MotoGP:初優勝、ポールポジション獲得、苦難の年─Moto2、Moto3日本人ライダーたちの2019年シーズン

11月24日(日)23時15分 AUTOSPORT web

 バレンシアのリカルド・トルモ・サーキットで最終戦を終えた、2019年シーズンのMotoGP。今季は最高峰クラス参戦2年目を迎えた中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)を筆頭に、Moto2クラス、Moto3クラスでは計6名の日本人ライダーが世界を舞台に戦った。最終戦を終えたMoto2クラス、Moto3クラスの日本人ライダーたちが、第19戦バレンシアGPと2019年シーズンを振り返る。


 2019年シーズン、エンジンサプライヤーがトライアンフに変更となったMoto2。このクラス唯一のフル参戦ライダーが、継続参戦3年目を迎えた長島哲太(ONEXOX TKKR SAG Team)だ。最終戦は、初日は総合6番手。悪くない走り出しだったが、予選ではリヤのグリップ不足に苦しみ、21番手。Moto3の決勝レースがスタートディレイ、さらに赤旗中断を挟んだために周回数が16周に減算となった決勝レースではポジションを上げられず、21位だった。


「ウイーク通してうまくまとめきれなかったですね。厳しい状態がつづいてしまいました。いい形で締めくくりたかったので、すごく残念です。初日はそんなに悪くなかったのですが、そこからバイクのフィーリングががらりと変わってしまい、なにもできなくなってしまいました。後半戦はかなりいい形でここまでこられて、表彰台に手が届きそうなところまで来ていました。最後は表彰台に乗って終わって、チームに恩返しがしたかったけど、なかなかそう甘くはなかったですね」


 そう苦笑いする長島。2019年シーズンは、第11戦オーストリアGPでポールポジションを獲得。その後も第15戦タイGP、第18戦マレーシアGPで2番グリッドに並ぶなど速さを見せ、決勝でも第8戦オランダGP、第12戦イギリスGPで5位フィニッシュを果たすなど躍進し、ランキングを14位で終えた。惜しむらくは表彰台に上ることができなかったというところだが、全体としていいシーズンを送ることができたと長島は語る。


「決勝レースに関しては運の要素がありました。(他車に)ぶつけられてしまったり、タイヤに問題が出たり……。2019年は自分のなかで、トップ争いに食い込むのがひとつの目標でした。そこに到達できたと思いますし、今までで一番変化の大きかった一年だったと思います。バレンシアGPが21位という結果だったけれど、自分としてはいい一年になりました」


 長島にとって、2019年シーズンの転機は7月下旬に参戦した鈴鹿8時間耐久ロードレースにあった。


「鈴鹿8耐のあとMoto2マシンに乗ったとき、すごくいいフィーリングがあったんです。トライアンフエンジンが自分に合っていたし、鈴鹿8耐で1000ccバイクに乗ったことがすごくいいトレーニングになりました。それがわかったので、この冬しっかりトレーニングして、2020年シーズンに向けてがんばりたいですね」


 その2020年シーズン、長島はチームをRed Bull KTM Ajoに移籍してMoto2を戦うことが11月15日に発表された。長島は2019年シーズンに所属していたONEXOX TKKR SAG Teamと2年間の契約を結んでおり、来季も同チームから継続参戦するとされていたが、シーズン終盤にチームを変えて戦うことが明らかとなった。


 Red Bull KTM Ajoは元ロードレース世界選手権ライダーのアキ・アジョが率いるチーム。チームメイトは2018年シーズンのMoto3チャンピオン、ホルヘ・マルティンと心強い環境だ。2020年シーズンはMoto2よりKTMが撤退するため、フレームはカレックスを使用する。


 2020年は心機一転のシーズンになるのでは、と聞くと「心機一転だし、ある意味、結果を確実に残さないといけないチームですね」と長島。「年齢的にも結果を残さないと、もうMotoGPクラスへのチャンスやその先がなくなってしまいます。ここでしっかり結果を残して、その先につなげられるようにがんばります」そう堅い決意を語った。


 そして2019年シーズン、5人の日本人ライダーがフル参戦したMoto3。第13戦サンマリノGPでクラス初優勝を飾ったのが、鈴木竜生(SIC58 Squadra Corse)である。鈴木は最終戦バレンシアGPで、4位フィニッシュ。予選後「序盤から前の方でレースをして、最後の勝負をかけたい」と語っていた鈴木は、最終ラップまでその言葉どおり、トップを争う位置でレースを見せていた。ただ、最終コーナーで、4番手だったザビエル・アルティガス(Leopard Impala Junior Team)に交わされてしまった。


「くやしいですね、またしても」と、質問しようとした言葉尻をさらうように鈴木は自らレースを振り返った。鈴木は日本GPでも最終シケインで交わされて4位になっている。「またしても」にはそういう意味が含まれていたのだろう。


 バレンシアGPのMoto3決勝レースは、サイティングラップ中に転倒したライダーのマシンからオイルが撒かれ、スタートがディレイし、さらに最初のレースでは3周目に多重クラッシュが発生。赤旗中断となり、2度目のレースが15周で行われた。


「再スタート後、ソフトタイヤで出ていったのですが思ったよりもタイヤが持ってくれませんでした。最終ラップでは勝負どころでインをしめていきたかったんですが、これ以上無理すると転びそうだったんです。その空いたスペースに入られてしまいました」


 くやしさを口にする一方で、日本GPよりも表情が柔和だったのはひとつの手ごたえがあったからのようだ。このウイーク初日には2020年に向けたセットアップなども試したという。鈴木は「結果はちょっと残念ですが、来年につながっていくようないい形でシーズンを締めくくれたのかなと思います」と語った。


 そんな2019年シーズンについて聞くと、「浮き沈みの激しいシーズンでした」と言う。速さを見せていたことは間違いない。第13戦サンマリノGPでの優勝、第4戦スペインGPで2位表彰台を獲得した。予選ではポールポジションを含み4度、フロントロウに並んだ。ランキングは8位。しかし、思うようにいかない部分もあった。


「自分のミスによる転倒もありましたが、それ以上に不運だったり、トラブルに巻き込まれての転倒も多かったんです。タラレバですが、もしもそうした状況でその位置にいなければ、もっといい形でシーズンを終われたと思います」


「2020年の課題としては、状況を見極めて、アクシデントが起きそうなところにいないようにしたいですね。もちろん19戦全勝するのが高い目標なんですが」と言ってから鈴木はいたずらっぽく笑った。「コンディションも違いますし、それは難しいじゃないですか。Moto3って誰が勝ってもおかしくないクラスですからね」


「だから、優勝できるときは優勝して、今回みたいに初日からあまり流れがよくないときは、しっかり結果を持って帰る。フィーリングよく走れているときは、最後の最後までもてぎのような勝負をする。そこが今季、足りなかったかな、と思っています」


 来年にはMoto3参戦6年目を迎える鈴木。家族のようなSIC58 Squadra Corseとともに、2020年シーズンの躍進と、その先の活躍を期待したいところだ。


 そしてこちらも2020年シーズン、現在のチームから継続参戦の小椋藍(Honda Team Asia)。バレンシアGPでは25番手タイムをマークしたものの予選Q1中のスロー走行によりペナルティを受け、28番グリッドスタート。そこから追い上げを見せて10位でチェッカーを受けた。リズムに乗り切れなかった、と小椋。


「フリー走行1回目からの流れを考えると、レースはそこまで悪くはなかったと思います。目標としていた、理想としていた1年目のシーズンにはなりませんでしたが、まあまあだったのではないかと。終わり方もすごく重要になってくるので、できれば最高の形で終わりたかったんですが。でも勉強になったので、悪くはなかったんじゃなかったと思います」


 Moto3フル参戦1年目、ルーキーイヤーとなった2019年シーズンは第14戦アラゴンGPで2位表彰台を獲得した。「自分がこうだろうなと思っていたよりもよかった」と言う一方で、「理想からはちょっと低かったですね。でもチャンピオンシップのランキング10位で終われたのは、よかった」のだそうだ。


 ルーキーライダーで争われるルーキー・オブ・ザ・イヤーでは、セレスティーノ・ビエッティ(SKY Racing Team VR46)とランキングトップを争った。最終的に26ポイント差で惜しくもルーキー・オブ・ザ・イヤーを逃したが、こちらのランキングは2位。ルーキー・オブ・ザ・イヤーをねらっていた? と聞くと「可能性が出始めたくらいからがんばらないとな、とは思っていました。ただ、相手が速かったので、ちょっと厳しかったです」と冷静な答えが返ってきた。


 ルーキーイヤーから存在感を見せた小椋。2020年シーズンに向けては「チャンピオンシップのトップ3になれればいいと思います」と語る。今季以上に表彰台に立つ姿を見せてくれるだろう。


 バレンシアGPで小椋とともに苦戦を強いられた、チームメイトの鳥羽海渡(Honda Team Asia)。予選Q1では21番手タイムをマークしたが、小椋同様にペナルティを受けて25番グリッドとなった。決勝レースでは第2集団での争いとなり、13位フィニッシュ。


「走り出しはよかったんですが、そのあと苦戦したところがありました」と、鳥羽はレースを振り返る。「そのままあまりよくない流れが続いて、予選もよくなかったんです。決勝はまあまあフィーリングもよくなったんですが、序盤に出遅れ過ぎてしまいました。追い付いたんですが遅かったですね。終わり方としてはあまりうれしくないです」


 2019年シーズンは、開幕戦カタールGPで歓喜の初優勝を飾った。しかし、そこから順風満帆のシーズンとはいかなかった。トップ集団に加わるレースを展開しながらの転倒もあった。最終的に鳥羽はランキング19位でシーズンを終えている。


「2019年は開幕戦からいい流れだったけれど、そのあと悪い流れを断ち切れなくて、よくないシーズンになってしまいました。チャンピオンシップの争いについて学ぶところは多かったので、2020年につながると思います。来年は優勝、表彰台を増やしたい。そこが目標ですね」


 鳥羽は2020年シーズン、2年間所属したHonda Team Asiaを離れ、2020年シーズンはRed Bull KTM AjoからMoto3に参戦する。「新しいチームと新しいバイクなので、早く環境に慣れて、しっかり結果を残したいと思います」そう新天地での活躍を誓っていた。


 佐々木歩夢(Petronas Sprinta Racing)は、フィジカル面で厳しいバレンシアGPを戦っていた。第18戦マレーシアGPで右手を骨折。参戦について検討するほどだったというが、佐々木は「このチームでレースをするのは今週が最後。ちゃんと走ってレースを終えたかった」と参戦を決断。予選では20番グリッドを獲得し、決勝レースでは痛み止めを打って19位でチェッカーを受けた。


 実は佐々木、サイティングラップ中に他車がオイル漏れのトラブルによって転倒した際、それに巻き込まれてハイサイドを喫している。このとき再び、右手を骨折してしまった。


「手の痛みはひどくなっていたのだけど、あきらめずにレースを終わりたいという気持ちで、15周のレースを完走することを目標に走り切りました。まったく攻められなかったし、レースにはならなかったんですが。レースをしていると、怪我をしたりうまくいかないこともあります。でも、チームがあきらめないでいてくれるのを見て、自分もあきらめないで最後まで走ろうと教えてもらったんです」


 穏やかにレースを振り返って話す佐々木だが「人生のなかでも一番つらい一週間でしたが、しっかり終えることができて、強くなった気もします」と、バレンシアGPは相当厳しいウイークだったそうだ。


 佐々木は2019年シーズン、第2戦アルゼンチンGPで5位フィニッシュを果たし、第9戦ドイツGPではポールポジションを獲得した。しかし、シーズン前半は総じて厳しい戦いが続いた。


「(第3戦)アメリカズGPで問題が出て、そこからずっとそれに苦しんでいたんです。前半戦は攻められない形で進んでしまい、本当に厳しかったです。自分もチームもどうしたらいいのかわからない状況でした。ドイツGPでなんとか修復できて、その瞬間に速く走れてポールが獲れました」


 佐々木はドイツGPでポールポジションを獲得したとき、「自信を取り戻すことができた」と語っていた。言葉の裏には厳しいシーズン前半戦があったのだろう。最終的に、ランキング20位でシーズンを締めくくった。


「ドイツGPからはそこそこいいシーズンだったけれど、ついていないことが多かったですね。タイGPではトップ争いして転んでしまったし……。ドイツからバレンシアまで、完走したレースは13位以内。転んでいなければポイントを取れているんです。速さは問題ないのに小さいことに問題があったのと、自分の弱いところもあり、そして、バイクとかみ合わなかったところもありましたね。(2019年は)思ったようなシーズンではありませんでした」


 佐々木は2020年シーズン、Petronas Sprinta Racingを離れてRed Bull KTM Tech 3に移籍する。ホンダからKTMへの乗り換え、そして新しいチームで戦うシーズンとなる。


「運が悪い2019年だったので、2020年は運のいい年になるんじゃないかなと思っているんです。今年学べたところは糧にして、しっかり走ることができれば来年はトップをねらえると思います。今年の冬は、来年に向けて1日1日を大事にしてもっと強くなって帰ってきたいです」


 決意を新たに、2020年、佐々木はフル参戦4シーズン目のMoto3を迎える。


 2019年、厳しいシーズンとなった真崎一輝(BOE Skull Rider Mugen Race)。バレンシアGPでは23番グリッドからスタートし、16位レースを終えた。スタートが決まった、という決勝レースでは「最初はずっとポイント圏内で走っていたのでいけるかと思ったんですが、予選とウオームアップ走行で発生した問題が直しきれていなくて。タイヤが減ってきたときにどうにもできなず、下がる一方」だったと振り返った。それでも「ポイント外ぎりぎりでのフィニッシュで悔しいですけど、最後のレースで楽しく走れたので、よかったと思います」と前向きに語る。


 Moto3フル参戦2年目の今季は本来の速さを発揮できず、苦しいシーズンとなった。ランキングは27位。


「僕に何かしら足りていないところがあったのだと思います。セッティングもうまく進められないのも、自分ばかりの問題ではありませんが、僕がうまく誘導できなかったというのもあります」


「2019年は自分にとって、すごく厳しいシーズンでした。精神的にも技術的にもフィジカル的にも厳しかった」そう語る真崎は、2020年、FIM CEVレプソルMoto3ジュニア世界選手権の参戦が決まった。所属は2019年のチャンピオン獲得チーム、Team LaGlisseだ。


「自分に足りないところをシーズンオフで鍛え直して、2020年にはCEVのチャンピオンを獲ってMoto3に帰ってきたいです。2019年以上にタフなシーズンは今後もないと思うんです。2020年はきっちり鍛えなおして、チャンピオンを獲る気満々でいこうと思っています」


 真崎が再びMoto3に返り咲き、躍進する姿を心待ちにしたい。


 ライダーたちが送ったシーズンは平坦ではなかっただろうが、2019年シーズンは、それぞれのクラスで日本人ライダーの活躍に心を躍らせたシーズンでもあった。2020年シーズンは、彼らおのおのが満足のいくシーズンを送ることを願うばかりだ。それはきっと、見る者をもっと興奮させてくれることになるだろうから。


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