【コラム】“幻のゴール”を自信に変えて…大型FW杉本健勇、ベルギー戦でインパクトを残せるか
2017年11月12日(日)17時35分 サッカーキング
ネイマール(パリ・サンジェルマン)、マルセロ(レアル・マドリード)、ガブリエル・ジェズス(マンチェスター・C)と前半だけで3失点を喫し、ブラジル代表の底力を見せつけられた日本代表。それでも、後半は槙野智章(浦和レッズ)のゴールで巻き返し、追加点を奪えそうな空気も漂った。
そんな88分、乾貴士(エイバル)が自身のドリブル突破から好位置で得たFKに、背番号9を着ける杉本健勇(セレッソ大阪)が思い切って飛び込み、打点の高いヘッド。豪快にゴールネットを揺らしたと思われた。本人も雄叫びを挙げたが、レフェリーは惜しくもオフサイドを宣告。虎視眈々と狙っていたブラジル戦のゴールは幻に終わってしまった。
「オフサイドでなければ良かったですけど(苦笑)。まあ、しゃあないです。でも高さでは勝てる自信があるので、どんどん出していかないといけないし、いろいろな状況でそういうところが必要になってくるかもしれない。そこは負けないようにしないといけないと思います」と杉本は自らに課せられた役割を明確に理解している様子だった。
この時間帯のブラジルは、ネイマールら攻撃陣の先発組がほぼ下がっていたが、184センチのカゼミーロ(レアル・マドリード)、183センチのチアゴ・シウヴァ(パリ・サンジェルマン)、184センチのジェメルソン(モナコ)といった守備の面々は健在。乾がFKを蹴った瞬間も杉本の前に彼らがズラリと並んでいた。その状況下でも、187センチの長身を誇る日本人FWは決してフィジカル的に見劣りすることなく、相手を上回る迫力と存在感を示した。そこはヴァイッド・ハリルホジッチ監督の琴線にも間違いなく触れたはずだ。
もともと足元の技術とスピードに長けている杉本は、昨季まで高さよりそちらの特徴を前に押し出したプレーが目立った。C大阪でも左サイドで起用されることが多く、ドリブルで持ち上がってチャンスメークという乾や原口元気(ヘルタ・ベルリン)が得意とする仕事を見せることも少なくなかった。単にヘディングで勝てるだけの大型FWなら他にもいるが、杉本には多彩な攻撃センスがある。そこにボスニア人指揮官は惹かれ、2015年の就任当初から「彼は才能がある」と興味深く見続けてきたのだろう。
その彼が今季、C大阪で尹晶煥監督の就任によって最前線のエースFWに抜擢されたことは、日本代表にとっても僥倖だったに違いない。杉本自身も高さという自らの武器に改めて気づき、そのストロングポイントを生かした得点を数多く奪うようになってきた。
成長の跡がハッキリと見て取れたから、ハリルホジッチ監督は2018 FIFAワールドカップ ロシアの出場権が懸かる8月31日のオーストラリア代表との大一番(埼玉)直前に彼を招集。9月5日のサウジアラビア代表戦(ジェッダ)でA代表デビューさせたのだ。10月のニュージーランド代表(豊田)、ハイチ代表(横浜)の2連戦でも連続して出場機会を与え、後者では代表初ゴールも記録。さらに杉本は11月4日に行なわれたJリーグYBCルヴァンカップ決勝でも値千金の先制弾を挙げ、MVPに輝いた。こうしたいい流れがあったから、ブラジル戦でもチャンスを与えるに至ったのだろう。
「ブラジルはやっぱりうまさもありましたし、ミスが少なく、カウンターに出ていく人数だったり、タイミングだったりがうまかった。結果的には1−3で負けて、まだまだやなってところもあったけど、別に下を向く必要はない。後半はブラジルのメンバーが変わったところもありましたけど、しっかりとはまった時はいいサッカーができていたし、攻撃の部分も少なかったけどチャンスはあった。連動してできれば敵わない相手じゃないと感じました」と本人はむしろ手応えの方を強く感じたという。その強気の姿勢も彼の魅力と言っていい。
14日の次戦、ベルギー代表戦(ブルージュ)にはその自信を大いに生かしたいところ。目下、代表の絶対的1トップに大迫勇也(ケルン)が君臨するため、杉本が出るとしたら、今回も後半途中からだろう。その時、日本が劣勢に陥っているのか、拮抗した状況なのかは何とも言えないが、彼には高さを生かしてターゲットになりつつ、ゴールを狙う仕事が強く求められてくる。まずはジョーカー役としての地位を確立させることが、代表生き残りの重要な一歩になるだろう。
ベルギー守備陣は190センチのトーマス・ムニエ(パリ・サンジェルマン)、189センチのヤン・ヴェルトンゲン(トッテナム)、188㎝のデドリック・ボヤタ(セルティック)といった大柄なDFを揃えていて、フィジカル的にはブラジル以上に屈強かもしれない。そこで杉本が磨きをかけてきた打点の高いヘディング、当たり負けしない強さを示せれば、日本の攻撃の幅は確実に広がる。彼にとってもこのベルギー戦はロシアへの切符を掴むために絶対に乗り越えなければならないハードルと言っても過言ではない。
丸4年前の11月に行われたベルギー戦(ブリュッセル)では、前半に1失点した後、柿谷曜一朗(C大阪)が同点弾を挙げ、日本は反撃の狼煙を挙げることに成功した。その後、本田圭佑(パチューカ)と岡崎慎司(レスター)が2点を追加。当時FIFAランキング5位だった相手を撃破している。
「曜一朗くんがゴールを決めてたんで、この試合は覚えてます」と杉本は言うが、C大阪の先輩はこの一撃でブラジルW杯行きを確実にした。同じ道のりを目論んでいる彼もそろそろ強豪相手に結果を残さなければならない。「それがロシア行きの条件になる? その通りだと思います」と本人も強い自覚を覗かせた。
果たして敵地・ベルギーで迎える国際Aマッチ5戦目で、杉本はインパクトの大きな代表2ゴール目を奪えるのか。日本人離れしたスケール感を誇る大型FWの動向が非常に楽しみだ。
文=元川悦子
そんな88分、乾貴士(エイバル)が自身のドリブル突破から好位置で得たFKに、背番号9を着ける杉本健勇(セレッソ大阪)が思い切って飛び込み、打点の高いヘッド。豪快にゴールネットを揺らしたと思われた。本人も雄叫びを挙げたが、レフェリーは惜しくもオフサイドを宣告。虎視眈々と狙っていたブラジル戦のゴールは幻に終わってしまった。
「オフサイドでなければ良かったですけど(苦笑)。まあ、しゃあないです。でも高さでは勝てる自信があるので、どんどん出していかないといけないし、いろいろな状況でそういうところが必要になってくるかもしれない。そこは負けないようにしないといけないと思います」と杉本は自らに課せられた役割を明確に理解している様子だった。
この時間帯のブラジルは、ネイマールら攻撃陣の先発組がほぼ下がっていたが、184センチのカゼミーロ(レアル・マドリード)、183センチのチアゴ・シウヴァ(パリ・サンジェルマン)、184センチのジェメルソン(モナコ)といった守備の面々は健在。乾がFKを蹴った瞬間も杉本の前に彼らがズラリと並んでいた。その状況下でも、187センチの長身を誇る日本人FWは決してフィジカル的に見劣りすることなく、相手を上回る迫力と存在感を示した。そこはヴァイッド・ハリルホジッチ監督の琴線にも間違いなく触れたはずだ。
もともと足元の技術とスピードに長けている杉本は、昨季まで高さよりそちらの特徴を前に押し出したプレーが目立った。C大阪でも左サイドで起用されることが多く、ドリブルで持ち上がってチャンスメークという乾や原口元気(ヘルタ・ベルリン)が得意とする仕事を見せることも少なくなかった。単にヘディングで勝てるだけの大型FWなら他にもいるが、杉本には多彩な攻撃センスがある。そこにボスニア人指揮官は惹かれ、2015年の就任当初から「彼は才能がある」と興味深く見続けてきたのだろう。
その彼が今季、C大阪で尹晶煥監督の就任によって最前線のエースFWに抜擢されたことは、日本代表にとっても僥倖だったに違いない。杉本自身も高さという自らの武器に改めて気づき、そのストロングポイントを生かした得点を数多く奪うようになってきた。
成長の跡がハッキリと見て取れたから、ハリルホジッチ監督は2018 FIFAワールドカップ ロシアの出場権が懸かる8月31日のオーストラリア代表との大一番(埼玉)直前に彼を招集。9月5日のサウジアラビア代表戦(ジェッダ)でA代表デビューさせたのだ。10月のニュージーランド代表(豊田)、ハイチ代表(横浜)の2連戦でも連続して出場機会を与え、後者では代表初ゴールも記録。さらに杉本は11月4日に行なわれたJリーグYBCルヴァンカップ決勝でも値千金の先制弾を挙げ、MVPに輝いた。こうしたいい流れがあったから、ブラジル戦でもチャンスを与えるに至ったのだろう。
「ブラジルはやっぱりうまさもありましたし、ミスが少なく、カウンターに出ていく人数だったり、タイミングだったりがうまかった。結果的には1−3で負けて、まだまだやなってところもあったけど、別に下を向く必要はない。後半はブラジルのメンバーが変わったところもありましたけど、しっかりとはまった時はいいサッカーができていたし、攻撃の部分も少なかったけどチャンスはあった。連動してできれば敵わない相手じゃないと感じました」と本人はむしろ手応えの方を強く感じたという。その強気の姿勢も彼の魅力と言っていい。
14日の次戦、ベルギー代表戦(ブルージュ)にはその自信を大いに生かしたいところ。目下、代表の絶対的1トップに大迫勇也(ケルン)が君臨するため、杉本が出るとしたら、今回も後半途中からだろう。その時、日本が劣勢に陥っているのか、拮抗した状況なのかは何とも言えないが、彼には高さを生かしてターゲットになりつつ、ゴールを狙う仕事が強く求められてくる。まずはジョーカー役としての地位を確立させることが、代表生き残りの重要な一歩になるだろう。
ベルギー守備陣は190センチのトーマス・ムニエ(パリ・サンジェルマン)、189センチのヤン・ヴェルトンゲン(トッテナム)、188㎝のデドリック・ボヤタ(セルティック)といった大柄なDFを揃えていて、フィジカル的にはブラジル以上に屈強かもしれない。そこで杉本が磨きをかけてきた打点の高いヘディング、当たり負けしない強さを示せれば、日本の攻撃の幅は確実に広がる。彼にとってもこのベルギー戦はロシアへの切符を掴むために絶対に乗り越えなければならないハードルと言っても過言ではない。
丸4年前の11月に行われたベルギー戦(ブリュッセル)では、前半に1失点した後、柿谷曜一朗(C大阪)が同点弾を挙げ、日本は反撃の狼煙を挙げることに成功した。その後、本田圭佑(パチューカ)と岡崎慎司(レスター)が2点を追加。当時FIFAランキング5位だった相手を撃破している。
「曜一朗くんがゴールを決めてたんで、この試合は覚えてます」と杉本は言うが、C大阪の先輩はこの一撃でブラジルW杯行きを確実にした。同じ道のりを目論んでいる彼もそろそろ強豪相手に結果を残さなければならない。「それがロシア行きの条件になる? その通りだと思います」と本人も強い自覚を覗かせた。
果たして敵地・ベルギーで迎える国際Aマッチ5戦目で、杉本はインパクトの大きな代表2ゴール目を奪えるのか。日本人離れしたスケール感を誇る大型FWの動向が非常に楽しみだ。
文=元川悦子