ベルギー戦の手痛い教訓。吉田麻也が痛感、勝敗の分かれ目になった「一瞬の緩み」

11月15日(水)16時29分 フットボールチャンネル

「ホントに全員が一瞬、気を抜いてしまった」

 現地時間14日、ベルギー代表との国際親善試合に臨んだ日本代表。10日のブラジル戦では開始序盤に連続して失点を喫したが、欧州遠征2試合目は拮抗したゲーム展開に。だが守備が一瞬緩んだところで失点してしまい0-1で敗戦。手痛い教訓を得た試合となった。(取材・文:元川悦子【ブルージュ】)

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 ブラジルに1-3で惨敗した10日のリールでのゲームから中3日。日本代表は14日、敵地・ブルージュでFIFAランキング5位・ベルギーに挑んだ。ブラジル戦でできなかった「前から守備に行く時、引いて守る時の判断をしっかりさせる」というテーマの下、選手たちは強豪に挑んだ。

「2日前(12日)の練習、雹(ひょう)が降った時ですね。あの時の練習があまりうまくいかなかった。あの晩と昨日のミーティングで選手同士意見をぶつけあって、今日の試合を迎えました」と槙野智章(浦和)は語気を強めた。

 その結果、選手たちはブラジル戦で曖昧になっていた守備のメリハリが明確になった状態でゲームに入ることができた。

 想定通りの3-4-3で挑んできたベルギー相手に、日本は前半から全員がコンパクトに連動しながらブロックを形成。デ・ブルイネ(マンチェスター・シティ)やロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)に個の力で脅威を与えられる場面もあったが、0-0で試合を折り返すことに成功する。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にとってもシナリオ通りの試合運びだった。

 後半もその流れを持続し、後半15分を過ぎたところで森岡亮太(ワースラント・ベフェレン)、久保裕也(ヘント)のベルギーコンビを投入。攻撃のスイッチを入れるというのも思惑通りだったに違いない。

 その好循環が一瞬にして崩れてしまったのが、後半27分の失点シーン。ここまで仕事らしい仕事をしていなかった左アウトサイドのシャドリ(ウェスト・ブロムウィッチ)がスルスルとドリブルを始めた際、対面にいた久保も、カバーに行った森岡、山口蛍(C大阪)も寄せが中途半端になった。

 ペナルティエリア内に陣取っていた守備の要・吉田麻也(サウサンプトン)でさえもアッサリとかわされた。次の瞬間、クロスが入り、ファーからルカクが飛び込んでヘッド。与えてはいけないゴールを献上してしまった。

「ホントに全員が一瞬、気を抜いてしまった。誰か1人だけじゃなくて、中盤も後ろも気を緩めてしまったがゆえに、中に入られてしまった。本来なら外に外に追い込むべきだったと思うけど、クロスもすごくよかったですし、(ペナルティ)ボックスに入った後はノーチャンスだった。その前で止めるべきだったと思います」と長谷部誠(フランクフルト)に代わってキャプテンマークを巻いた背番号22は痛恨の決勝点を悔やんだ。

勝敗を分ける「1つのミス、1つのチャンス」

 1トップのルカクを筆頭に、シャドリ、ボランチに入ったデ・ブルイネ(マンC)、最終ラインのカバセレ(ワトフォード)、ヴェルトンゲン(トッテナム)と、今回のベルギー先発組にはイングランドのクラブに所属する選手が5人入っていて、吉田にしてみれば「特徴を熟知している集団」だった。

 とりわけ、最大の得点源であるルカクについては、「何度もやってますけど、ホントに強くてうまくて速い。エバートンにいると気よりもすごくレベルアップしてるなと感じるし、足元の雑さがなくなって質の高い選手になってるので、1こ2こチャンスがあれば必ずモノにしてくる」と対戦前から警戒心を露わにしていた。

そのエースにやられただけに悔しさはひとしおだ。しかも「ベルギーが好調な時だったら難しいと思いますけど、彼らは明らかに調子がよくなかった。チームでやってるのと全然違うパフォーマンスだと感じた」と指摘する通り、相手は低調な状態だったから、不完全燃焼感がより一層募るのも当然のことだ。

 確かに、この日のベルギーはボール支配率こそ圧倒していたが、タテへの推進力は今一つ。デ・ブルイネが12日の練習でロベルト・マルティネス監督の5バック気味の布陣を「守備的すぎる」と批判したことも引き金となり、不協和音も聞こえてきていた。

チームとしての一体感や結束力は間違いなく日本の方が上。そんな状況でも0-1で敗戦という結果が出てしまうのは「ワンチャンスをモノにする差」があるから。吉田はその恐ろしさを再認識したようだ。

「1つのミス、1つのチャンスを生かすか殺すかで勝敗が分かれてしまう。やっぱり上に行けば行くほど細かいディテールが結果につながるんだってことを、僕も含めて多くの選手が学んだと思う」と本人は切々と語る。

ブラジル戦後の問題提起。あえて呈した苦言

 ブラジル戦でVAR(ビデオ)判定によるPK献上で試合の入りをミスし、ベルギー戦でも最後の砦になりきれなかったことを、守備の要は重く受け止めている。吉田は日常から世界基準を肌で知る日本唯一のCB。それだけその一挙手一投足は影響が大きい。

 今回の11月シリーズでは槙野が奮闘し、彼の負担を多少なりとも軽減してくれたが、やはり吉田のパフォーマンスの善し悪しが日本守備陣の安定につながるのは間違いない。今後のためにもシャドリに突破された場面を再検証し、対策を練ることが肝要だ。

 このシーン以外は、吉田率いる日本の守備は見違えるほどよくなっていた。「ブラジル戦に比べてチーム全体の目に見えない意思疎通が取れていた。みんなメチャクチャ声を出した。これくらいの集中力と気持ちでやらないとこの相手には負けてしまう」と長友佑都(インテル)もコミュニケーション面の改善を口にしたが、それも吉田が仕向けたこと。

 背番号22が2日前の練習で「監督と話さなければいけない」と問題を提起し、「自分たちはうまくないんだから、もっとガムシャラに死に物狂いでやらないといけない。前の選手は1回だけじゃなく2度追い3度追いしなきゃいけないし、後ろの選手ももっと体を張らなきゃいけない。そういうガムシャラさが足りない」とあえて苦言を呈したことで、チーム全体が引き締まったのだ。

 長谷部不在の中、彼がそういう統率力を示したことはロシア本番にも大きな意味を持つ。右ひざの不安を抱える長谷部がワールドカップでフル稼働できる保証はなく、本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、香川真司(ドルトムント)のビッグ3復帰もが約束されていないだけに、現有戦力で戦える力を身に着けなければならない。

「本田さんたちがいなくてもやっていける手ごたえ? 今のままでは全然足りない。ただ、可能性は十分ある。各自がチームに持ち帰って課題を克服できるかどうか。自分自身もそこを突き詰めていくだけじゃないかなと思います」と吉田は前だけを見据えていた。

 ここからクラブに戻っても試練が待っている。サウサンプトンでは長期離脱していたファン・ダイクが復帰。センターバック争いはし烈を極めている。その中で吉田はさらなる緻密さを養い、定位置を死守することが肝要だ。ロシアでの成功のためにも、日々の積み重ねを大事にするしかない。

(取材・文:元川悦子【ブルージュ】)

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