SCB第10-11戦:伏兵たちの饗宴。シボレー勢が3連勝でトヨタを逆転、王座争いも接戦に

2020年11月25日(水)17時46分 AUTOSPORT web

 11月7〜8日に続き、再びのダブルヘッダー戦として開催されたSCBストックカー・ブラジルの2020年第10〜11戦ゴイアニア・ラウンドは、土曜の第10戦、日曜第11戦の2ヒートともにシボレー・クルーズ勢が制して3連勝を飾り、ついにトヨタのマニュファクチャラーポイントを逆転。週末はシリーズ初優勝者を含め今季17レースで13人目の勝者が誕生し、12月の最終戦を前に11名にタイトル獲得の権利が残るなど、SCB史上最小僅差のタイトル戦線と化している。


 クリティバでの第8〜9戦で土曜ポール・トゥ・ウインを含む2勝を挙げ、選手権首位を手にしたチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング)だが、この週末は彼のドライブする今季デビューのTOYOTA GAZOO Racingブラジル製『トヨタ・カローラ』は奮わず、最大のライバルとなるシボレー陣営のトップチーム、ユーロファーマ-RCの3冠王者ダニエル・セラとリカルド・マウリシオに詰め寄られる週末となった。


 土曜シングルレースの第10戦で先手を獲ったのがそのマウリシオで、シリーズで2度のタイトルを経験するユーロファーマ-RCの“Wエース”は、同じくシボレー陣営の新鋭ギリェルメ・サラス(KTFスポーツ)と、自身のチームメイトでWEC世界耐久選手権レギュラーでもあるセラを従えトップチェッカー。幸先良く週末最初の優勝を飾った。


「一般的な構図で言っても、この勝利は良いことだ。重要なのは戦いの渦中に身を置くこと。12月のスーパーファイナルでは、誰もが優勝を狙うことになるだろう」と、勝利してなお気を引き締めたマウリシオ。


 さらに表彰台圏外の4位にもディエゴ・ヌネス(ブラウ・モータースポーツ)、5位に前戦勝者ガブリエル・カサグランデ(R.マティス・モータースポーツ)が続き、シボレー勢がトップ5を占拠するなど、シーズン前半戦とは明らかに様相の異なるリザルトとなった。


 明けた日曜のレース1向け予選でも、終盤戦の熾烈なコンペティションレベルを可視化する展開となり、前戦クリティバで記録された予選Q1上位21台が0.5秒圏内という新記録がすぐさま更新され、首位のヌネスから24番手のペドロ・カルドゥソ(R.マティス・モータースポーツ)までがコンマ5秒差に並ぶ緊迫のセッションに。


 続くQ2で最速を記録したヌネスの僚友、アラム・コデア(ブラウ・モータースポーツ)がポールポジションからスタートを切ると、2周目にコデアを仕留めた好調サラスが首位浮上に成功する。


 さらに3周目には2番手争いのコデアとブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ)が1コーナーのブレーキング勝負で接触し、2台ともにコースオフを喫して戦列を去ることに。これで2019年ブラジリアン・ストック・ライト王者の26歳はその混乱を活かしてリードを拡大。2位ヌネス、3位デニス・ナバーロ(カバレイロ・スポーツ)を従え、トップカテゴリー昇格のデビューイヤーで見事な初勝利を手にした。


「この日がついにやってきた!(前戦の)クリティバでは勝利の女神があと一歩というところまで来てくれたが、すんでのところで逃してしまった。このSCBは世界で最も難しいカテゴリーのひとつで、誰もが接近した実力を持つ。長らくF1で活躍したドライバーも数多くいるからね。修正は簡単ではないが、今日はエンジニア、メカニック、そして神のおかげで奇跡が起こったんだ」と、シリーズ初優勝の喜びを語ったサラス。

土曜レース1でポールポジションを得たのは、26歳の新鋭ギリェルメ・サラス(KTFスポーツ)
前戦2勝の選手権首位チアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング)だが、予選で沈みレース1オープニングではアクシデントの巻き添えに
土曜勝者リカルド・マウリシオとともに3位表彰台の3冠王者ダニエル・セラ。「たった4戦前はランク12位だった。諦めなかった姿勢の勝利だ」
日曜レース1は2番手争いのアラム・コデア(ブラウ・モータースポーツ)とブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ)が1コーナーのブレーキング勝負で接触


■レース2では元F1ドライバーのバリチェロに不運が


 続くレース2は前戦10位でリバースポールを得た、その“元F1ドライバー”ことルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ)が最前列からスタートを切り、2014年以来のタイトル獲得に向け2番手セラ、3番手カサグランデ、そして4番手リカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ)らを抑えて1コーナーへホールショットを決めていく。


 しかし元跳ね馬ドライバーの操るトヨタ・カローラは、デビュー時のようなアドバンテージを見せることができず、背後のセラがすぐさまトップを奪取。バリチェロはアーリーピットで義務作業を消化し、優勝戦線に喰い下がる戦略を採る。


 その背後でシボレー同士のバトルに持ち込んだのがレース1リタイアに終わっていたコデアで、フレッシュタイヤを活用して13周目にセラをかわす怒涛のチャージで2番手へと上がってくる。


 するとファイナルラップの21周目にふたつのドラマが発生し、3番手セラがネルソン・ピケJr.(フルタイム・バッサーニ)にかわされ、ピケJr.は前戦に続いて3連覇王者攻略に成功。すると首位を走っていたバリチェロのカローラに異変が襲い、早めの給油によるガス欠症状でまさかのスローダウンを喫し、みるみるポジションを失っていく。


 そのままフィニッシュラインに到達したところでバリチェロは3位にまでダウンし、その手から優勝がこぼれ落ちる失意のチェッカー。2位ピケJr.の前方でラインを通過したコデアが、まさかの逆転劇で2015年以来のSCBキャリア通算9勝目を獲得した。


「なんてクレイジーな日なんだ!? まるで天国と地獄を通り抜けて、もう1度天国に戻って来たような気分だ」と、午前はポール発進の好機をアクシデントで失い、その結果レース2での優位を手にした自らの状況を振り返ったコデア。


 一方、選手権首位で挑んだトヨタのカミーロは、レース1でオイルポンプの不調に見舞われリタイア。すぐさま修復を果たしたチームはレース2にカローラを送り出すも、ピットスタートから11位までの挽回が精一杯。土曜勝利のマウリシオと、同じく土曜3位、日曜を9位と4位で終えた宿敵セラのふたりに、1点差のランキング2位まで詰め寄られる大接戦の展開となった。


 また、このゴイアニアのリザルトにより、ライバルが30点差を得るたびにブランドごとに当該シーズンで2度の使用権利が解放される“アップデート・パッケージ”の活用をトヨタに許可することを意味し、カローラにとってはこれが最初の機会に。


 前半戦でトヨタ陣営に大差をつけられたシボレー勢はすでに2度のアップデートを済ませており、その開発成果こそが現在のクルーズのパフォーマンスに繋がっている。


 12月11〜13日にインテルラゴスで開催される“スーパーファイナル”では、各ドライバーに最大60点獲得の可能性が残されるが、717点のトヨタに対してシボレーは762点とここへ来て逆転に成功し、シリーズ久々のマニュファクチャラー争いにも注目が集まる。

土曜のポール獲得に続き、ギリェルメ・サラス(KTFスポーツ)が日曜レース1を制し、シリーズ初優勝を飾った
レースペースで勝算がないことを悟ったルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ)は、日曜レース2でアーリーピットを選択するが……
まさかのガス欠で最終周に失速。コデアとネルソン・ピケJr.(フルタイム・バッサーニ)に先行されてのチェッカーに
バリチェロはランク4位、勝者コデアは同8位で、12月11〜13日のインテルラゴス“スーパーファイナル”に臨む

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