WEC上海:アストンマーチン、新型バンテージが初優勝。「シーズン序盤は苦戦も、最高の結果で2018年を締めくくれた」

2018年11月22日(木)12時20分 AUTOSPORT web

 11月18日、WEC世界耐久選手権第5戦上海は中国、上海国際サーキットで6時間にわたる決勝レースが行われ、アストンマーチン・レーシング(AMR)の95号車アストンマーチン・バンテージAMR(ニッキー・ティーム/マルコ・ソーレンセン組)がLM-GTEプロクラス初優勝を飾った。


 アストンマーチン・レーシングが2018/2019年WEC“スーパーシーズン”に向けて開発し、開幕戦スパ・フランコルシャンから投入している新型バンテージAMR。


 4.0リットルV8ツインターボエンジンをフロントミッドに搭載するこのニューモデルは、シーズン序盤こそGTEクラスに課せられているBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)によって本来の実力を発揮することができず、ポルシェやフォードらのライバルメーカーたちに先行を許していた。しかし、ル・マン24時間後の第3戦シルバーストン以後は徐々にスピードを取り戻し、第4戦富士ではポールポジションを獲得した。


 そんななか、第5戦上海の予選は、マキシム・マルタン、アレックス・リン組97号車がクラス3番手、デンマーク人コンビの95号車は同6番手につける。迎えた18日の決勝レースでは、大雨の影響でレース序盤に2度の赤旗中断、また合計5回のセーフティカーランが導入される難しい状況のなかで、チームは巧みに2台をコントロール。中盤からチェッカーまで残り1時間の時点まで、95号車と97号車にワン・ツー体制を築かせることに成功する。


 しかし、チームは予測不能なレースコンディションを考慮し、当初から2台の戦略を分ける作戦をとっていた。このため、早めに最後のタイヤ交換を行なっていた97号車は、終盤にふたたび強く降り出した雨によってペースダウンを余儀なくされ、最終的にクラス4位でのフィニッシュに。


 一方、97号車よりも後にピットに戻った95号車も安泰ではなく、チェッカーまで残り1時間を切ったところで導入された5度目のセーフティカーで、後続のポルシェ勢との間に築いていたマージンを失ってしまう。


■ソーレンセン「次戦セブリングに向けて、さらに熟成を進めていく」


新型バンテージAMRに初優勝をもたらしたニッキー・ティーム(左)とマルコ・ソーレンセン(右)
マキシム・マルタン、アレックス・リン組97号車アストンマーチン
レース序盤と終盤に激しい雨に見舞われた2018/19年第5戦上海6時間レース


 それでも、終盤、ティームからステアリングを受け継いだソーレンセンは後方からのプレッシャー、激しさを増す雨とウォータースクリーンによって視界を奪われるながらも冷静なドライビングに徹し、95号車を6時間レースのファイナルラップまで運ぶ。


 そして迎えた109周目、新型アストンマーチン・バンテージAMRにとって歴史的勝利となるGTEプロクラスのトップチェッカーを、LMP2クラス全車を上回る総合7位で受けることに成功した。


「本当に長く、そして、とても難しいコンディションのレースだった」とレースを振り返るのは2017年シーズン第5戦メキシコ以来となる勝利を飾ったソーレンセンだ。


「ニューマシンで最初の勝利を挙げることができて、最高にうれしいよ。まるで総合優勝をかけて戦っているかのように、全力でプッシュしたんだ!」


「(この勝利は)チームがハードワークを続けてくれたおかげだ。“スーパーシーズン”序盤は苦しい展開が続いたが、2018年最後のレースを勝利で締めくくることができて、素晴らしい気分だよ」


「今後は来年3月に開催される次戦のセブリングまでに、マシンをさらに熟成させることに集中していくよ」


 また、通称“DaneTrain(デンマーク号)”のチームメイトであるティームも「チーム一丸となってハードワークを続け、ついに表彰台の頂点に立つことができて感無量だ!」とコメント。


「チーム全員の努力がついに報われた。今日の勝利はもっとも戦闘力のあるマシンで走り、戦略が見事に的中し、すべてのスタッフが完璧に仕事をやってのけた結果だよ」


「アストンマーティン・ファミリーの一員になれたことはもちろんだけど、バンテージAMRの最初の勝利に貢献することができて、とても誇らしく思っている。大混乱となったレースだったけど、最高の結果で終わることができてハッピーだよ!」


■ジョン・ガウ「ポルシェは初勝利まで15戦を要したが、我々はわずか5戦で達成」


2018/19WEC第5戦上海は大雨の影響で赤旗が2度提示された
トップチェッカーを受け表彰台下に戻ってきた“DaneTrain”
WECスーパーシーズン初優勝を飾ったマルコ・ソーレンセン(左)とニッキー・ティーム(右)


 AMRのマネージング・ディレクターを務めるジョン・ガウは上海でのレース後、次のように語っている。


「新型バンテージAMRで初優勝することができ、最高の気分だよ。ポルシェは、新しいGTEマシンで勝利するまでに15戦を要しているが、私たちはわずか4回レースに参戦した後にそれを成し遂げることができたんだ!」


「今日はおそらく、WEC史上もっとも複雑なレースだったと言えるだろう。また、ルマン24時間レースを除けば、GTEプロクラスではもっとも競争の激しいレースでもあったと思う。今回は(コルベットがスポット参戦したことで)初めて11台ものマシンが参戦していたのだからね」


「さらに、私たちのマシンが今日履いていたタイヤは、直接のライバルが履いていたタイヤとまったく同じタイヤだと知って、喜びが倍増したよ。つまり、今日のレースでは、我々のマシンが一番速かったということだ」


 2台の戦略の違いについて、ガウははじめから同じ戦略をとることは考えていなかったという。


「スタッフ全員で喜びを分かち合っているが、(一時はトップに立つなど)大健闘した97号車は少し残念な結果となってしまった」


「我々はなによりも優勝を目指していた。だから参戦した2台のマシンに、レースを通してまったく同じ戦略を採用することは当初から考えていなかったんだ」


「実は、優勝した95号車は最善策の次に考えられる戦略をとっていた。それが結果的に功を奏したことになる。一方、97号車はレース最後のフルスティントを摩耗したウェットタイヤで走行する必要に迫られてしまったんだ」


 AMRが参戦するもうひとつのクラス、LM-GTEアマクラスでは、98号車アストンマーチン・バンテージ(ポール・ダラ-ラナ/ペドロ・ラミー/マティアス・ラウダ組)がポールスタートから5位でフィニッシュ。


 今戦の直前、ポイントリーダーに選手権ポイント全剥奪という重いペナルティが下ったこともあり、98号車組がドライバーズランキングで2位に浮上している。


 WEC“スーパーシーズン”の次戦、第6戦セブリング1000マイルは2019年3月15日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで開催される。

GTEアマクラスで予選ポールポジションを獲得した98号車アストンマーチン・バンテージGTE
アストンマーチン・レーシングの95号車アストンマーチン・バンテージAMR
アストンマーチン・レーシングの95号車アストンマーチン・バンテージAMR


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