想定と真逆の展開。「鹿島らしさ」を発揮したのは川崎だった

11月11日(月)5時50分 Sportiva

 11月9日にカシマスタジアムで行なわれた一戦は、川崎フロンターレにとって、死ぬか生きるかのサバイバルマッチだった。勝てば3連覇に望みをつなぐが、負ければその夢が絶たれてしまう。まさに、崖っぷちに追い込まれた状況での戦いだったのだ。
 
試合後、内田篤人は「決める時に決めないと......」と反省

 川崎に王者としての意地を示してもらいたいという想いもあったが、筆者が試合前に思い描いていたシナリオは、Jリーグ史上で唯一、3連覇達成チームの鹿島アントラーズが「君たちにはまだ早いよ」とばかりに川崎に引導を渡すというもの。川崎の猛攻に耐えながらも次第にリズムを掴み、少ないチャンスをモノにして勝利する。鹿島が常勝軍団としての貫禄を示すものだと思っていた。

 そう考えたのは、直近の9試合で負けなしを続けていたことが大きい。相手を圧倒した試合は少なく、僅差での勝利が目立つ。しかし、1点差をモノにする勝負強さこそが、このチームの真骨頂である。

 今夏に鈴木優磨(シント・トロイデン)、安部裕葵(バルセロナB)、安西幸輝(ポルティモネンセ)の3人が海外移籍しても、新たに補った戦力や若手の台頭を促し、チーム力を保ち続ける。そのマネジメント能力も、鹿島というクラブの伝統だ。シーズンも終盤に向かうなか、したたかに勝ち点を積み上げて首位に立つ今の鹿島に、”鹿島らしさ”を存分に感じていたからだった。

 実際にこの試合も、鹿島らしい展開になりかけていた。キックオフからしばらくは、上位決戦らしい一進一退の攻防が続いた。お互いがお互いの良さを消しあい、なかなか決定機は生まれない。サイドから何度かチャンスを作った川崎がわずかに押しているようだったが、それも微々たるもの。土俵の真ん中で、がっぷり四つの状態が続いた。

 ところが前半も30分を過ぎたあたりから、徐々に鹿島が相手を押し込んでいく。35分には内田篤人のクロスから白崎凌兵がシュートを放ち、35分には相手のミスを誘って伊藤翔があわやというフィニッシュを見舞う。セットプレーの機会も増えるなど、鹿島が流れを掴み始めた時間帯だった。

 それまではほとんどチャンスを作れなかったにもかかわらず、時間が経つにつれて、いつの間にか主導権を握ってしまう。その鹿島らしさを促した要因は、守備にあった。

「球際のバトルで勝てる回数が増えたことが大きい。中盤もそうですし、後ろの選手も球際で勝つ回数が増えてきて、そういう時間帯を作れるようになった」

 土居聖真が振り返ったように、川崎のパス回しを強度の高い守備でつぶしていく。とりわけ目立ったのはCBのブエノで、鋭いインターセプトを連発し、攻撃へとつなげていった。守備からリズムを掴んでいくのは、もはやお家芸。こうなれば、完全に鹿島のペースである。

 ハーフタイムに「もうひとつギアを上げていこう」(土居)と意識の共有を図った鹿島は、後半に入っても川崎陣内で試合を進めていく。その勢いを考えれば、点が入るのは時間の問題かと思われた。

 しかし、この日の鹿島は、何かがおかしかった。

 何度も決定的なチャンスを迎えながらも、シュートが入らない。セルジーニョの至近距離からの一撃はDFのブロックあい、フリーで打った永木亮太のシュートも大きく枠を外れてしまう。このふたつのビッグチャンスを逃したことが、この試合の鹿島の敗因となったのだ。

「よくあるやつだね。決める時に決めないと……っていうやつ」

 内田が淡々とした口調で振り返ったように、仕留める時に仕留めきれないと、流れを失ってしまうのがサッカーの常である。

 案の定、62分にセットプレーからあっさりと失点すると、71分にはカウンターから2点目を失った。終盤にも二度決定機を迎えた鹿島だったが、この日は最後まで狂った歯車を修正できなかった。終わってみれば0−2の完敗。川崎に希望を与え、自らは首位の座から滑り落ちた。

「最近のなかでは、ボールの保持・崩し方っていうのはよかったと思うけど、こういう時に勝ちがついてこないっていうのはね。僕らはそういうチームではないので。悪くても勝ってきたチーム。1点獲ってカウンターっていうのは、僕らがやらないといけないこと。それを川崎がやってきた」(内田)

 思い描いたシナリオは、真逆だった。粘り強く耐えしのぎ、少ないチャンスをモノにして、勝利を手にする。つまり、鹿島らしさを発揮したのは、川崎のほうだったのだ。

 大岩剛監督の言葉からも、無念さがにじむ。

「1週間かけて用意してきた展開に持ち込めたんですけど、非常に悔しい試合になった。単純なセットプレーと、自分たちのセットプレーからのカウンター。いつも口酸っぱく言っているところでやられてしまった。ビッグゲームではそういうディテールが重要になると言っているんですけど、そこで失点したのがこの試合を決めてしまったのかと思います」

 プランどおりに試合を進めながら、警戒していた形でやられてしまうのは、どうも鹿島らしくない。

 先制点を決めた山村和也も、敵将である鬼木達監督も、ともに鹿島出身者なのは、あまりにも皮肉なキャスティングである。

Sportiva

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