オールブラックスが有終の美。ラグビー王国の誇りと情熱をみせた

11月2日(土)12時0分 Sportiva

 まさに「ラグビー王国」の意地である。黒いジャージにプライドとパッション(情熱)がほとばしる。史上初の3連覇を逃したニュージーランド代表オールブラックスが6トライの猛攻でウェールズを下し、3位で”有終の美”を飾った。40−17の完勝だった。


主将としてチームをまとめたオールブラックスのキアラン・リード

「チームを誇りに思う」。黒色のレプリカジャージで染まったスタンドからの大歓声と拍手の中、この試合で退任するスティーブ・ハンセンHC(ヘッドコーチ)は涙声でそう、言葉をしぼり出した。

「負ける日もあれば、勝つ日もある。それがラグビーだ」

 2008年の初代表から積み上げたキャップ(テストマッチ出場数)が「127」。これで代表引退となるNZ(ニュージーランド)のキアラン・リード主将はピッチ上のインタビューで、そのキャップ数に触れられると、「私を泣かそうとしていないか」と苦笑いをつくった。

「黒いジャージは私の人生の大きな部分を占めていた。きょうは楽しいゲームだった。ファンのみなさんに喜んでもらえる試合ができたことを誇りに思う」

 1日夜のラグビーワールドカップ(RWC)の3位決定戦。ほぼ満員の4万9千人の観客で埋まった東京スタジアム。1週間前の準決勝でイングランドに敗れたNZにとっては、プライドをかけた試合だった。

 試合前。つかの間の静寂がスタンドを包む。恒例の「ハカ」だ。ラストゲームの儀式をリードしたのが、リード主将だった。掛け声が場を圧した。

 フォワード(FW)が当たり負けしなければ、15の黒いジャージが”生きた”ボールをつないでいく。変幻自在にみえる攻めを支える基本技術の確かさ。瞬時の判断のはやさ、鋭利するどいラン。そこにはラグビーという競技のオモシロさが存分に詰まっていた。

 タックルを受けながらパスをつなぐオフロードパスは相手と同じ「17」だった。でも、ウェールズとは威力がちがった。渡すタイミングやボディコントロールもだが、ボールをもらう選手の角度、間合い、ランスピードが決定的だった。

 前半5分。NZが相手のキックを自陣で捕って、逆襲に転じた。中盤でラックを連取し、左オープンに振る。SO(スタンドオフ)リッチー・モウンガからNo.8(ナンバーエイト)のリードがもらってタテを突き、LO(ロック)のブロディ—・レタリックにつなぐと、タックルを受けながら右手のフリップパスで、内側に走り込んできたPR(プロップ)のジョー・ムーディーにオフロードパスを通した。PRだ。PRのムーディーが右中間に躍り込んだ。

 まったくオールブラックスはFW前5人(PR、HO=フッカー、LO)もよく走る。ハンドリングもうまい。もちろんBK(バックス)も自在に走り、FB(フルバック)のボーデン・バレット、33歳のWTB(ウイング)ベン・スミスがトライを重ねた。特に前半終了間際のスミスのトライで勝敗の趨勢は決まった。前半を28−10で折り返した。

 それにしても、なぜベテランのベン・スミスが準決勝に出場しなかったのか、不思議でならない。大舞台では彼が持つような経験がより生きるはずなのに。

 ディフェンスとて、この日のNZは厳しいタックルを連発した。タックル成功率は相手の75%に対し、223本中の199本成功の89%を記録した。とくに両チームトップの21本を決めたのがリード主将だった。

 リード主将も、この日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチのレタリックもブレイクダウンなどで地味な仕事もし続けた。ハンセンHCは試合後の記者会見で言った。

「自分たちのジャージを誇りに思えるプレーができた。誇りを持って、ニュージーランドに帰ることができる」

 115年以上の歴史を持ち、テストマッチ勝率が8割近い数字を残してきたオールブラックス。RWCでも最多の3度、優勝している。歴史でいえば、強さも人気も世界ナンバーワンのチームだ。だからこそ、その黒いジャージに袖を通した選手の重圧は計り知れないものがあるのだろう。3位でも、さほどファンに喜ばれることもなかろう。

 この日は多くの人々の記憶に刻みつけられる「メモリアル・デー」となるだろう。ハンセンHCほか、リード主将、ベン・スミス、FL(フランカー)マット・トッド、CTB(センター)ライアン・クロッティ、CTBソニービル・ウィリアムズの代表引退試合となった可能性が高いからだ。

 リードはトヨタ自動車でプレーする予定になっている(クロッティはクボタ、トッドが東芝)。34歳の闘将にとって、初めての日本開催のW杯は感慨深いものとなったようだ。つぶれた両耳。鼻筋の赤い血のかたまりが痛々しい。「特別な記憶は?」と聞けば、しみじみと漏らした。

「素晴らしい2カ月間だった。来日した日から、日本の人々は我々を温かく迎えてくれた。日本ではたしか、(NZの)ジャージが2回も売り切れたと聞いた。日本代表も活躍した。私は日本にまた、戻ってくることを楽しみにしている」

 記者会見。トヨタ自動車の指導陣に入る見通しのハンセンHCは今後のことを聞かれると、「ビールを飲みながら、プレッシャーを感じずに、オールブラックスの試合を楽しむことになる」と言って、笑いを誘った。

「オールブラックスの歴史は決して、ひとりだけで成し遂げられたことではない。多くの人の努力と鍛錬によるものだ。スタッフや選手は変わろうと、またチャレンジを続けて、チームとして成長していくと思う」

 やはりオールブラックスはオールブラックスだ。日本、いや世界の人々に愛されるNZは3連覇を逃しながらも、強烈な印象を人々に残した。世代交代をしながらも、さらに輝きを増していくのだろう。

Sportiva

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