久保建英が実感した「一心同体」。雷鳴轟く激戦制した日本、U-20W杯で再び世界へ

10月29日(月)14時34分 フットボールチャンネル

スタジアムが揺れる6万人の大声援の中で

 U-19日本代表は28日、インドネシアで開催されているAFC U-19選手権の準々決勝で地元インドネシアと対戦。豪雨がピッチに打ちつけ、雷鳴轟く中での一戦を2-0で制し、来年のU-20ワールドカップ出場権を獲得した。6万人の大観衆に囲まれ、久保建英は何を思いながら戦っていたのだろうか。(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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 強いチームではなく、勝てるチームを作る。

 U-19日本代表が、2大会連続となるU-20ワールドカップ出場権獲得を目指すにあたって掲げていたテーマである。
 
 28日に行われたAFC U-19選手権の準々決勝、インドネシア戦はまさに「強さ」が問われる試合だった。スタジアムには6万人を超える地元インドネシアのサポーターが詰めかけ、試合前から応援歌を熱唱している。スタンドがピッチを360度囲んでいるため反響も凄まじく、その音圧は想像をはるかに超えていた。

 試合が始まると、6万人の大声援はさらに勢いを増す。久保建英でさえも「みんなスピーカーでも持ってんのかってくらいですね。なんか本当に、日本の応援とは違って、みんながみんな声が馬鹿でかいみたいな。どこがゴール裏かわからないくらい声がでかかった」と驚きを隠さなかった。

 ちょっとしたボール奪取やカウンターにスタンド全体が湧き、波のように音がスタジアム全体からピッチに覆いかぶさる。逆サイドが見えづらくなるほどの激しい雨と雷に見舞われた後半も、インドネシアサポーターの声援が衰えることはなく、スタジアムを揺らすほどに、むしろ勢いを増していった。

 だが、日本の選手たちは動じなかった。スタジアムが完全アウェイの状況になるのは事前にわかっていたこと。それを楽しみにしている者も多くいた。

「6万人を黙らせてやろう」

 選手たちの意識はそこに統一されていた。影山雅永監督が試合前日に「小手先の巧さは通用しない」と警戒していた一戦。確かに今大会で最も苦しい戦いを強いられた中で、日本が証明したのは「強さ」だった。

 40分に東俊希のスーパーミドルシュートで先制すると、71分に宮代大聖が加点。その後、心なしかインドネシアサポーターの声援がおとなしくなったような気がした。まさに「黙らせてやろう」という狙い通り、声援に押されて勢いよく攻めてくる相手を押し返しながら、苦しい時間帯も耐え抜いて勝利をもぎ取った。

 最終盤までピッチに立っていた久保は、「最後の方も、本当に苦しい時間帯もみんなで防いだし、本当に全力というか。調子が100%かと言われたらそうでない選手もいたと思うんですけど、その中で今出せる全力を出したのかなという感じです」と晴れ晴れした表情で話した。

いつもと何かが違った久保建英

 何かから解き放たれたような印象さえあった。ピッチから引きあげてくる際、たまたま我々メディアの前を通りかかった久保は、珍しくハイテンションで扉をくぐってきたのである。

 さらに自身がアシストした2点目のゴールを振り返る中でも、「いつも自分は〇〇選手ってつけているんですけど、今日だけはちょっと」と前置きして、スコアラーの宮代のことを「宮代選手」ではなく「大聖」とファーストネームで呼び始め、1人称も「俺」になった。彼の中で何かが弾けた試合だったのかもしれない。

 そんなスマートなイメージの久保も、ピッチの上では泥臭く戦った。とにかく走って、走って、チームのために戦う姿勢を存分に見せた。

 ちょうど1年前、U-17ワールドカップが開催されていたインドで久保に「『戦う』という言葉の意味をどう考えるか」と質問したことがある。彼は次のように答えた。

「人それぞれあると思うんですけど、自分の『戦う』は、1つは『後悔しない』というのは大きいですね。『あの時やっておけばよかった…』みたいなのは絶対にあっちゃいけないと思います。でもやっぱり戦うと言っても、球際だったりというのはありますけど、自分はしっかり逃げずに、自分と向き合って、『相手に負けていないな』というのを自分の中で試合が終わった後に感じたい。

仕掛けるところは仕掛けて、自分の方が相手より優っているというのを見せることが、『戦う』ということ。代表に選ばれているということは、やっぱり誰でもできるようなプレーではなくて、1人ひとり特徴を持っていると思うので、その特徴を存分に出すことが自分にとっての『戦い』です」

 そして今、再び同じ問いを久保にぶつけてみると、少し変化した彼の考え方を垣間見ることができた。

「最終的には勝つってことが大前提なんですけど、その中でも、この仲間とやって、もし仮に負けたとしても後悔はしないなっていう終わり方を出来るチームが、やっぱり戦えるチームなのかなという感じですね」

 1年前は「自分」や「個人」にフォーカスしていたが、今はより「チーム」に目が向いている。「完成形ではないと思いますけど、(戦えるチームに)なっているからこそ今日のような試合ができたんだと思う」と力強く語る久保からは、チームの中心選手としての自覚や責任がにじみ出る。

「ちょっとハイライトとかを見ても、(齊藤)未月くんなんかがすごく絡んでいたり、(谷)晃生のビッグセーブがあって、苦しい時間帯があって、(ボールを)取りきってくれると前も頑張ろうとなるので、そこは一心同体だと感じますね」

ピッチで体感した「一心同体」

 攻守一体となり、勝利のためにブレることなく戦い続けられるチーム。それが今のU-19日本代表の理想であり、徐々に近づいている実感もあるはず。来年のU-20ワールドカップに全員一丸の「勝てるチーム」になって世界にぶつかっていけるか。「一心同体」を感じた今なら、ベスト16敗退に終わった前回大会の悔しさを晴らすことだってできるかもしれない。そう感じさせてくれる戦いぶりだった。

 今のU-19日本代表には、昨年久保とともにU-17ワールドカップを戦ったメンバーが多くいる。彼らに話しを聞くと、必ず出てくるのがベスト16のイングランド戦。最終的に優勝するチーム相手に0-0の激闘を演じ、PK戦の末に敗れた一戦だ。

 久保も「(対等に)やれない悔しさじゃなくて、やれたのに負けてしまったのは本当にもったいないですし、もっと違う高い景色を見たかった」と悔しさを噛み締めたが、そこで実感させられたのは個の能力の差だった。

 すでに組織として「一心同体」になれるまで一体感を高められている今、来年U-20ワールドカップで前回大会のベスト16以上という成績を残すには個々のレベルアップが不可欠。それらを今と同じレベルの組織力でつなぎ合わせた時、チームの真の力が解き放たれる。

 久保をJリーグで初めて取材したのは、2年前のちょうど今頃だったと記憶している。少年のあどけなさを残す当時15歳の彼は、「プロはちょっとまだ早かったかも…」とユースとのスピード感の違いに驚いていた。それが2年経って、自分よりも年上の世界レベルの選手たちと戦うことを真剣に語る。成長速度は全く鈍化していない。

「昨年(U-20やU-17のワールドカップ)を経験して、今日の試合が終わった後で改めて感じるのは、やっぱり勝たなきゃいけないなと。チャンスがある中で、どうなるかわからないですけど、自分は絶対に勝つつもりで挑んで、そのために次の試合に向かっていくというところです」

 U-20ワールドカップでベネズエラに敗れてベスト16敗退に終わった時、久保はうつむきながら「こういう思いは最後にしたい」と決意した。来年こそは後悔なく追われるように。今日からまた新たな「戦い」が始まる。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

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