ウタカに救われた甲府。的確な戦況判断で浙江撃破【ACL2023/24】

2023年11月10日(金)12時30分 FOOTBALL TRIBE

ヴァンフォーレ甲府 FWピーター・ウタカ 写真:Getty Images

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のグループステージ第4節が11月8日に行われ、ホームのヴァンフォーレ甲府が浙江FC(中国)に4-1で勝利した。


国立競技場(東京都新宿区)にて行われたこの試合で、甲府が快勝できた要因は何か。同クラブを率いる篠田善之監督の試合後コメントを紹介しながら、この点について論評する。




梁諾恆(左)ピーター・ウタカ(右)写真:Getty Images

甲府vs浙江:試合展開


キックオフ直後から浙江に攻め込まれたものの、これを耐え忍んだ甲府が相手の一瞬の隙を突く。


前半17分、センターサークル付近でのボールの奪い合いから、甲府MF中村亮太朗が浙江の最終ラインの背後へスルーパスを送る。このボールに反応した味方FWピーター・ウタカが浙江のGKジャオ・ボーとの1対1を制し、先制ゴールを挙げた。


前半アディショナルタイムにも中盤でボールを回収した甲府は、ここからの速攻も得点に結びつける。FW宮崎純真の敵陣ペナルティエリア右隅からのクロスに、FWジェトゥリオがゴール前へ走り込みながら左足で合わせたことで、ホームチームに追加点がもたらされた。


後半開始直後も甲府は浙江に攻め込まれ、同3分にはMFフランコ・アンドリヤシェビッチのミドルシュートを浴びる。このこぼれ球に反応した浙江のFWレオナルドを、甲府GKマイケル・ウッドが自陣ペナルティエリア内で倒したことで、浙江にPKが与えられた。


レオナルドにPKのチャンスを物にされ、1点差に詰め寄られた甲府は、前線からの守備の強度を高める。奪ったボールを縦に速く繋ぐことも徹底され、これにより息を吹き返した。


迎えた後半13分、甲府が敵陣右サイドでボールを奪う。宮崎、FW飯島陸、DF関口正大(右サイドバック)の3人によるパスワークで浙江の最終ラインを破ると、飯島のラストパスを受けた関口が相手GKのニアサイドを射抜くシュートを放ち、自軍に貴重な3点目をもたらした。


甲府は後半44分にも自陣から速攻を仕掛け、FW三平和司のスルーパスを受けたMF鳥海芳樹が相手GKとの1対1を制し、ダメ押しのゴールをゲット。途中出場の両選手が得点に絡むという、最高の結末を迎えた。


グループステージ4試合消化時点で、甲府は勝ち点7を獲得(2勝1分け1敗)。メルボルン・シティが同じく勝ち点7、ブリーラム・ユナイテッドが勝ち点6、浙江が同3と混戦模様のなか、同クラブがグループH首位に躍り出ている。各グループの首位チーム、及びグループFからJ(東地区)の2位チームのうち、成績上位の3つがノックアウトステージ進出という大会規定において甲府は優位に立った。




ヴァンフォーレ甲府vs浙江FC、先発メンバー

序盤は甲府のプレスが不発に


両軍ともキックオフ直後から[4-2-3-1]の基本布陣で臨む。前半1分、甲府はピーター・ウタカと飯島陸の両FWが最前線で横並びとなり、2トップを形成。この2人が浙江の2センターバックに寄せ、アウェイチームのパス回しをMFグー・ビン(左サイドバック)の方面へ誘導したものの、ボールを奪いきれなかった。


甲府のプレスが掻い潜られた理由は、基本布陣[4-2-3-1]の浙江のMFアンドリヤシェビッチ(トップ下)が自陣左サイドへ降り、自軍のパス回しを手助けしたこと。このときに甲府のFW宮崎純真(右サイドハーフ)がグー・ビンからアンドリヤシェビッチへの縦のパスコースを塞ぎきれなかったため、ホームチームは浙江のパス回しを断ち切れず。この直後に浙江に攻め込まれてしまった。


浙江のDFリャン・ノクハン(センターバック)が自陣ペナルティエリア付近でボールを保持した前半5分には、ここへの甲府のプレスが緩く、同選手からアンドリヤシェビッチへのロングパスが繋がってしまう。甲府の最終ラインと2ボランチ(中村亮太朗と林田滉也の両MF)の間もぽっかり空いていたため、ここに立っていたアンドリヤシェビッチに悠々とボールを捌かれている。この場面を境に甲府は相手最終ラインへのプレスを控え、自陣へ撤退するようになった。


ヴァンフォーレ甲府 篠田善之監督 写真:Getty Images

篠田監督も気にしていた試合序盤


甲府の篠田監督は試合後に行われた会見で、「相手のストロングポイントを抑えることが、(試合の)立ち上がりはうまくできませんでした」と率直に語っている。これに加え質疑応答のなかで、浙江のMFアンドリヤシェビッチの対応に苦労したことも明かしてくれた。


ー相手のストロングポイントを、試合の立ち上がりに抑えられなかったというお話がありましたが、そのなかでも先制点を奪い、前半は自分たち(甲府)のペースで試合を進めることができていたと思います。この一番の要因は何だったと、監督はお考えですか。


「相手の11番の選手(アンドリヤシェビッチ)が、うちのMF林田滉也(甲府のボランチ)の裏に立ったり、サイドにボールが出たら、縦に3人相手選手が並ぶ形を、試合の立ち上がりにうまく作られました(アンドリヤシェビッチ、相手サイドハーフ、サイドバックの計3人)。そこにボールを供給されることが何度かありましたが、徐々にそのスペースを埋めました。あとは飯島とウタカの2トップによる、ボール保持者への制限(ボール保持者への寄せ)がうまくできたことで、相手の攻撃に対する自分たちの守備がうまくいった。そこがひとつ前半のポイントだったと思います」


試合序盤にハイプレスを掻い潜られ、やむなく自陣へ撤退する場面もあったが、基本的には敵陣でボールを奪おうとする姿勢を示し続けた甲府。最終ラインも試合全体を通じて高めに設定されていたが、背後のスペースのケアは行き届いていた。


最前線と中盤の距離が開いてしまうことで、プレスの連動性が低くなる場面が試合序盤に見受けられたが、時間の経過とともにこの問題も解決。前半アディショナルタイムに生まれた甲府の2点目も、元を辿ればウタカと飯島が相手のパスワークを右サイド(浙江にとっての自陣左サイド)へ追いやったことから生まれたものである。相手の左サイドバック、グー・ビンが繰り出した強引な縦パスを甲府の右サイドバック関口が回収。これが最終的に宮崎のクロスやジェトゥリオのゴールに繋がった。




ヴァンフォーレ甲府 DF井上詩音 写真:Getty Images

浙江のハイプレスを破った甲府


甲府は前半9分に浙江のハイプレスを浴び、パス回しを自陣右サイドへ追いやられたが、ここでボールを受けたDF井上詩音(センターバック)が最前線のウタカへ正確なロングパスを供給。屈強なポストプレーを披露したウタカのパスが僅かにずれ、一度浙江にボールを奪われかけたものの、MF中村が奪還してロングカウンターに繋げた。


同じく甲府が浙江のハイプレスに晒され、自陣右サイドに釘付けにされた前半11分には、ボランチの林田からウタカに正確なロングパスが送られている。ここでもウタカのポストプレーが冴え渡り、同選手のパスを受けた宮崎のドリブルから縦に速い攻撃が始まった。


ハイプレスを浴びたら、まずは最前線のウタカへのパスを試みる。この日の甲府の戦いぶりからはこの原則が窺え、これが強力な打開策になっていた。ウタカの得点力やボール保持力に救われた感もあるが、甲府の選手たちの相手の出方を見抜く力、戦況判断力の高さが窺えた一戦だった。

FOOTBALL TRIBE

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