「大魔王」は復活できるのか?中国メディアも心配する伊藤美誠の「現在地」

2023年11月24日(金)16時30分 ココカラネクスト

パリ五輪出場を争う伊藤の状態を中国メディアも心配しているようだ(C)Getty Images

 2021年の東京オリンピックで混合ダブルスで金、女子団体で銀、女子シングルスで銅の各メダルを獲得し、卓球王国中国から「大魔王」の名称まで贈られて恐れられた伊藤美誠が精彩を欠いている。2024年パリ五輪の女子シングルス争いのポイントでは11月現在早田ひなに圧倒的な差をつけられている上、平野美宇の後塵も拝して3位。一時期ランキング7位にまで落ち込み、パリ五輪出場が絶望視されていたことを考えれば、よくここまで持ち直したとも言えるが、残念ながら東京五輪時の輝きは取り戻せていない。

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 伊藤の不振の原因は直接的には、今年に入って悪化したと言われている臀部・腰部の故障だ。卓球の重要な要素であるフットワークを十分に発揮できていない上に、彼女の必殺ショット「美誠パンチ」も、鳴りをひそめた状態だ。彼女の強さを支えていた武器が使えない現状では、世界を舞台に戦うことは当然おぼつかない。それどころか、国内でも早々と姿を消してしまう大会が相次いだ。身体の不調が焦りを生み、その焦りからミスを連発して試合に敗れて自信を失い、メンタルも大きく傷つくという悪循環に陥ってしまっているのだ。

 そんな伊藤に対し、一時期最大の敵と見做していた中国のメディアからは「もはや伊藤は限界だ」「伊藤美誠よりは早田ひなの方が中国にとって最大の敵だ」「次世代の最大の敵は張本美和だ」という声が聞こえてきている。その一方で『澎湃新聞』のように、東京五輪後「燃え尽き症候群」的な精神状態にあったにも関わらず、過密スケジュールに追われ、心身の状態を崩して、ついには故障までしてしまった伊藤が、パリ五輪出場を期待されているが故に、休養を摂ることができず、苦しんでいるという論調で、擁護する動きまで出てきた。

 現在の日本女子卓球界のトップである早田ひなが中国卓球界にとって最大の敵であるという認識は強く持っているだろう。また、9月に行われた第19回アジア大会の卓球女子ダブルス準々決勝で木原美悠と組んで、世界ランキング1位の孫穎莎、同3位の王曼昱が組んだ「中国最強ペア」を下した張本美和を次世代の大きな脅威として捉えているのは明らかだ。しかしやはり、東京五輪で中国の前に立ち塞がり、確たる実績を残した「大魔王」伊藤美誠が中国では最大の知名度を誇っているのは事実。その「大魔王」が万全の状態で臨んでくるパリ五輪の場でリベンジを果たしたいという思いが強いのだろう。

 伊藤は11月現在24.5ポイント差で追っている2位平野美宇を、来年1月の全日本選手権までに逆転することは十分に可能だ。12月に行われる混合団体ワールドカップは故障の影響もあってか、欠場することとなったが、この「休養」を糧に「大魔王」復活を望みたいところだ。

[文:江良与一]

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