純粋な「かっこいい」――人々はなぜ大谷翔平に“惚れるのか” 韓国のイチローが語った言葉をヒントに考えてみた
2024年11月2日(土)7時0分 ココカラネクスト
ワールドシリーズ制覇を成し遂げた大谷(左)。彼に対して韓国球界のスターであるイ・ジョンフ(左)も羨望の眼差しを向ける。(C)Getty Images
「近くで見たら本当に身体も大きくて…」
かっこいい——。左肩を痛めながらもワールドシリーズを懸命に戦い抜く大谷翔平の姿を目の当たりにし、純粋に心を揺さぶられた人は少なくないだろう。ヤンキースとの“東西の名門”による頂上決戦を制したドジャースにあって彼の存在は異彩を放っていた。
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無論、結果が伴っていたからこそ、そう見えた面は少なからずあるのかもしれない。右肘側副靭帯の損傷によるリハビリのため、「DH」による打者専念となったレギュラーシーズンでは史上初となる「シーズン54本塁打・59盗塁」を達成。キャリア2度目となる本塁打王にも輝いた。
メジャーリーグに移籍して7年目でようやくたどり着いたポストシーズン。そこでも大谷はポテンシャルを存分に発揮。打撃成績は打率.230、3本塁打、OPS.733と精彩を欠いたが、その一挙手一投足に世間の熱視線が注がれた。ヤンキースとのワールドシリーズは日本で異例の地上波生中継が組まれ、連日のように高視聴率を獲得。名門による4年ぶり8度目の戴冠劇の中心にいた偉才を見つめた。
ドジャースとの総額7億ドル(約1015億円=当時のレート)の10年契約締結から始まった激動の1年。野球に興味もなかった巷の老若男女の目が彼に向いた。そんな歴史的な一大フィーバーを巻き起こした大谷を「かっこいい」と感じるのは必然なのかもしれない。
にしても、どうしてここまで大谷は人々の関心を引きつけるのか。理由はさまざまになる。
もちろん、かつて多くの日本人ひいてはアジア人にとって「憧れ」でしかなったメジャーリーグという大舞台で“主役”を張っている事実は大きい。2度の本塁打王やMVP受賞などの功績は漫画やアニメでしか文字通り描けない絵空事のように思えなかったが、大谷は現実のものとした。その紛れもない事実に多くの人が刺激を得ているのは間違いない。
そして、このテーマを考えているうちに思い出した言葉がある。それは23年にメジャーリーグ挑戦を控えていた韓国代表のイ・ジョンフ(現ジャイアンツ所属)が大谷に向けたものだ。
韓国のイチローの異名を持ち、同国球界屈指の天才バッターとして注目されていたイ・ジョンフ。同年春のWBCの日韓代表戦で直接対峙していた彼は、依然として渦巻くライバル関係を抜きにした正直な想いを口にした。
「大谷選手は本当に凄いと思っています。近くで見たら本当に身体も大きくて、どうやったらアジア人のフィジカルがこうなるんだろうって。(WBCは)今まで見た野球選手の中で一番かっこいいと言っても過言ではないくらい、かっこよかったです」
日韓の関係性を超越した純粋な言葉
日韓両国は宿命のライバル関係にあるのは言うまでもない。昔ほどではないにしろ、今も両国球界関係者の中にはそうした感情が少なからず存在する。しかし、イ・ジョンフの大谷への言葉は日韓の関係性を超越した純粋なものだった。
万国共通で彼を目の当たりにした多くの人々に「かっこいい」と思わせてしまう。あるいは思わせるだけの説得力のある活躍をやってのける。それは23年のWBC優勝後に「日本だけじゃなくて、韓国もそうですし台湾も中国も、その他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように」と言い残した大谷の影響力を物語る一例と言えよう。
SNSが極めて当たり前に日々の生活にある現代社会では、あらゆる情報が拡散されている。その中にはネガティブな話題も含まれ、アスリートの目にしたくないネガティブな一面も見える時がある。
かく言う大谷は表裏がほとんどない。それはマネージメント会社をはじめとする関係者のサポートも影響しているのだろうが、彼はまさに「聖人君主」的なアスリートなのである。だからこそ万人が彼を純粋に応援したくなるのだろう。
果たして、我々はあとどれだけ大谷を「かっこいい」と思うのだろうか。今回のワールドシリーズ制覇を受け、ここからの生きざまを目に焼き付けたいという想いは強くなった。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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