F1 Topic:緯度が違えば重さも違う。メキシコGPで行う車検の重要性

2017年10月29日(日)12時0分 AUTOSPORT web

 メキシコGPは、エンジニアやドライバーだけでなく、メカニックにも負担を強いるグランプリだ。それはメキシコシティの緯度と標高が、ほかのサーキットと比べて著しく異なるからだ。


 例えば、日本GPが行われた鈴鹿の緯度は34.8度だったのに対して、メキシコシティの緯度は19.4度である。


 地球は自転しており、回転しているものには遠心力が働く。遠心力は回転の中心軸(地球の場合は北極と南極を結ぶ線)から距離が遠くなればなるほど大きくなる。


 つまり、北極と南極が最も重力が強く、赤道は小さい。もちろん、緯度は国内でも違い、北海道と沖縄で比べると、北海道は重力が0.1%大きく、沖縄で1kgのものを、そのまま北海道に持っていくと1g重くなるのだ。もし、F1を沖縄と北海道で測ったら、約700gも異なるというわけだ。


 F1が開催されるサーキットで最も緯度が低いのがシンガポールで1.2度。その次がクアラルンプールの3.1度。そして、3番目に低いのが、じつはメキシコシティの19.4度なのである(ちなみに4番目がアブダビで24.4度と、中東よりもメキシコのほうが低い)。


 さらに重力が自転軸から離れれば離れるほど小さくなるということは、標高が高くなればなるほど、重力も小さくなる。ただし、こちらの差は緯度の違いほど大きくはないが、グラム単位でセッティングしているF1マシンにとっては、この重量の計測は重要となる。


 ところが、各チームに備えられている重量計は、緯度によるキャリブレーション(調整)が行われておらず、メカニックたちはセットアップ作業が終わると必ずFIAの車検室に置いてある重量計で検量を行う。


 FIAの重量計は、「GPSを感知して自動的に緯度による重力の差をキャリブレーションする最新式のものだから」と国際自動車連盟オフィシャル車検委員の今戸知行は理由を語る。

今戸知行/国際自動車連盟オフィシャル車検委員


 もちろん、初めてのサーキットでなければ、前年のデータからキャリブレーションして、自チームの重量計でも『ある程度』正確な検量は行える。ある程度と書いたのは、重力は緯度だけでなく、時によっても異なるからだ。


 というのも、重さを決めるのは重力だけでなく引力も関係している。重力(遠心力)は自転軸からの距離で決まるが、引力は地球と月の『引力』によって決まる。


 ところが、地球と月はともに動いているため、引力は日によっても違えば、一日の中でも変化する。そのため、チームは毎年行われる同じグランプリでも、毎日検量しなければならない。


 毎グランプリ、金曜日の夜、全チームが必ずFIAの車検室で検量を行うのは、セットアップ変更を行ったことも関係しているが、真の目的はより正確に重量を計測するためなのである。


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