席巻するラン・オフェンス −NFL2019シーズン前半のトレンドを見る−

11月23日(土)11時0分 SPAIA

イメージ画像ⒸAlenaVeasey/Shutterstock.com

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前半戦を席巻したラン・オフェンス

2019年のNFLは第11週が終わり、すでに後半戦へと突入している。そこで、今年の前半戦におけるNFLのトレンドを振り返っていきたいと思う。

今年のNFL前半戦で特筆すべきことは、ラン・オフェンスが進んでいるチームの勝率だ。ラン・オフェンス上位10チームの平均勝率は65.6%で、これはここ10年間で2番目に高い数字である。しかも上位5チームに限った平均勝率になると71.8%まで跳ね上がり、これは2000年以降で最も高い数字である。

パス・オフェンス全盛と言われて久しいNFLに、今いったい何が起きているのだろうか?

最も使用されるディフェンス「ニッケル」

長い間NFLをご覧になっていなかった方がもし今のNFLの試合を見たら、ちょっとした違和感を感じるかもしれない。なぜなら、ディフェンス・フォーメーションに占めるディフェンシブバック(DB)の多さが、以前とは違うからだ。

現在のNFLのディフェンスで最も使用されているディフェンス隊形は、実はDB5人で守るニッケル・ディフェンスである。FOOTBALL OUTSIDERSのデータでは、2018年度の全ディフェンスに占めるニッケルの割合は驚くなかれ、なんと60.5%にも及ぶ。3-4、4-3といった以前のアメリカンフットボールにおいて中心的だったディフェンス隊形の割合は、全体のわずか25.0%。オフェンス・スナップの4回に1回しか登場しないのである。

かつてはパス・シチュエーションでしか使用しなかったニッケルがこれ程までに増えたのには、当然理由がある。

ニッケル・ディフェンスが増加した原因は?

ニッケル・ディフェンスが増加した原因は、スプレッド・オフェンスを止めるためである。spread=広げる、という言葉が表すように、レシーバーをフィールドの横方向に大きく広げてセットさせるこのオフェンスは、相手ディフェンスにも広がった布陣を強いることで、ボール・キャリアーの走るスペースを作り出すことを目的としている。

この発想自体は特に新しいものではなく、ビル・ウォルシュとジョー・モンタナのサンフランシスコ・49ersによってNFLを席巻したウエストコースト・オフェンスも、同様のコンセプトで構成されていた。

しかし、多くのアイディアが加えられ、よりスピード化された現在のスプレッド・オフェンスを止めるためには、ディフェンスにも大きな変化を必要とした。その結果がこのニッケル隊形の増加なのである。

行き過ぎたディフェンスのスピード化

オフェンスがフィールドをくまなく使用するようになったため、ディフェンスの選手は以前より広範囲をカバーしなければならなくなった。その解決策となったのは「スピード」。ディフェンスはより速い選手をフィールドに置き、広げられたスペースを埋めようとしたのだ。

しかしスピード化が生み出すものはメリットだけではない。行き過ぎたスピード化は、ディフェンスから「パワー」を奪うことになる。そして今年のNFLにおけるラン・オフェンスの復権は、まさしくそこを突いたものなのだ。

テネシー・タイタンズの190㎝、112㎏の大型ランニングバック(RB)デリック・ヘンリーが、キャリア最高のシーズンを過ごしていることや、ニューオリンズ・セインツ控えの大型RBラテイビアス・マーリィの活躍はその証明と言ってもいいだろう。マーリィは、スピード派のエースRBアルビン・カマーラが怪我で欠場した2試合両方で100ヤード以上のランを記録。チームを勝利へと導いている。

もちろんラン・オフェンスの復権には、それ以外にも多くの要素がある。クォーターバックを保護するルールの厳密化により、オプション・ランが以前より行いやすくなったのも理由の一つだ。

そのメリットを最大に生かしているのがボルチモア・レイブンズ。第11週までに記録した1試合平均203.1ヤードのラン獲得は、2000年以降のあらゆるチームの中で最高の数字で、第9週には昨シーズンのスーパーボウルチャンピオンで、それまで無敗だったニューイングランド・ペイトリオッツに完勝している。

また現在NFC最高勝率の49ersも、現在では少なくなったアップバックを多用したIフォーメーションからの強力なラン・オフェンスを展開している。このように前半戦を席巻したラン・オフェンスだが、百戦錬磨のディフェンシブ・コーディネーターたちが、この状況を黙って見ているはずがない。

彼らがどのような対策を立て、強力なラン・オフェンスに立ち向かっていくのか。後半戦はそんなディフェンスにこそ注目していきたい。

SPAIA

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