるイングランド代表と相まみえる。

「指揮官に就任してから18カ月で、イングランドとは4度戦って2勝2敗。彼らのスタイルにも慣れている。ニュージーランドを倒したのを見れば明らかのように、最後に戦った時より(イングランド代表は)よくなっている。ただ、チャンスはあると思っている」(エラスムス監督)

 南アフリカ代表は過去に2度決勝に進出し、いずれも優勝を果たしている。自慢のフィジカルとポラードの正確無比なキックで接戦に持ち込み、ニュージーランド代表に並ぶ3度目の優勝杯「ウェブ・エリス・カップ」を掲げることができるか。

Sportiva

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