岩政大樹監督が語る鹿島MF松村優太の進化 今季ラスト2戦でさらなる成長を示せるか
2023年11月24日(金)12時4分 サッカーキング
11月のインターナショナルマッチデーが終わり、いよいよ明治安田生命J1リーグの残り2節がここから行われる。優勝の行方はヴィッセル神戸と横浜F・マリノスに絞られており、残留争いは横浜FC、湘南ベルマーレ、柏レイソルの3チームから1チームがJ2降格を強いられそうな雲行きだ。
こうした中、今季こそタイトル奪回を目指した鹿島アントラーズは7年連続無冠に終わった。ビルドアップと縦に速い展開を織り交ぜる判断力を選手たちに求めた岩政大樹監督だったが、神戸、横浜FM、名古屋グランパスといった上位陣にことごとく敗戦。目下、6位に甘んじている状況だ。攻撃に関しては、今季13ゴールを奪っているFW鈴木優磨の得点力への依存度が非常に高く、それ以外の得点源を作れていない印象だ。
静岡学園時代の2020年1月に第98回全国高校サッカー選手権大会を制し、鳴り物入りで鹿島入りしたプロ4年目の松村優太も今季は1点のみと不完全燃焼感が強いはず。J1出場試合数は18だが、先発はわずかに3で、非凡な潜在能力を考えるとあまりに物足りない。岩政監督も彼をもう一段階引き上げようとさまざまなトライをしたという。
「松村や藤井(智也)のようなスピード系のアタッカーは外をドリブル突破していれば、相手を剥がすことはできる。ただ、キックがスペシャルではないので、抜け切れるだけでアシストやゴールにつながらない。アタッカーはゴールやアシストという結果を残さないと評価されない。そこが課題だったんです。そこで松村には中でのプレーを増やしてほしいと話しました。本人は心地良くなかったかもしれませんが、FWとつながりを持ちながらゴール前に侵入していくことで自らシュートも打てるし、アシストにも絡めるようになる。そこに取り組んでもらいました」
指揮官の要求に松村自身は苦慮し、春から夏にかけてはベンチ外になることも多かった。2024年夏のパリオリンピック出場を目指している快足ドリブラーにしてみれば、すでに欧州に赴いている斉藤光毅や鈴木唯人、小田裕太郎ら同い年のライバルたちの顔もチラついたのではないか。
「それでも本人は粘り強くトライして、徐々に中でもプレーできるようになっていった。守備の献身性や動き出しの速さも研ぎ澄まされてきて、ジョーカーとしても持ち味を発揮できる場面が増えてきました」と岩政監督は言う。指揮官は同じスピードスターからインサイドやゴール前でも結果を出せる選手へと変貌した伊東純也のような軌跡を描いてほしいと望んだことだろう。
その成長の一端が垣間見えたのが、11月18日のU-22アルゼンチン代表戦でのパフォーマンスだ。
左サイドで先発し、先制点を挙げた佐藤恵允がひざを負傷し、44分からピッチに立つチャンスを得た松村は持ち前のアグレッシブさを前面に押し出した。不慣れな左サイドでのプレーながら、積極的な仕掛けやチャンスメイクを披露。81分には中央のゴール遠目の位置から思い切ったミドルシュートを決めきり、チームに4点目をもたらした。
「選手権の予選やプロ初ゴールもこのピッチ(IAIスタジアム日本平)ですし、成長した姿を見せたいと思ってプレーしました。先発で出られなかった分、悔しさがあったし、その中で得点という結果が出たことは自分にとって大きいと思います。鹿島では右も左もやりますし、FWをやったこともある。この前のアジア大会ではシャドーもやったりしていて、ユーティリティ性はそれなりにあるのかなと。『松村は左でもできる』という印象付けられたことは良かったと思います」と本人も手ごたえを口にしていた。
ゴールという結果はもちろん非常に大きいが、鹿島で取り組んだ「的確な判断」を示せたことが何よりも重要だったと松村は考えている様子だった。
「鹿島ではより判断やつながりが求められているので、『今、仕掛けるのか、仕掛けないのか』とか『相手がこう来たら、自分はこうする』といった臨機応変なプレーがだんだん身についてきているのかなと思います」
ドリブル突破という最大のストロングに多彩なプレーが加われば、松村にとっては鬼に金棒だ。前向きな変貌ぶりをU−22アルゼンチン戦で体現できたことは、大きな自信になったはずだ。
それを今季ラスト2戦で出し切ることが大事だ。鹿島が対峙するのは川崎フロンターレと横浜FC。そこで松村がゴールという結果を残せれば、重要な来季の糧になるだろう。
2024年はパリ五輪最終予選と本大会がある節目の年。プロ5年目を迎えるだけに、鹿島でもずっとジョーカー的な立ち位置で居続けるわけにもいかない。静学の先輩である旗手怜央も飛躍的成長を遂げたように、松村も偉大な先輩に追いつけ追い越せでやっていかなければならない。
まずは24日の川崎戦。鹿島の背番号27の一挙手一投足に注目したい。
取材・文=元川悦子
こうした中、今季こそタイトル奪回を目指した鹿島アントラーズは7年連続無冠に終わった。ビルドアップと縦に速い展開を織り交ぜる判断力を選手たちに求めた岩政大樹監督だったが、神戸、横浜FM、名古屋グランパスといった上位陣にことごとく敗戦。目下、6位に甘んじている状況だ。攻撃に関しては、今季13ゴールを奪っているFW鈴木優磨の得点力への依存度が非常に高く、それ以外の得点源を作れていない印象だ。
静岡学園時代の2020年1月に第98回全国高校サッカー選手権大会を制し、鳴り物入りで鹿島入りしたプロ4年目の松村優太も今季は1点のみと不完全燃焼感が強いはず。J1出場試合数は18だが、先発はわずかに3で、非凡な潜在能力を考えるとあまりに物足りない。岩政監督も彼をもう一段階引き上げようとさまざまなトライをしたという。
「松村や藤井(智也)のようなスピード系のアタッカーは外をドリブル突破していれば、相手を剥がすことはできる。ただ、キックがスペシャルではないので、抜け切れるだけでアシストやゴールにつながらない。アタッカーはゴールやアシストという結果を残さないと評価されない。そこが課題だったんです。そこで松村には中でのプレーを増やしてほしいと話しました。本人は心地良くなかったかもしれませんが、FWとつながりを持ちながらゴール前に侵入していくことで自らシュートも打てるし、アシストにも絡めるようになる。そこに取り組んでもらいました」
指揮官の要求に松村自身は苦慮し、春から夏にかけてはベンチ外になることも多かった。2024年夏のパリオリンピック出場を目指している快足ドリブラーにしてみれば、すでに欧州に赴いている斉藤光毅や鈴木唯人、小田裕太郎ら同い年のライバルたちの顔もチラついたのではないか。
「それでも本人は粘り強くトライして、徐々に中でもプレーできるようになっていった。守備の献身性や動き出しの速さも研ぎ澄まされてきて、ジョーカーとしても持ち味を発揮できる場面が増えてきました」と岩政監督は言う。指揮官は同じスピードスターからインサイドやゴール前でも結果を出せる選手へと変貌した伊東純也のような軌跡を描いてほしいと望んだことだろう。
その成長の一端が垣間見えたのが、11月18日のU-22アルゼンチン代表戦でのパフォーマンスだ。
左サイドで先発し、先制点を挙げた佐藤恵允がひざを負傷し、44分からピッチに立つチャンスを得た松村は持ち前のアグレッシブさを前面に押し出した。不慣れな左サイドでのプレーながら、積極的な仕掛けやチャンスメイクを披露。81分には中央のゴール遠目の位置から思い切ったミドルシュートを決めきり、チームに4点目をもたらした。
「選手権の予選やプロ初ゴールもこのピッチ(IAIスタジアム日本平)ですし、成長した姿を見せたいと思ってプレーしました。先発で出られなかった分、悔しさがあったし、その中で得点という結果が出たことは自分にとって大きいと思います。鹿島では右も左もやりますし、FWをやったこともある。この前のアジア大会ではシャドーもやったりしていて、ユーティリティ性はそれなりにあるのかなと。『松村は左でもできる』という印象付けられたことは良かったと思います」と本人も手ごたえを口にしていた。
ゴールという結果はもちろん非常に大きいが、鹿島で取り組んだ「的確な判断」を示せたことが何よりも重要だったと松村は考えている様子だった。
「鹿島ではより判断やつながりが求められているので、『今、仕掛けるのか、仕掛けないのか』とか『相手がこう来たら、自分はこうする』といった臨機応変なプレーがだんだん身についてきているのかなと思います」
ドリブル突破という最大のストロングに多彩なプレーが加われば、松村にとっては鬼に金棒だ。前向きな変貌ぶりをU−22アルゼンチン戦で体現できたことは、大きな自信になったはずだ。
それを今季ラスト2戦で出し切ることが大事だ。鹿島が対峙するのは川崎フロンターレと横浜FC。そこで松村がゴールという結果を残せれば、重要な来季の糧になるだろう。
2024年はパリ五輪最終予選と本大会がある節目の年。プロ5年目を迎えるだけに、鹿島でもずっとジョーカー的な立ち位置で居続けるわけにもいかない。静学の先輩である旗手怜央も飛躍的成長を遂げたように、松村も偉大な先輩に追いつけ追い越せでやっていかなければならない。
まずは24日の川崎戦。鹿島の背番号27の一挙手一投足に注目したい。
取材・文=元川悦子