F1 Topic:なぜ、ホンダPUはメキシコGPでルノーを上回るパフォーマンスを披露できたのか?

2017年11月8日(水)11時22分 AUTOSPORT web

 メキシコGPに向かう前、ホンダは「相当、厳しい戦いになる」(中村聡チーフエンジニア)ことを覚悟していた。なぜなら、メキシコGPが行われるエルマノス・ロドリゲス・サーキットがあるメキシコシティは、標高2250メートルという高地にあるため、通常の平地のサーキットに比べると約20%空気が薄いからだ。 


 気圧の低さを補うため、どのパワーユニット・マニュファクチャラーも、いつもよりたくさん空気を取り込もうと、ターボの仕事量を通常よりも増やす処置をとった。


 だが、そうなると、今度はターボやMGU-Hの回転を通常よりも上げなければならず、通常のグランプリよりもターボやMGU-Hが厳しい状況にさらされた。ルノー勢が相次いでトラブルに見舞われた背景には、そんな理由が考えられる。


 ホンダも不安はあった。
「昨年はそのへんを見越してターボやコンプレッサーが設計していたんですが、今年はターボとコンプレッサーのブレード(羽)のデザインが変わったため、通常よりも20%多く空気を取り込もうとすると、ターボを非常に高い回転域で使用しなければならなくなってしまった。その回転域というのは、信頼面に関して保証できないレベルとなっていたため、制限して使用するしかないと、あきらめていた」と中村チーフエンジニアは語っていた。


 ここで動いたのが、栃木県さくら市にある研究所『HRD Sakura』のスタッフだった。
「単純にターボの回転を落として使用したのでは、エンジンの性能も落ちるだけなので、どうすればターボの回転を落としてもエンジンの性能をそれほど落とさずに使用できるかを、メキシコGPが開幕する直前までシミュレーションしてくれました」


 このHRD Sakuraの努力によって、メキシコGPでのホンダPUは、メキシコGPに来る前に想定していたものより、高地によるハンディキャップを受けることはなく、走行することができた。


 中村エンジニアによれば、「想定していたよりも、高地による性能の落ち幅は、3分1程度にとどまった。箸にも棒にもかからないと思っていただけにうれしい驚きでした」という。フェルナンド・アロンソが初日からトップ10内のタイムを記録していたのは、単なる偶然ではなかった。


 この改善によって、後方からスタートしたアロンソが復帰後のメキシコGPで初入賞を挙げ、長谷川祐介ホンダF1総責任者も「ルノーと比べれば、明らかにうちの方が戦闘力はあった」と、開発陣の仕事を評価した。


 この経験はメキシコGP以降のレースでも、生かされることになるだろう。というのは、今回ホンダはハード面での変更を加えずに、使い方というソフト面でのセッティング変更によって、信頼性を保ちつつ、パフォーマンスを向上させることに成功したからだ。つまり、ホンダのPUには使い方を工夫することで、まだまだ伸び代があることが確認されたからだ。


 残り2戦。投入されるエンジンは、アメリカGPと同様のスペック3.8だが、その性能は2週間前とまったく同じではない。どんな走りを披露するのか。楽しみにしたい。


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