浦和レッズがACL完敗。興梠慎三から橋岡大樹に託された深い思い

11月25日(月)18時0分 Sportiva

 完敗した後の夜空に何を見ていただろうか。


アルヒラルとのACL決勝を戦う、浦和・橋岡大樹

 浦和レッズの橋岡大樹はACL決勝の終了の笛が鳴ると、ピッチ上に倒れ込んだ。しばらくそのままでいると、やってきた主将の興梠慎三に手を差し伸べられて起き上がり、重い足取りで大勢のレッズサポーターが陣取るゴール裏へ向かい、深くお辞儀。セレモニーの間もうなだれ続けていた20歳のWB(ウイングバック)の姿からは、やり場のない悔しさが伝わってきた。

「とてもいい相手でした」と、この決勝に出場した最年少選手は試合後に語った。

「もっとできると思っていましたが、完敗したのは認めないといけないです。この悔しさを忘れずに、また何年後かに、世界中に成長した姿を見せたいです」

 この日のセカンドレグは0−2、トータルスコアは0−3。浦和を破ったアルヒラル(サウジアラビア)は、ニュートラルに見て、すべての面で相手を凌駕していた。

 バフェティンビ・ゴミス(元フランス代表)、セバスティアン・ジョビンコ(元イタリア代表)、アンドレ・カリージョ(ペルー代表)、チャン・ヒョンス(元韓国代表)はもちろん、サウジアラビアの選手たちもほぼ全員が代表クラス。

 サルマン・アルファラジとアブドゥラー・オタイフのセントラルMFを中心に洒脱なポゼッションを展開し、サイドと前線にはパワーとスキル、スピードに優れる面々が揃う。

 その強烈な個々を今夏に就任したラズバン・ルチェスク監督(シャフタール・ドネツクでUEFAカップを制した戦術家ミルチェア・ルチェスクの息子)が、組織的なチームに昇華させていた。

 ファーストレグは浦和のGK福島春樹のビッグセーブもあり、0−1で終わっていたが、スコア以上の差があったのは明らかだ。それでも、真っ赤に染まる埼玉スタジアムでは、大逆転が起こるかもしれない。そんな期待感は確かにあった。試合前には壮大なコレオグラフィーがスタンドを彩り、「We Are Reds!!」の大声援はこれまでに聞いたことがないほどの音量でスタジアムにこだました。

「サポーターの皆さんが、本当に素晴らしい雰囲気を作ってくれました」と橋岡は振り返る。

「試合が終わったあとにモニターで見たんですけど、涙を流しているサポーターがいて、僕たちと同じ気持ちで戦ってくれていたことを感じました」

 込み上げるものをなんとか押しとどめるように、橋岡はそう話した。彼自身、「通用する部分もあった」と話すように、前半は相手の突破を阻んだり、鋭いクロスをあげたりするシーンもあった。だが時間の流れとともに地力の差が顕著に表れた。

 そして後半29分に失点。ジョビコンコのクロスを最後はサレム・アルドサリに決められてしまった。興梠が「あの1点がすべてだった」と振り返ったゴールを喫した後、浦和は懸命に巻き返しを図ったが、アディショナルタイムにも、カリージョにドリブルから折り返され、ゴミスに駄目押しのゴールを喫した。

「カリージョ選手と僕が対峙することはありませんでしたが、見ていてすごく速かったです。世界に出たら、ああいう選手も止めないといけないので、もっともっと気を引き締めてやっていかないと」

 試合終了後、プレス席の反対側のタッチライン付近で、橋岡は仰向けになり、天を仰いだ。その後の興梠とのやりとりについて訊かれると、背番号27は次のように答えた。

「興梠選手はキャプテンマークを巻いて、チームを引っ張ってくれました。口には出していなかったですけど、きっと僕はまだ20歳でこれからもっとすごい舞台を経験するかもしれないので、この悔しさを忘れないで、また前を向いてやっていけ、と。そういう意味が込められていたのかなと思います」

 一方の興梠はこんな風に明かした。

「僕は鹿島(アントラーズ)でACLを戦ったことがあるので(わかるけれど)、ファイナルまでたどり着くのは簡単じゃないよ、とずっと思っていた。優勝できなかった悔しさはあるけど、ここまで来られたのは奇跡的なもの。負けてしまったけど、胸を張ろう、倒れるなよ、という感じでした」

 そのようにして立ち上がった20歳の橋岡は、プロになって2年目で得難い経験をした。そして来年には、東京五輪に臨むチームにも名を連ねる可能性が高い。

「(ACLは)相手の戦い方やプレーの質など、Jリーグとは全然違いました。そんな大会のファイナルに出場できたのは本当にうれしいことですが、これを経験だけに終わらせるのではなく、もっともっと自分を磨かないと。五輪でも、個もチームも素晴らしい相手とやると思うので、もっと努力しないといけません」

 初のACLはデビュー戦の見事な2ゴールに始まり、最後は頂点を目前にしながら、手が届かず涙を飲んだ。ただし20歳の橋岡にとって、これは始まりにすぎない。

「ひとつの物差しになった」この試合で敗北の悔しさを噛み締め、決意を新たにした生え抜きの若者が、アジア最高の舞台で得たものは少なくない。彼ならきっと、未来に生かしていくはずだ。

Sportiva

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