奇才ウェイン・ルーニー体制で初勝利!三好康児が語るチームの変化【現地取材】
2023年11月27日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE
英2部リーグのEFLチャンピオンシップ第17節が日本時間11月25日24時に行われ、MF三好康児が所属するバーミンガム・シティはホームでシェフィールド・ウェンズデイと対戦した。
2023年10月11日、選手時代「英国史上最高」と評され、過去にはマンチェスター・ユナイテッドでも活躍した元イングランド代表ウェイン・ルーニー氏を監督に迎えたバーミンガムだが、その後5戦勝ちなしの4敗1分。順位も前節終了時点で18位まで落ち、プレミアリーグ昇格プレーオフ圏の6位まで勝ち点差7に広げてしまった。
最下位のシェフィールドを相手になんとか勝ち点3が欲しいバーミンガムは、前半に先制されたものの2点を奪い逆転勝利に成功。この記事では、ルーニー監督就任後の記念すべき初勝利となった今節について、試合後に行った三好へのインタビューを交えて考察していく。
消極的な前半に苛立つ三好
マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドでもあるルーニー監督が率いるバーミンガムは、それまでの堅守速攻のスタイルから徐々にポゼッションサッカーに移行しようと試みている最中だ。今節も直近3試合で採用している[4-2-3-1]で臨み、三好は右サイドハーフで先発出場。チームは積極的に前線からプレスをかけボールを奪いにいくが、シェフィールドも同様に堅守速攻のプレースタイルから両者カウンター合戦となり膠着した状態が続く。
三好は右サイドから中央に絞り縦パスを供給して攻撃のスイッチを入れるも味方FWが決定機をものにできない。バーミンガムは、相手のプレッシャーを恐れたDFラインが裏を狙ったロングボールを安易に出す展開が続く。小柄な日本人MFの頭を通り越してしまうと三好が出来ることは少なくなり、守備に奔走する時間が多くなった。ボールを受けようとボランチの位置まで下がってもロングボールを蹴ってしまう味方守備陣に、三好は両手を振り上げて珍しく苛立ちを見せていた。
前半にセットプレーから失点するもアディショナルタイムにキュラソー代表のMFジュニーニョ・バクーナが鮮やかなミドルシュートを決めて振り出しに戻す。しかし、ルーニー監督がポゼッションサッカーを目指すにもかかわらず、前半のバーミンガムは怯えた弱小チームのようにひたすらロングボールを蹴り「FWが抜け出せればラッキー」なサッカーをしているようだった。試合を振り返った三好はこの時、チームのマインドの部分に問題を見出していた。
ー前半ロングボールが多用され、パスも繋がらないシーンが多かったですが?
三好:前半も自分のポジションとか中盤もフリーでしたけど、それでも後ろの選手がプレッシャーかかるとフワッと蹴ってしまうシーンが多くなる。結局はちょっとしたポジション取りやマインドの部分。(相手が寄せるだけで)プレッシャーを感じてしまうのか、もしくは全然それでもできると思うのか。そこの部分だと思います。
極力、自分がボールを触れば攻撃につなげられる自信がある。GKに下げる回数が多かったんで、そこに関しては監督からも「なんでそんなに消極的なんだ」という指摘がありました。練習では前につけたり、自分や7番のバクーナのポケット(ニアゾーン)の位置を取るというのはやっているので、そこは試合の中でも(DF陣には)トライして欲しいです。試合だからミスを恐れる気持ちは分かるんですけど、そこを挑戦しないと(スタイルは)手にできないですし。そこはちょっとした気持ちの部分かなと思います。
”ルーニー・サッカー”の可能性が見えた後半
三好が指摘するように、ハーフタイムでマインドを入れ替えたバーミンガムは徐々にボールを中盤から組み立て繋がるようになる。特に左サイドから突破し、中央に絞った三好が前線に縦パスを供給すると、次々にチャンスを作り出すことができた。逆転弾も中盤でボールを奪い三好に預け、サイドと中央の選手が連動して相手ディフェンスを崩したことで生まれたものだった。
一口に「ポゼッションサッカー」と言ってもさまざまな形がある。直近5試合を見てきた筆者は正直なところ、ルーニー監督が目指すサッカーがよく見えていなかった。だが今節でその姿が少し見えた気がした。
ーサイドの三好選手が中に絞って攻撃のスイッチを入れる場面が多かったですが?
三好:それが今このチームがやろうとしている部分です。自分がサイドに張っているよりサイドバックを高い位置に取らせて自分は空いたスペースに。逆に相手DFが来たらサイドが空きますし、そこは狙いとしてあります。(前半)バタバタする中でカウンターを受ける場面もありますけど、続けていけばそれが形になると思うので。今日の試合も嫌な取られ方をしてカウンターとかありましたけど、そこは続けていけばいいのかなと思います。
事実、三好や中盤の選手がボールに触れる回数が増えた後半はゲームを支配できるようになり、統計でもポゼッション率53%と過去5試合のなかで最高を記録した。三好がボールを持ち、パスを出す度にプレス席で観戦していたシェフィールドのメディア担当者から「Miyoshi, insane!(三好、やべえ!)」と声が漏れていたのが特に印象的だった。相手チームのスタッフさえも唸らせるサッカーセンスを遺憾無く発揮した三好。直近3試合連続先発とルーニー監督の信頼を掴み出し“ルーニー・サッカー”を実現する上で重要なピースとなっているようだ。
今節の勝利で順位を14位に上げたバーミンガム。三好も「チームの雰囲気も徐々に良くなっている。ここから勝ち点を積み重ねていこうというところで、今日の勝利は勢いに乗る上でも良かったと思います。結果が全ての世界なんで勝てばハッピーですし、良いサッカーをしても負けたら…ね(笑)」と屈託のない笑顔で話してくれた。
11月に入り寒さが厳しくなった北国のイングランド。最高気温も6度前後と、東京の2月並みの寒さとなっており、バーミンガムの本拠地セント・アンドルーズ・スタジアムは晴天にもかかわらず体感温度は5度にも満たない。地元のイングランド人選手でさえも長袖ユニフォームを着用し始めているというのに、この日も半袖でピッチに現れた三好。ベルギー時代に欧州の冬を経験している三好自身「ベルギーでもこんなに寒くなかった(笑)」と語っていたが、その表情は晴れやかだった。